2024/12/06|1,113文字
<社会保険の加入基準と適用拡大>
1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、正社員などフルタイムの労働者の4分の3以上であれば社会保険に加入します。実際の所定労働時間や所定労働日数が、この基準を超えるようになった場合にも加入します。強制加入です。
会社の意向や労働者の希望とは無関係で客観的な基準です。
平成28(2016)年10月1日から、この基準が変更されてきています。社会保険の適用拡大です。
1週間の所定労働時間が、正社員などフルタイムの労働者の4分の3未満であっても、平成28(2016)年10月1日からは、次の5つの条件を全て満たす場合には社会保険加入となりました。
・週の所定労働時間が20時間以上
・勤務期間が1年以上見込まれること
・月額賃金が8.8万円以上
・学生以外
・社会保険の加入者が501人以上の企業に勤務していること
このように、社会保険に入る基準は客観的なものであり、事業主が加入手続をしていなくても、法律上は、基準を満たせば社会保険に加入していることになります。
上記の「1年以上見込まれる」という基準は、令和4(2022)年10月からは「2か月以上見込まれる」に変更となりましたし、「2か月以上」の勤務実態があれば加入者となりました。
さらに、上記の「501人以上」の基準は、令和4(2022)年10月からは「101人以上」、令和6(2024)年10月からは「51人以上」に引下げられています。
<労働者側が約束した場合>
労働者が社会保険に入る約束をした場合には「加入条件を満たしたならば加入手続に協力する」「加入条件を満たす労働条件で働く」のいずれかの約束だと解されます。
加入条件を満たしたのに「私は社会保険料を支払いたくない」と言う労働者がいます。
この場合には事業主が労働者に対して、所定労働時間を減らすか手続に応じるかの選択を迫ることになります。
<事業主側が約束した場合>
事業主が社会保険に入らせる約束をした場合で「加入条件を満たしたならば加入手続を行う」という約束ならば、適法に運営することの表明に過ぎません。
しかし、「加入条件を満たす労働条件で働かせる」という約束ならば、基準よりも少ない所定労働時間で労働契約をしようとすることは約束違反になります。
この場合には、両者で良く話し合う必要があります。
<実務の視点から>
労働契約は、契約書を交わさなくても口頭で成立します。
しかし、「社会保険に入る約束」というのは、労働契約の成立前でも後でもできることです。
こうしたことで無用な争いが発生することは避けたいところです。
迷った時には、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。