2023/11/26|966文字
<曖昧さの残る懲戒規定>
どんなに良くできた懲戒規定でも、「平素の勤務態度その他情状によっては」「しばしば」「数回にわたって」「著しく」などあいまいな表現が残るものです。
これらの抽象的な表現は、それぞれの案件の具体的な事情に応じて、適切な結論を出すためには必要なものでもあります。
しかし、解釈に幅があるだけに、平等で公平な運用はむずかしいものです。
<懲戒対象者を納得させるのは難しい>
なにしろ、懲戒処分を検討しなければならない事件は、日常的に起こるものではありません。
むしろ、滅多に起こりません。
ですから、その場限りの判断を繰り返していると、懲戒処分を検討している対象者から「今まで遅刻で懲戒処分を受けた社員はいないのに、なぜ自分だけ懲戒処分を検討されるのか?」とたずねられても、明確な回答ができない恐れがあります。
また、出勤停止の懲戒処分があったときに、別の社員から「自分の時は始末書を書かされただけで済んだのに」という疑問が出されたら、上手に説明できないこともあります。
これでは、懲戒処分を受けた社員が納得できず、心から反省することもなくなってしまいそうです。
さらに、本人以外の社員が納得できないのでは、会社に対する不信感が高まってしまいます。
<徹底した記録の保管が必要>
こうしたマイナスの効果が発生しないように、懲戒処分があったときには、懲戒対象者、懲戒対象事実、懲戒処分の内容について、詳細な記録を残すことが必要です。
それだけでなく、懲戒処分には至らず検討されただけの案件についての記録も保管が必要です。
さらに、懲戒処分が労働局の斡旋の対象になったり、労働審判の対象になったりすれば、その経緯と結論の資料も一緒に保管する必要があります。
ここまでしないと、平等で公平な懲戒処分は実現しませんし、疑問が出されたときに納得のいく説明をすることができないのです。
せっかく、時間と労力、人件費をかけ、何より大変神経をすり減らして行う懲戒処分です。
効果の最大化を図るためには、資料保管の労を惜しんではなりません。
<社労士(社会保険労務士)の立場から>
会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。