2023/09/11|979文字
<健康診断の受診義務>
労働安全衛生法は事業者に対して、雇入れ時および年1回の定期健康診断の実施を義務付けています。
ただし、深夜業や坑内労働などの特定業務従事者は年2回です。
また、法定の有害業務に従事する労働者については、特殊健康診断も実施しなければなりません。
これを受けて、労働者の受診義務も定められています。〔労働安全衛生法第66条第5項〕
しかし、健康診断を受けなかった場合の罰則規定はありません。
やはり、就業規則に健康診断の受診義務を明確に規定しておくべきです。
<誓約書の効力>
会社と労働者との関係で、法令や就業規則、労働契約などで労働者の義務とされている事項があります。
これについて、労働者に誓約書を書かせて確認することは違法ではありません。
しかし、誓約書によって初めて義務が生じるのではなく、ただ単に改めて確認するだけですから、法的な効力が強まるわけではありません。
結局、誓約書を書かせることによって、労働者に心理的にプレッシャーをかけているだけのことです。
しかし多くの会社では、この心理的効果に期待して誓約書を書かせています。
<会社の立場からは>
そもそも労働者に健康診断を受けさせただけでは、会社の労働者に対する健康配慮義務が尽くされたとはいえません。
しかし反対に、労働者が健康診断の受診を拒否していたとしても、会社が労働者に対する健康配慮義務を免れるわけでもありません。
それでも、会社が労働安全衛生法で義務付けられた健康診断を、一部の労働者が受診しないというのでは、会社が法定の義務を果たせないことになってしまいます。
<より良い方法>
就業規則に健康診断の受診義務を規定するのに対応して、義務違反に対する懲戒規定を置くべきです。
また、昇格・昇進の条件に、就業規則で定められた健康診断を受診していることを含めるなど、ある程度、人事考課の基準とすることにも合理性があります。
健康診断に限らず、就業規則に規定された義務を果たすことは、会社のルールを守るということですから、評価の対象にできることは当然です。
<社労士(社会保険労務士)の立場から>
健康診断の受診対象者や健診項目についての法令順守、実施後の記録の保管、個人情報保護、労基署への報告、結果の分析と対応なども社労士の守備範囲です。
ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。