2025/08/15|1,323文字
<高年齢求職者給付金>
高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険加入者(高年齢被保険者)が離職して「失業の状態」にあるときに支給されます。
雇用保険でいう「失業の状態」とは、
・就職したいという意思があって
・いつでも就職ができる能力・環境があるにもかかわらず
・職業に就くことができず
・積極的に求職活動を行っている状態にある
ことをいい、ハローワーク(公共職業安定所)で、その確認をします。
また、高年齢求職者給付金の支給を受けるためには次の「被保険者期間」が必要です。
・離職の日以前1年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が6か月以上あること。ただし、離職の日以前1年間に賃金支払基礎日数が11日以上の月が6か月ない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算します。
支給額は以下の通りです。
雇用保険加入期間 | 支給日数相当額 |
6か月以上1年未満 | 30日分 |
1年以上 | 50日分 |
<循環的離職者>
循環的離職者とは、同一事業所で短期間の就職と離職を繰り返し、その間に雇用保険の給付(基本手当や高年齢求職者給付金など)を受けたことがある人を指します。
典型的には「過去3年以内に3回以上同じ事業所に就職し、かつその間に1回以上給付を受けた者」と定義されることがあります。
<両者の関係と問題点>
循環的離職者が高年齢求職者給付金を繰り返し受給するケースが増えており、制度の持続性や公平性に対する懸念が生じています。
- 再雇用予約による不正受給のリスク
同一事業所での再雇用が事前に決まっているにもかかわらず、形式的に離職して給付を受けると、「不正受給」とみなされる可能性があります。
この場合、本人だけでなく事業主も共謀とされることがあります。
- 制度の柔軟性が逆に悪用される可能性
高年齢求職者給付金は一時金であり、支給条件が比較的緩やかです。そのため、短期間の雇用を繰り返すことで、複数回の受給が可能になるケースもあります。
特に、2017年の雇用保険法改正により、65歳以上でも再就職後に雇用保険に加入できるようになったことで、受給機会が増えました。
- 制度設計上の課題
高年齢者の就労支援という本来の目的に反して、給付金を目的とした短期雇用が発生すると、制度の信頼性が損なわれます。
また、真に支援が必要な高年齢求職者への資源配分が難しくなる可能性もあります。
<対策と今後の方向性>
この問題に対しては、以下のような対策が考えられます。
・再雇用予約の有無の厳格な確認
離職票や求職申込時に、再雇用の予定があるかどうかを明確に申告させる。
・事業所ごとの雇用履歴の照合強化
同一事業所での雇用履歴をハローワークが把握し、不自然な繰り返しを検出する。
・給付回数の制限や条件の見直し
高年齢求職者給付金の受給回数に上限を設ける、または再雇用までの期間に一定の空白を求めるなどの制度設計が検討される可能性があります。
<公平な制度運用のために>
高年齢者の就労支援は重要な社会的課題ですが、制度の悪用が広がると、本当に支援が必要な人への影響が出てしまいます。
循環的離職者の問題は、個人の事情だけでなく、雇用慣行や制度設計の歪みが背景にあるため、社会全体でバランスの取れた対応が求められます。