2024/07/23|1,086文字
<賃金の支払義務>
健康診断を受ける時間が、労働基準法の労働時間にあたれば、賃金の支払義務があります。
<一般健康診断についての通達>
労働安全衛生法第66条第1項に定める一般健康診断について、次のような通達があります。
「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については、労働者一般に対して行われるいわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと」(昭和47年9月18日基発第602号通達)
結論として、たとえ一般健康診断を受診しなくても、業務に具体的な支障が生じるわけではないことから、実質的に受診義務がないことになり、その受診に必要な時間の賃金を、使用者が負担する義務はないと考えているようです。
<例外的に労働時間となる場合>
業務命令により一般健康診断を受診させ、受診しない場合の懲戒処分を定めている場合には、賃金支払が必要な労働時間に該当すると考えられます。
<特殊健康診断についての通達>
労働安全衛生法第66条第2項に定める特殊健康診断について、次のような通達があります。
「特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること」(昭和47年9月18日基発第602号通達)
結論として、特殊健康診断を受ける時間を労働基準法にいう労働時間と捉えているようです。
特殊健康診断は、一般健康診断とは異なり、事業の遂行との関連性が強く、受診しなければ業務に具体的な支障が生じうるため、受診義務があり受診に要する時間は労働時間と評価されるということです。
<実務の視点から>
厳密に考えると、自宅や勤務地から受診会場に行き、受診会場から自宅や勤務地に戻る交通費の負担など、会社と労働者との負担区分には複雑なものがあります。
きちんとした区分を設定し、気持よく健康診断を受診できるようにするには、信頼できる社労士にご相談ください。