2026/11/01|1,690文字
日給制そのものは、法的に認められている賃金制度ですが、運用を誤ると賃金不払など労働基準法違反になりやすいため注意が必要です。特に、日給制の場合は「働いた日だけ支払えばよい」という誤解からトラブルが発生するケースが少なくありません。
主な注意点は次のとおりです。
- 最低賃金を下回らないこと
日給制であっても最低賃金法の適用があります。
例えば、東京都の最低賃金が時給1,280円である場合に、1日の所定労働時間が8時間であれば、
1,280円 × 8時間 = 10,240円
を下回る日給を設定すると最低賃金違反となる可能性があります。
日給額だけで判断するのではなく、
日給 ÷ 1日の所定労働時間
で時給換算して確認することが重要です。
このことから、1日の所定労働時間が不明確であっても、労働基準法違反であることは明らかです。
- 残業代を支払わない扱いはできない
日給制であっても時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金は必要です。
例えば、
- 日給10,000円
- 所定労働時間8時間
の場合、時間単価は
10,000円 ÷ 8時間 = 1,250円
となります。
この場合、時間外労働には
1,250円 × 1.25
以上の割増賃金を支払わなければなりません。
「日給に残業代も含まれている」という説明だけでは認められず、固定残業代制度としての要件を満たす必要があります。
- 欠勤控除と日給制を混同しないこと
月給制の従業員について、
「欠勤した日数分を控除する」
ことと、
「日給制」
とは別の制度です。
就業規則や労働条件通知書で、
- 月給制なのか
- 日給月給制なのか
- 日給制なのか
を明確にしておく必要があります。
賃金体系が曖昧だと、賃金計算に関する紛争の原因になります。
- 年次有給休暇取得日に賃金を支払うこと
日給制労働者であっても、年次有給休暇を取得した日は賃金を支払う必要があります。
「出勤していないのだから賃金は発生しない」という取扱いは違法です。
有給休暇取得日に支払う賃金については、労働基準法に定められた計算方法の中から選択され、就業規則等で定められた方法に従いますが、多くの会社では通常の賃金相当額を支払っています。
- 休業手当の支払義務
会社都合で仕事を休ませた場合には、日給制であっても休業手当が必要となる場合があります。
例えば、
- 仕事量不足
- 資材不足
- 受注減少
など会社側の事情による休業であれば、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
「働かなかったので日給ゼロ」という扱いは認められません。
- 労働時間の管理をしない運用
日給制の現場作業員などで問題になりやすいのが、
「日給だから出退勤管理をしていない」
というケースです。
しかし、労働基準法上は賃金制度に関係なく労働時間の適正な把握義務があります。
- 出勤時刻
- 退勤時刻
- 休憩時間
- 時間外労働時間
を適切に記録しなければなりません。
- 悪天候等による休業の取扱い
建設業や屋外作業では、
「雨天のため作業中止」
という事例があります。
この場合、
- 天災など真に不可抗力なのか
- 使用者の責任による休業なのか
によって休業手当の要否が変わります。
安易に「出勤していないので無給」とするとトラブルになるため、個別判断が必要です。
- 労働条件通知書で賃金計算方法を明示すること
採用時には、
- 日給額
- 支払日
- 締切日
- 割増賃金の計算方法
を明確に示す必要があります。
特に建設業、警備業、運送業などでは、「日給○円」とだけ説明しているケースがありますが、後日残業代請求等のトラブルにつながりやすいため注意が必要です。
まとめ
日給制で最も違法になりやすいポイントは、
- 最低賃金を下回る日給設定
- 残業代・深夜割増・休日割増の未払い
- 有給休暇取得日の不支給
- 会社都合休業時の休業手当不払い
- 労働時間管理をしていない運用
の5点です。
会社としては、「日給制=働いた日だけ支払う制度」ではなく、日給を基礎として法定の割増賃金や各種保護規定が適用される賃金制度であると理解し、就業規則や労働条件通知書で計算方法を明確にしておくことが重要です。特に残業代と休業手当の問題は労働基準監督署の是正指導につながりやすいため、実務上の重点管理項目と考えるべきでしょう。