副業・兼業ルールの適正化

2026/10/26|1,571文字

 

政府は副業・兼業を促進する方針を示しており、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、労働者の副業・兼業は原則として認める方向で検討することが望ましいとしています。

このため、会社としては「全面禁止」を前提とするのではなく、自社の事業運営や従業員の健康確保に支障がない範囲で適切に管理するという考え方が重要です。

 

 

1.就業規則で定めておきたい事項

 

(1)届出・申請手続

副業を行う場合には事前に会社へ届け出ることを義務付けることが一般的です。

届出事項には、次のようなものがあります。

  • 副業先の名称
  • 業務内容
  • 労働時間
  • 雇用契約か業務委託か
  • 開始予定日

なお、「許可制」とする場合でも、会社が恣意的に許可・不許可を決められるような規定は避けた方がよいでしょう。

 

(2)禁止・制限事由

副業を制限する場合の具体的な基準を定めます。

例えば、次のようなものがあります。

  • 本業に支障を及ぼすおそれがある場合
  • 長時間労働により健康確保が困難な場合
  • 競合会社で業務を行う場合
  • 会社の秘密情報を利用する場合
  • 会社の信用や名誉を損なう場合

 

(3)労働時間の報告義務

副業先が雇用契約である場合には、労働時間の通算管理が必要になることがあります。

このため、副業先での勤務時間の報告、労働時間記録の提出などを求める規定を設けておくことが有効です。

 

(4)秘密保持義務

副業・兼業においても、顧客情報、技術情報、営業秘密等の漏えいを禁止する規定を設けることが重要です。

 

(5)健康管理への協力義務

副業による長時間労働は安全配慮義務の観点から大きな問題となります。

このため、健康診断の受診、面談への協力、労働時間情報の提供などを求めることが考えられます。

 

 

2.会社が義務付けると問題となり得るもの

 

(1)副業そのものの強制

会社が「収入を増やすため副業をしなさい」 「休日はグループ会社で働きなさい」などと命じることは原則として認められません。

副業は本来、労働者自身の意思によるものであり、労働契約上当然に従う義務はありません。

特に無償または低賃金での副業を事実上強要した場合には、労働基準法上の問題やパワーハラスメントの問題が生じる可能性があります。

 

(2)特定の副業先の強制

会社や経営者の関係会社での就労を強制したり、特定事業への参加を義務付けたりすると、労働契約上の問題や人格権侵害と評価されるリスクがあります。

 

 

3.会社が禁止すると問題となり得るもの

 

(1)合理的理由のない全面禁止

副業・兼業は労働者の職業選択の自由や私生活の自由と関係します。

このため、合理的な理由を示さずに一切禁止という規定は、現在では合理性を欠くとして問題となる可能性があります。厚生労働省も原則として副業・兼業を認める方向での検討を推奨しています。

 

(2)資産運用等まで禁止するケース

例えば、株式投資、投資信託、不動産賃貸などを一律に禁止する合理性は通常認められにくいでしょう。

 

(3)会社と無関係な活動の禁止

例えば、執筆活動、講演活動、地域活動、NPO活動などについて、本業への支障がないにもかかわらず全面禁止することは慎重であるべきです。

 

 

4.実務上おすすめのルール

現在の実務では、「原則自由・事前届出制・一定の場合のみ制限」という制度設計が最もトラブルが少ないと考えられます。

例えば、次のような規定が考えられます。

 

従業員は副業・兼業を行うことができる。ただし、会社の業務運営に支障を及ぼすおそれがある場合、労働者の健康確保上問題がある場合、競業行為に該当する場合その他正当な理由がある場合は、会社は副業・兼業の中止または内容変更を求めることができる。

 

副業を頭ごなしに禁止するのではなく、「健康確保」「情報漏えい防止」「競業避止」の観点から管理する制度とすることが、現在の法令や行政方針にも合致していると考えられます。

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