がんが見つかった社員を解雇したいというご相談

2026/10/31|964文字

 

がんが見つかった社員を解雇したいというご相談ですが、結論から申し上げると、「がんであること」や「病気になったこと」自体を理由として解雇することは、極めて大きな法的リスクがあります。 場合によっては解雇権の濫用として無効と判断される可能性が高いため、慎重な対応が必要です。

 

まず、労働契約法では、解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当でなければ無効とされています。そのため、社員ががんと診断されたという事実だけでは、通常は解雇理由になりません。

 

また、がん治療では手術、放射線治療、抗がん剤治療などのために長期療養が必要となる場合がありますが、現在は医療技術の進歩により、治療と仕事を両立しながら勤務を続けるケースも少なくありません。厚生労働省も企業に対して「治療と仕事の両立支援」を推進しており、会社としてはまず就業継続の可能性を検討することが求められます。

 

もっとも、すべての場合に解雇が認められないわけではありません。

例えば、次のような事情があり、かつ就業規則の休職規定に基づいて適切な手続を経た場合には、退職や解雇の有効性が認められる余地があります。

  • 十分な療養期間を与えたにもかかわらず復職の見込みがない
  • 自社に配置可能な業務が存在しない
  • 休職期間満了後も就労不能状態が継続している
  • 必要な配慮を行っても業務遂行が不可能である

特に注意が必要なのは、業務上の原因による疾病との関係です。もしがんが労災と認定される可能性がある場合には、労働基準法第19条により、療養のため休業している期間及びその後30日間は、原則として解雇が禁止されます。

 

実務上は、次の流れを踏むことが重要です。

  1. 診断内容や今後の治療計画を本人に確認する
  2. 主治医の意見書や産業医の意見を参考にする
  3. 短時間勤務、配置転換、在宅勤務などの可能性を検討する
  4. 休職制度を適切に運用する
  5. 休職期間満了時点で復職可能性を慎重に判断する

したがって、会社としては「がんになったので辞めてもらう」という対応は避けるべきであり、まずは治療と就労の両立可能性を検討したうえで、就業規則や医師の意見に基づき復職の可否を判断することをお勧めします。解雇を検討する場合でも、その前提として休職制度の運用や合理的配慮の検討を十分に行っていなければ、後に解雇無効と判断されるリスクが高いと考えられます。

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