2026/09/07|1,173文字
会社が従業員に「自宅待機」を命じた場合、その理由が会社側の事情であれば、原則として会社は賃金(待機手当)を支払う義務があります。
これは労働基準法や民法の考え方に基づく重要ポイントです。
1.そもそも「自宅待機」とは何か?
自宅待機とは、会社が従業員に対して「出社しないで自宅で待機するように命じる」業務命令のことです。
ポイントは、従業員は働く意思も能力もあるが、会社が「働かせない」状態にしているという点です。
この構造が、賃金の扱いに直結します。
2.自宅待機の理由によって賃金の扱いが変わる
(A)会社側の事情で働かせない場合
・業務量が減った
・事業所閉鎖
・感染症対策
・事実確認のため一時的に職場から外す
・情報流出防止のため出社させない など
この場合は会社都合で就労を拒否している状態です。
▶原則:賃金100%支払いが必要
従業員は働く準備ができているのに、会社が働かせないからです。
民法第536条第2項の「債権者(会社)の責めに帰すべき事由」に該当します。
▶例外:休業手当(平均賃金60%)で足りるケース
業務量の急減など「会社都合の休業」に該当する場合は、労働基準法第26条により平均賃金の60%以上の休業手当を支払えば足ります。
(コロナ禍で多くの企業がこの扱いをしました。)
(B)従業員側の責任で働けない場合
・従業員が重大な規律違反を行い、懲戒処分として「出勤停止」
・私傷病で働けない など
この場合は、従業員側の事情で働けない状態です。
▶原則:無給(ノーワーク・ノーペイ)
懲戒処分として、就業規則に規定されている「出勤停止」では無給が一般的です。
私傷病で働けない場合も賃金は発生しません。
(C)不正行為の疑いがあり「事実確認・調査のための自宅待機」の場合
ここが最も誤解されやすい部分です。
従業員に不正の疑いがあっても、懲戒処分が確定する前の「事実確認・調査目的の自宅待機」は、会社都合扱いです。
▶原則:賃金100%支払いが必要
「まだ事実が確定していない段階」であり、従業員は働く意思・能力があるためです。
▶例外:無給が認められることもあるが、ハードルは極めて高い
証拠隠滅の具体的危険など「緊急かつ合理的な理由」が必要で、抽象的な疑いだけでは無給は認められません。
3.よくある誤解と注意点
誤解①:「働いていないのだから給料は払わなくていい」
→会社が働かせない場合は賃金支払い義務が発生します。
「働いていない=無給」ではありません。
誤解②:「自宅待機は懲戒処分だから無給でよい」
→自宅待機は多くの場合懲戒ではなく業務命令です。
懲戒処分として扱うには就業規則の根拠と厳格な手続が必要です。
誤解③:「就業規則に書いていないから自宅待機はできない」
→自宅待機命令自体は業務命令として可能です。
ただし、給与の扱いは別問題であり、無給にするには厳しい要件があります。