2025/10/07|1,324文字
<休養室とは?>
「休養室」とは、職場で従業員が急に体調を崩した際に、一時的に横になって休めるように設けられる専用の部屋です。救急車の到着まで待機する場所としても使われます。単なる「休憩室」とは異なり、医療的・衛生的な配慮が求められる設備です。
<設置義務の有無>
休養室の設置は、労働安全衛生法に基づく「労働安全衛生規則(安衛則)」および「事務所衛生基準規則(事務所則)」によって義務付けられています。
次のどちらかに該当する事業場では、休養室の設置が義務です。
・常時50人以上の労働者を使用している事業場
・常時女性30人以上の労働者を使用している事業場
この場合、事業者は「労働者が臥床(がしょう)できる休養室または休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」とされています(安衛則第618条、事務所則第21条)。
<休養室の目的と役割>
休養室の主な目的は次の通りです。
・急な体調不良者を一時的に休ませる
・救急搬送までの待機場所として使う
・安静を保ち、症状の悪化を防ぐ
このように、従業員の健康と安全を守るための「緊急対応スペース」としての役割を担っています。
<休養室に必要な設備>
休養室には次のような設備が必要です。
・ベッドや布団:横になって休める設備
・遮光・防音設備:プライバシーと静寂を確保するため、カーテンやパーテーションなど
・救急箱:応急処置ができるような医療用品
・換気・空調:快適な室温と空気環境を保つこと
また、男女別に設ける必要があるため、スペースや構造にも配慮が必要です。
<休養室と休憩室の違い>
混同されがちですが、休養室と休憩室は目的も法的扱いも異なります。
項目 | 休養室 | 休憩室 |
目的 | 急病人の一時的な休養、救急対応のための専用スペース | 業務の合間の気分転換や食事など、リフレッシュのための場所 |
設置義務 | 常時50人以上または女性30人以上の労働者を使用する事業場に設置義務あり | 努力義務(設置が望ましいが、義務ではない) |
設備 | ベッド、遮光、防音、救急箱、換気・空調など | 椅子、テーブル、給湯設備、雑誌など |
休養室は「設けなければならない」義務ですが、休憩室は「設けるよう努めなければならない」努力義務にとどまります。
<設置しない場合のリスク>
設置義務があるにもかかわらず、休養室を設けていない場合には、次のようなリスクがあります。
・労働安全衛生規則違反:行政指導や是正勧告の対象になるリスク
・安全配慮義務違反:急病人への対応が不適切だった場合、企業の法的責任が問われるリスク
・社会的信用の低下:従業員の健康管理を怠っていると見なされ、企業イメージに悪影響が生じるリスク
<まとめ>
・休養室は、急病人の一時的な休養や救急対応のための専用スペース。
・常時50人以上または女性30人以上の労働者を使用する事業場には設置義務がある。
・ベッド、遮光、防音、救急箱などの設備が必要。
・休憩室とは目的も法的扱いも異なる。
・設置しないと法令違反や企業責任の問題につながる。
企業が従業員の健康と安全を守るためには、法令遵守だけでなく、実際に使いやすく安心できる休養室の整備が重要です。設置義務の有無にかかわらず、職場環境の改善の一環として検討する価値は十分にあります。