2025/08/27|1,614文字
<人手不足だと長時間労働が起きる>
人手不足の職場では、限られた人数で業務を回す必要があるため、どうしても一人ひとりの負担が増え、長時間労働が常態化しがちです。特に介護、飲食、建設、物流などの現場では、慢性的な人員不足が続いており、働き手の健康や生活に深刻な影響を及ぼしています。
しかし、長時間労働は生産性の低下や離職率の上昇を招き、さらに人手不足を悪化させるという悪循環に陥ります。そこで、限られた人員でも持続可能な働き方を実現するための解決策が求められています。
解消のための具体的なアプローチとしては、以下のようなものが考えられます。
<業務の棚卸と再設計(業務効率化)>
ありきたりですが、不要な業務や重複作業を削減し、限られた時間で成果を出すことです。
「やらなくてもいい仕事」を見極め、優先順位を明確にします。昔から行っている作業ほど、今や不要となっているものが多いでしょう。
業務フローを可視化し、ムダ・ムリ・ムラを洗い出します。特に、書類作成や報告業務を簡素化します。
重複作業を見つけるには、1つの部門だけでなく、なるべく多くの部門が集まって、合同で検討することをお勧めします。複数の部門にまたがって重複している業務が見つかることでしょう。
<IT・デジタルツールの活用>
人の手に頼っていた作業を自動化・効率化します。これはミスが起こらないようにする緊張感によって生ずるストレスからの解放も意味します。
具体的な方法としては、勤怠管理やシフト作成をクラウドで一元化する、チャットボットやAIによる問い合わせ対応を導入する、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による定型業務の自動化を行うなどが考えられます。
特に物流業では、出荷伝票作成をRPAで自動化し、事務作業を大幅に削減することが可能です。
<シフト制・柔軟な勤務形態の導入>
限られた人材を効率的に配置し、過度な残業を防ぐために必要です。
思い切った時短勤務や週休3日制の導入、パート・アルバイト・副業人材の活用、スキルに応じた業務分担で無理なく働ける環境を整備するといったことが考えられます。
飲食店でランチ・ディナーのピーク時間だけ、スポットワーカーを利用するということも考えられます。
<外部リソースの活用(アウトソーシング・業務委託)>
社内で抱えきれない業務を外部に委託し、負担を分散することを検討します。
清掃、経理、採用などの間接業務を外部に委託したり、フリーランスや業務委託契約による専門人材を活用したりといったことを考えます。
<人材育成と多能工化>
一人が複数の業務をこなせるようにし、柔軟な人員配置を可能にします。
OJTやeラーニングによるスキルアップ支援、業務ローテーションによる経験の幅の拡大、資格取得支援制度の導入などによって行います。
建設現場で職人が簡単な事務作業もこなせるように教育し、事務員の負担を軽減するということは実際に行われています。
<メンタルヘルスと働きがいの向上>
働く人の満足度を高め、離職や現場からの離脱を防ぐことで、人手不足の悪化を防ぎます。
これには、定期的な面談やストレスチェックの実施、表彰制度やキャリアパスの提示、ワークライフバランスを重視した職場文化の醸成といった、やや手間のかかることが必要です
しかし、これは会社の態度を示すことにもなり、大きな効果が期待できます。
<持続可能な働き方への転換>
人手不足の中で長時間労働を解消するには、「人を増やす」だけではなく、「働き方そのものを変える」ことが不可欠です。業務の見直し、デジタル化、柔軟な働き方の導入など、複数の施策を組み合わせることで、限られた人材でも効率的に働ける環境を整えることができます。
そして何より重要なのは、働く人が「ここで働き続けたい」と思える職場づくりです。長時間労働の解消は、単なる労働時間の短縮ではなく、働く人の生活と尊厳を守るための第一歩なのです。