三六協定届出後にやること

2025/10/14|1,609文字

 

三六協定(時間外・休日労働に関する協定届)を労働基準監督署長に届け出た後、会社が行うべきことは、単なる手続きの完了にとどまらず、実際の労働時間管理や従業員との適切なコミュニケーションを通じて、法令遵守と職場の健全性を確保することです。

 

<協定内容の社内周知>

三六協定は、労働者代表との合意に基づいて締結されたものであり、従業員全体にその内容を周知する義務があります。

【掲示・配布】協定書の写しを社内に掲示する、または従業員に配付します。

【説明会の開催】特に時間外労働の上限や休日労働の条件など、重要なポイントについて説明する機会を設けます。

【就業規則との整合性】就業規則に定める労働時間制度と協定内容が矛盾しないよう確認・修正します。

 

<労働時間の適正な管理>

協定を届け出たからといって、無制限に残業させられるわけではありません。協定に基づき、労働時間を厳密に管理する必要があります。

【上限時間の遵守】協定で定めた時間外労働・休日労働の上限を超えないよう、月単位・年単位で管理します。

【勤怠記録の整備】タイムカード、勤怠システムなどで正確な労働時間を記録・保管します。

【36協定特別条項の運用】特別条項付き協定の場合は、臨時的な事情があることを記録し、回数制限(月6回以内)を守ります。

 

<健康確保措置の実施(特別条項付きの場合)>

特別条項付き三六協定を締結している場合、一定の時間外労働を超える従業員に対して健康確保措置が義務付けられています。労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入った場合に、指摘されやすいポイントです。

【医師による面接指導】時間外労働が月80時間を超えた従業員には、医師の面接指導を実施します。

【産業医との連携】面接指導の結果に基づき、必要な就業上の措置(業務軽減、配置転換など)を講じます。

【健康管理記録の保存】面接指導の記録や就業措置の履歴を適切に保存します。

 

<労働者との継続的な対話と改善>

協定は一度締結すれば終わりではなく、職場の実態に応じて見直しや改善が求められます。

【労働者代表との定期的な協議】労働時間の実態や負担感について意見交換を行います。

【協定の見直し】業務内容や働き方の変化に応じて、協定内容を更新します(更新時は届出が必要)。

【相談窓口の設置】長時間労働に関する悩みや健康不安を相談できる社内窓口を設けます。

 

<労働基準監督署からの指導への対応>

協定内容や運用状況に問題があると、労働基準監督署から是正指導を受けることがあります。

【記録の提出】勤怠記録、面接指導の履歴、協定書などの提示を求められる場合があるため、これに対応できるよう整備しておきます。

【是正報告書の作成】指導を受けた場合は、改善内容を記載した報告書を提出します。

【再発防止策の実施】違反があった場合は、社内研修や管理体制の強化など、具体的な再発防止策を講じます。

 

<労働環境の改善と働き方改革への対応>

三六協定の運用は、単なる法令遵守にとどまらず、働き方改革の一環として捉えることが重要です。

【業務の効率化】長時間労働の原因を分析し、業務の見直しやITツールの導入などで効率化を図ります。

【柔軟な働き方の導入】フレックスタイム制、テレワーク、時短勤務などの制度導入を検討します。

【従業員の意識改革】「残業=頑張っている」という価値観を見直し、成果重視の働き方へ転換します。

 

<実務の視点から>

三六協定の届出は、会社が従業員に時間外・休日労働を命じても罰則が適用されない効果(免罰効果)を得る手続きですが、それを適切に運用する責任は会社にあります。届出後は、協定内容の周知、労働時間の管理、健康確保措置、継続的な対話、行政対応、そして働き方改革への取り組みまで、幅広い対応が求められます。

これらを丁寧に実施することで、法令遵守はもちろん、従業員の健康と職場の信頼性を守ることができ、持続可能な企業運営につながります。

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