2025/10/09|1,342文字
企業が情報漏洩を防止するためには、技術的対策だけでなく、組織的・人的な対策を総合的に講じることが重要です。
<技術的対策>
技術的対策としては次のようなことが考えられます。
- アクセス制御の徹底
社員ごとに業務に必要な範囲でのみ情報へアクセスできるよう、権限を細かく設定します。
管理者権限の乱用を防ぐため、ログの監視や二重承認制度を導入する企業もあります。
- 暗号化の活用
機密情報(顧客データ、設計図、契約書など)は保存時・送信時ともに暗号化します。
特に外部との通信にはSSL/TLSなどの暗号化プロトコルを使用し、盗聴や改ざんを防止します。
- ファイアウォール・IDS/IPSの導入
外部からの不正アクセスを防ぐため、ファイアウォールを設置します。
侵入検知・防止システム(IDS/IPS)により、異常な通信をリアルタイムで検知・遮断します。
- デバイス管理(MDM)
社員のスマートフォンやノートPCなどの業務端末を一元管理し、紛失時には遠隔でデータを消去できるようにします。
USBメモリなどの外部記録媒体の使用制限も有効です。
<人的・組織的対策>
人的・組織的対策としては次のようなことが考えられます。
- 情報セキュリティ教育の実施
社員に対して定期的に情報セキュリティ研修を行い、リスク意識を高めます。
フィッシングメールやSNS経由の情報漏洩事例を紹介し、実践的な対応力を養います。
- 就業規則・誓約書の整備
機密保持義務を明文化し、入社時や異動時に誓約書を取り交わすことで、法的責任を明確にします。
退職者による情報持ち出しを防ぐため、退職時のチェックリストやアカウント削除を徹底します。
- 内部通報制度の整備
情報漏洩の兆候や不正行為を早期に発見するため、匿名で通報できる窓口を設けます。
通報者を保護する制度(公益通報者保護法など)も併せて周知します。
<物理的対策>
物理的対策としては次のようなことが考えられます。
- 入退室管理の強化
サーバールームや機密資料保管場所への入室はICカードや生体認証で制限します。
来訪者の記録や監視カメラの設置も有効です。
- 書類・記録媒体の管理
機密書類は施錠可能なキャビネットに保管し、不要になった場合はシュレッダーで確実に廃棄します。
CD/DVDやUSBメモリなどの記録媒体も台帳管理し、持ち出しには承認を必要とします。
<インシデント対応体制の構築>
なにか起こってしまったときの対策も怠れません。
- 情報漏洩発生時の対応手順の整備
万が一漏洩が発生した場合に備え、初動対応・原因調査・関係者への報告・再発防止策までの手順をマニュアル化します。
CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を社内に設置する企業も増えています。
- 外部専門機関との連携
セキュリティベンダーや法律事務所と連携し、迅速な対応が可能な体制を整えておくと安心です。
保険会社と連携し、情報漏洩保険の加入も検討されます。
<実務の視点から>
情報漏洩防止には「技術」「人」「組織」「物理」の多層的な対策が不可欠です。特に人的ミスや内部不正による漏洩は多く、社員教育や組織体制の整備が鍵となります。企業の信頼を守るためにも、日常的なセキュリティ意識の醸成と、万が一の備えを怠らないことが重要です。