自社の退職者を再雇用するジョブリターン制度 ― 導入のメリットと注意点

2024/02/29|1,147文字

 

<ジョブリターン制度とは>

ジョブリターン制度は、育児・介護や配偶者の転勤などで退職を余儀なくされたり、就学・留学・転職などキャリアアップを目指して退職したりした従業員を、本人の希望により再雇用する制度です。

企業によって名称は異なり、「再雇用制度」「キャリア・リターン制度」「カムバック制度」などとも呼ばれることもあります。

また大手企業では、退職者のネットワークを作りその中から再雇用を行う「アルムナイ採用」と呼ばれる制度もあります。

 

<ジョブリターン制度のメリット>

ジョブリターン制度には、多くのメリットがあります。

まず、採用や教育にかかるコストが抑えられます。企業は、再雇用者の能力や適性をすでに把握できています。反対に再雇用者は、自社の理念や企業風土を理解しています。このため、入社後のミスマッチが起こりにくいと考えられます。一から教育をする必要もないため、結果として採用や教育コストが抑えられます。

また、ジョブリターン制度の運用コストは、広報誌での周知や退職者向けウェブサイトを整備する程度です。他の制度に比べて格段に運用しやすいといえます。

さらに、再雇用者の知識・スキルを自社サービスに活かすことができます。退職した従業員は、これまでと違う環境で活動することにより、新たな知見とスキルを得た可能性があります。これらを、自社のサービス向上や新しいイノベーションに繋げることができます。

出産・育児を理由に退職した女性の再雇用は、女性が活躍しやすい会社としてのPRにも繋がります。介護のために退職した人の再雇用も、企業のイメージアップに繋がります。

 

<ジョブリターン制度が生まれた背景>

ジョブリターン制度が生まれた背景には、企業の人材不足と採用難があります。現在は従業員が退職・転職するケースが増え、少子高齢化の影響も出てきています。そこで注目されたのが、退職者の再雇用です。再雇用者は能力を把握できるため、入社後のミスマッチが起こりにくく、採用や教育コストも抑えられます。

 

<ジョブリターン制度の注意点>

ジョブリターン制度を導入し運用するには、いくつかの注意点があります。

まず、応募条件の明確化が必要です。退職理由が、配偶者の転勤に伴う転職や、留学であれば、知識やスキルの上積みが期待できますが、育児や介護であれば大きな期待はできません。こうした事情を踏まえ、退職理由の限定が考えられます。

また、勤続◯年以上、退職後◯年以内など、ジョブリターン制度のメリットを考えての限定も必要でしょう。

さらに、入社後の待遇についても、在籍の従業員との不公平感が出ないように配慮しなければなりません。退職時の待遇をそのまま適用するのではなく、再雇用後の評価による変動幅を、広めにとる予定で設定するのが一般的です。

PAGE TOP