2024/03/01|898文字
<労災による後遺症>
労災によるケガや病気でも、治療を受けることで症状が改善し、最終的には完治するケースが多いですが、何らかの症状が身体に残ってしまうこともあります。
労災が原因で、このような後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定を受けることによって、障害の程度に応じて、労災保険給付を受けることができます。
<障害に対する労災保険の給付>
業務や通勤が原因のケガや病気が「治ったとき」、身体に一定以上の障害が残った場合には、業務災害なら障害補償給付、通勤災害なら障害給付が支給されます。
そして、障害の程度は障害等級に区分され、第1級から第7級は、障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金が、第8級から第14級は、障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金が支給されます。
<特殊な意味の「治ったとき」>
ケガや病気が「治ったとき」というのは、一般には健康な状態に回復したことをいいます。
しかし、労災保険ではこうした場合だけでなく、ケガや病気の症状が安定して、医学上一般的に認められた医療を行っても、その効果が期待できなくなった状態になった場合にも「治ったとき」といいます。
たとえば、骨折が癒合したり、傷口がふさがったりしても、痛みやしびれなどの症状が残り、これ以上の治療の効果が期待できない場合が該当します。
これは「症状固定」「治癒(ちゆ)」とも呼ばれます。
<通院と検査の継続>
後遺症が残りそうな場合でも、治療を最優先して、症状固定まで医師の指示に従って通院・検査を受け続けることが大事です。
後遺障害認定の申請は、症状固定の診断を受けてから行いますから、それまでは焦らずに療養を続けなければなりません。
<症状固定後の手続き>
労災保険から後遺症を原因とする給付を受けるためには、症状固定後に、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、労働基準監督署長に請求書を提出して、調査官による面談を受けて、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
労災の原因が、会社の落ち度や第三者の行為によるものであって、労災保険だけでは補償が十分でない場合には、損害賠償請求について、弁護士に相談することをお勧めします。