高齢者雇用の進展

2024/01/05|1,111文字

 

<令和5年「高年齢者雇用状況等報告」>

令和5(2023)年12月22日、厚生労働省は令和5年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在)の集計結果を取りまとめ公表しました。

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、65歳までの雇用の確保を目的として、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるよう、企業に義務付けています。

さらに、70歳までの就業機会の確保を目的として、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」という雇用による措置や、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」という雇用以外の措置のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるように努めることを企業に義務付けています。

 

<集計結果のポイント>

Ⅰ 65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済み99.9%[変動なし]

・高年齢者雇用確保措置の措置内容別の内訳は、

「継続雇用制度の導入」69.2%[1.4ポイント減少]

「定年の引上げ」26.9%[1.4ポイント増加]

Ⅱ 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済み29.7%[1.8ポイント増加]

・中小企業では30.3%[1.8ポイント増加]

・大企業では22.8%[2.4ポイント増加]

Ⅲ 65歳以上定年企業(定年廃止含む)は30.8%[1.4ポイント増加]

Ⅳ 66歳以上まで働ける制度のある企業は43.3%[2.6ポイント増加]

70歳以上まで働ける制度のある企業は41.6%[2.5ポイント増加]

この集計では、従業員21人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。

 

<実務の視点から>

法改正による努力義務の新設や、国からの政策的な指導に対しては、大企業が早期に対応し、中小企業がこれに追随するのが一般的な流れとなっています。

しかし、高年齢者の積極的な雇用については、大企業と中小企業とで事情が異なっているようです。

大企業では、定年後の雇用継続について、正社員からのニーズを満たすため、福利厚生の観点から取り組む姿勢が見られます。

これに対して、中小企業では、新規人材の獲得が困難な状況が続いていることから、人材確保のため定年後の継続雇用に取り組まざるを得ないという、切実感をもった対応となっているようです。

近年では、15~64歳の人口を示す「生産年齢人口」が減少を続けています。ところが、労働力人口は増加しています。この隙間を埋めるのが女性と高年齢者の労働参加ですから、企業規模に関わらず、今後も高年齢者の雇用確保が推進されていくことでしょう。

PAGE TOP