所定労働時間の不利益変更

2023/04/23|1,291文字

 

<不利益変更>

労働条件の変更のうち、労働者にとって不利益な変更を「不利益変更」といいます。

一般に、契約当事者の一方が、契約内容を相手方に不利益に変更することは、特別な合意がない限り許されません。

ですから、不利益変更禁止の原則は、これ自体、労働契約について例外的なルールというわけではありません。

むしろ、労働条件については、労働者と使用者の合意による場合だけでなく、一定の場合には、就業規則の変更によって変更できるとされている点に特徴があります。〔労働契約法第8条、第10条〕

なお、労働契約のうち労働基準法などの基準を下回る部分については、法令によって修正を受けますから、こうして修正を受けた労働契約の内容が実際の労働条件となります。

 

<就業規則の変更による労働条件の変更>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要です。〔労働契約法第10条〕

1.その変更が、次のような事情に照らして合理的であること。

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

2.事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません。〔労働基準法第90条〕

3.労働者に変更後の就業規則を周知すること。

4.就業規則を作成・変更した場合は、所轄の労働基準監督署長に届けなければなりません。〔労働基準法第89条〕

 

<所定労働時間の延長>

月給が固定されたままで、所定労働時間が延長された場合には、どの労働者にとっても不利益です。

しかし、所定労働時間の延長に比例して、月給が増額された場合、あるいは時間給で働いている労働者の所定労働時間が延長された場合には、時間単価についての不利益は発生しません。

こうした場合、収入が増加したことを利益と考える労働者、プライベートの時間が減少することを不利益と考える労働者、賃金の時間単価が維持されていれば利益にも不利益にもならないと考える労働者が想定されます。

 

<所定労働時間の短縮>

月給が固定されたままで、所定労働時間が短縮された場合には、どの労働者にとっても利益となります。

しかし、所定労働時間の短縮に比例して、月給が減額された場合、あるいは時間給で働いている労働者の所定労働時間が短縮された場合には、時間単価についての不利益は発生しません。

こうした場合、収入が減少したことを不利益と考える労働者、プライベートの時間が増加することを利益と考える労働者、賃金の時間単価が維持されていれば利益にも不利益にもならないと考える労働者が想定されます。

 

<不利益の基準>

「不利益変更」にいう「不利益」は、全体的に見て、あるいは平均を計算してみてということではありません。

客観的に見て、一人でも不利益になりうるのであれば、これを「不利益」と考えて対応することが求められます。

所定労働時間の変更については、すべての労働者にとって明らかに利益となるものでない限り、不利益となりうることを想定して、不利益変更の場合の対応が求められることになります。

 

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