2025/09/01|1,107文字
<仕事と育児・介護の両立支援策とは?>
仕事と育児・介護の両立支援策とは、働く人が家庭の責任(子育てや家族の介護)を果たしながら、安定して働き続けられるようにするための制度や取組みのことです。少子高齢化が進む日本では、育児と介護の両方を担う「ダブルケア層」も増えており、企業・行政・社会全体での支援が重要視されています。
<背景と社会的な必要性>
両立支援策が必要となった背景には次のような事情があります。
◯少子高齢化の進行:出生率の低下と高齢者人口の増加により、育児・介護の負担が特定の個人に集中しています。
◯共働き世帯の増加:育児・介護を担う人の多くが働いており、両立支援が就労継続の鍵となっています。
◯介護離職の防止:年間約10万人が介護を理由に離職しているとされ、深刻な社会的課題となっています。
◯女性の就業促進:育児期・介護期に離職する女性が多く、支援策はジェンダー平等にも直結しています。
<企業による両立支援の取組み>
企業は法定の制度に加え、独自の支援策を導入することで、従業員の定着や生産性向上につなげています。よくある企業の取組みとしては、次のようなものがあります。
・フレックスタイム制度や在宅勤務の導入
・ベビーシッター費用の補助
・介護相談窓口の設置
・両立支援ハンドブックの配布
・上司向けの両立支援研修
これらは、従業員の不安を軽減し、安心して働ける環境づくりに貢献しています。
<現状の課題>
現状の課題としては、次のようなものが挙げられます。
- 制度の「使いづらさ」
・職場の理解不足や取得への心理的ハードル
・管理職の支援スキル不足
・「制度はあるが使えない」状況が散見される
- 中小企業での導入の遅れ
・人員や資金の制約から制度整備が難しい
・支援制度の認知度が低い
- ダブルケア層への対応不足
・育児と介護が同時に発生するケースへの制度的対応が不十分
<今後の展望と政策的方向性>
政府は「こども未来戦略」や「介護離職ゼロ」政策を通じて、両立支援の強化を図っています。今後は次のような方向性が期待されます。
◯制度の柔軟化:テレワークや副業との併用を前提とした支援設計
◯中小企業支援の強化:助成金や相談窓口の充実
◯男性の育児参加促進:育児休業取得率の向上(2025年目標:50%)
◯地域との連携:自治体・NPOとの協働による支援体制の構築
<実務の視点から>
仕事と育児・介護の両立支援策は、単なる福利厚生ではなく、持続可能な社会づくりの基盤です。制度の整備だけでなく、職場文化の醸成や個々の事情への配慮が求められます。企業・行政・地域が連携し、誰もが安心して働き続けられる社会の実現に向けて、支援の質と幅を広げていくことが重要です。