就業規則の記事

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2019.05.30. 解決社労士 柳田 恵一

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

しかし、「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するという規定です。「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

 

<注意書きにも注意>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

面倒であれば、就業規則のプロフェッショナルである社会保険労務士にご用命ください。

 

2019.05.26. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金倒産>

少し昔のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第53条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして活用>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2019.05.21. 解決社労士 柳田 恵一

<突然の退職申し出>

入社2年目のエース社員から、社長に退職願が提出されました。

「今日は16日ですから、月末退職でOKですよね。」と何だかうれしそうです。聞けば大学の先輩を通じて、大手企業にスカウトされたとか。先月結婚したのも転職が決まったからだそうです。

社長としては、辞めてほしくないですし、せめてきちんと引き継ぎを終わらせてほしいです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職)

第50条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①  退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

よく見ると、退職を願い出て「会社が承認したとき」と書いてあります。では、会社が承認しなければ良いのでしょうか。

また、「14」には下線が引かれていますから、これを「100」に修正しても良いのでしょうか。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項及び第2項)。

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日が20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります(民法第627条第2項)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

特にここでは、労働基準法などではなく、民法の規定がポイントとなります。

 

<引き継ぎのポイント>

きちんと引き継ぎを完了させるには、次のようなことがポイントとなります。

・普段から退職や異動を想定して、短期間で引き継ぎを完了できるようにしておくこと

・退職にあたっては、引き継ぎを完了することが重要な業務であることを、就業規則にも明示しておくこと

・引き継ぎの拒否は、懲戒処分の対象となることを就業規則に規定すること

そして、年次有給休暇の取得を申し出たとしても、会社が時季変更権を行使できないような場合には、権利の濫用としてこれを拒否することが考えられます。ただ、円満に解決するには、年次有給休暇の買い取りも検討したいところです。

 

<突然辞められないためには>

これには地道な努力が求められます。つぎのようなことがポイントとなります。

・社員が自分の将来を思い描ける人事制度の構築(想定キャリアの明確化)

・経営理念の明確化と理解のための教育研修

・会社の魅力の抽出と社員へのアピール

・社員同士のコミュニケーションを密にし維持する仕組みづくり

 

2019.05.17. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金カット>

会社の経営が思わしくなく、一時的に賃金カットを実施したくても、労働者の「自由な意思による同意」が無ければむずかしいのです。

社長が社員全員を集めて説明し、一人ひとり説得を試みたとしても、誰だって給料を減らされるのはイヤです。

ヘタをすると、どの会社でも通用する優秀な社員だけが退職していき、残ったメンバーでは…ということになりかねません。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる不都合なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(昇給)

第47条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年    日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

この条文は、次のことを言っています。

・毎年、定期昇給を行うが、特別な事情があれば行わないこともある。

・臨時昇給もありうる。

・昇給額については、個人ごとに決める。

結局、この規定は昇給についてのみ述べていて、賃下げについては述べていません。

 

<就業規則の変更による場合>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が、次のような事情に照らして合理的であることが必要です。〔労働契約法第10条〕

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

実際に、これらの条件が充分にそろっていることを証明するというのは、使用者にとって大変むずかしいでしょう。

賃金は少し下がるけれど、福利厚生が大幅に充実するなど、労働者が同意して当然と言えるような事情があれば、むずかしくないこともありますが。

 

<2つの方法>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、会社が経営不振に陥らないようにすることです。これは、当たり前のことですが、常にできることではありません。

もう1つは、就業規則の規定を「昇給」ではなくて、次のように「給与改定」としておくことです。

 

(給与改定)

第47条 給与改定は、毎年    日をもって行うものとする。

2 特別な事由が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず臨時の給与改定を行うことがある。

3 昇降給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

 

そして社員には、「会社の状況によっては賞与や給料が減ることもある。会社が儲かっている時は社員に還元するので、会社が苦しい時には耐えて欲しい」という説明をあらかじめしておくのです。

さらに、経営不振でもいきなり人件費削減ではなく、まずは役員報酬のカット、そして不採算部門の縮小、新人採用の停止など手を尽くしたうえで実施するという説明もしておけば、社員にはそれなりの覚悟ができますし、イザというとき納得も得られやすいものです。

社員には、こういう覚悟をもって仕事をしていただいた方が、生産性が向上するのではないでしょうか。

 

2019.05.14. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし延長は無い)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと」などです。試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。長引けば、その新人の転職のチャンスも遠くなります。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集・選考・採用の精度は高めておかなければなりません。試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

人は見極めて採用し育てることが肝心なのです。

 

2019.05.11. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金の請求>

長年働いて円満退職したパート社員の代理人弁護士から、退職金請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の退職金請求も増えているようです。

「いや、うちの会社は契約更新のたびに、きちんと雇用契約書でパート社員には退職金の支給が無いことを確認しています」と言っている会社が、実際に退職金を支払う結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(適用範囲)

第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・「この就業規則」が原則としてすべての従業員に適用される。

・パート社員の就業規則は別に作る。

・パート社員の就業規則に書いていないことは、パート社員を含め、すべての従業員に「この就業規則」が適用される。

結局、この規定は「この就業規則」とは別に「パート社員就業規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「この就業規則」に退職金の規定を置いて、別に「パート社員就業規則」を作らなければ、パート社員にも退職金の規定が適用されます。

たとえ、雇用契約書や雇い入れ通知書、労働条件通知書に「退職金は支給しません」とはっきり書いてあっても、労働者に有利なことは就業規則が優先的に適用されるのです。〔労働契約法第12条〕

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

なお、パートタイム労働者等について、規程の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、パートタイム労働者等に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、正社員用の就業規則とは別に「パート社員就業規則」を作ることです。しかし、これは就業規則を2つ作るのですから、骨の折れる作業です。

もう1つは、就業規則の中で、正社員とパート社員とで違う取り扱いをする部分に、そのことをきちんと書いておくことです。

たとえば「退職金は正社員のみに支給し、パート社員には支給しない。パート社員に退職金を支給しないことは、雇用契約書(雇い入れ通知書、労働条件通知書)にその旨明示する」という規定を、就業規則の退職金の規定のところに加えておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

 

2019.05.10. 解決社労士 柳田 恵一

<利子の下限利率>

社内預金の利率については、法定の最低限度(下限利率)が利率省令によって定められています。

そして、この下限利率は変動し得るものですから、下限利率が変動した場合の対応が必要となる場合があります。

下限利率が引き上げられた結果、社内預金の利率が下限利率を下回ってしまうときは、下限利率を定めた利率省令の施行日までに、少なくともその下限利率と同率以上に引き上げる必要があるのです。

反対に下限利率が引き下げられた場合に、社内預金の利率を引き下げるときには、原則として、改めて労使協定を締結し届出る必要があります。

なお、労使協定で社内預金の利率を下限利率によると定めている場合には、下限利率の引き下げに連動して社内預金の利率が変更されることとなりますが、この場合も、改めて労使協議の上、実勢を踏まえた適切な利率が設定されることが望ましいとされています。〔昭和52年1月7日基発4〕

 

<利子の計算方法>

利子の計算方法としては、利子は預け入れの月から付けること、10円未満の預金の端数には利子を付けなくてもよいこと、利子の計算で円未満の端数は切り捨ててよいことなどが定められています。〔利率省令第6条〕

したがって、年の途中から預け入れられたものについても、預け入れの月から年利に換算して利子を付けなければなりません。

ただし、月の16日以降に預け入れられた金額については、その月の利子を付けなくてもかまいませんし、払い戻しをした月については、その払い戻した金額についてその月の利子を付けなくてもかまいません。

 

2019.05.08. 解決社労士 柳田 恵一

<周知>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法106条1項〕

労使協定というと三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が有名です。〔労働基準法36条〕

労働基準法には、他にも次のような労使協定があります。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、協定を交わして周知せずに実施すると違法ですから注意しましょう。

 

・貯蓄金管理に関する協定〔18条〕

・購買代金などの賃金控除に関する協定〔24条〕

・1か月単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の2〕

・フレックスタイム制に関する協定〔32条の3〕

・1年単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の4〕

・1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定〔32条の5〕

・一斉休憩の適用除外に関する協定〔34条〕

・月60時間超の時間外労働をさせた場合の代替休暇に関する協定〔37条3項〕

・事業場外労働に関する協定〔38条の2〕

・裁量労働に関する協定〔38条の3〕

・年次有給休暇の計画的付与に関する協定〔39条〕

・年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定〔39条〕

・時間単位の年次有給休暇に関する協定〔39条〕

・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容〔38条の4〕

 

<周知の方法>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

また、労働基準法の中には、3つの施策のうちのどれかを労使の協議で選ぶという規定もあります。ですから、「法定通り」と言ってみても、何も決まっていない恐れがあります。

 

<周知しない結果>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

2019.04.23. 解決社労士 柳田 恵一

<不満発生の原因>

従業員から就業規則の変更に対して不満が出るのは、形式面と実質面の問題が想定されます。

 

<変更手続き>

就業規則変更の正しい手順は、次の順番になります。

 

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

 

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

こうした手続きを巡って、従業員から不満が出るのは、労働者の過半数を代表する者の選出手続きが民主的ではなかったために無効であるとか、就業規則が社内に周知される前に労働者の意見書が作成されたというような場合です。

労働者の過半数代表者の選出手続きが正しくなかった場合、その選出は無効となり、三六協定届の場合には、協定そのものが無効とされます。三六協定は届出が有効要件だからです。しかし、就業規則の場合には、その職場の従業員への周知が有効要件です。ですから、所轄の労働基準監督署長への届出のプロセスに不備があっても無効にはなりません。

会社が手続きの不備を指摘された場合には、「ご指摘ありがとうございます。次回から正しく行います」ということで済んでしまいます。

 

<不利益変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

ただ、この不利益は「平均値」や「総合計」ではなくて、個々の従業員にとって不利益かどうかの問題です。

「自分にとって不利益だ」という不満が出れば、会社はそうでないことを説明しなければなりません。説明できないのであれば、不利益解消のための対応が必要になります。

 

<不満発生の防止のためには>

就業規則を変更する場合には、事前に社内で説明することと、変更案を周知して、労働組合や労働者の過半数代表者以外からも広く意見を求めておくことです。

こうすることによって、思わぬ見落としに気付くこともありますし、周知を徹底しトラブルを未然に防止することもできるのです。

 

2019.04.10.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

1.従業員の労働条件の共通部分

2.職場の規律

3.法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<1.従業員の労働条件の共通部分>

「生理日の就業が困難な女子社員が休暇を申請した場合は、無給休暇とします」という規定がある場合、これは女子社員に共通の労働条件です。有給にするか無給にするかは会社が決めて就業規則に規定します。もっとも、生理休暇そのものは、労働基準法に定められた権利です。

また、「休暇をとる場合は、事前に所定用紙で上長経由会社に届け出て、許可を受けなければなりません」という規定がある場合、これは全社員に共通の労働条件です。用紙で届け出るか、口頭か、ネットかなどは会社が決めます。直接人事部門に届け出るのか、上長に届け出るのかも会社が決めます。

こうした従業員の労働条件の共通部分は、法令に違反しない限り、会社が自由に決めています。

 

<3.法令に定められた労働者の権利・義務>

年次有給休暇や残業など所定外労働に対する割増賃金は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

ただ、労働基準法は最低限の基準を定めていますから、基準を上回る日数の年次有給休暇を付与し、基準を上回る割増率の残業手当を就業規則に定めることもできます。ここは法令通りではなくても良いわけです。

使用者は、法令等の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを就業規則とは別に周知するのは大変ですし、法令の基準を上回る運用をする場合もありますから、まとめて就業規則に示しておくのが便利なのです。

 

<社会保険や労災保険と就業規則>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の加入基準や運用は、法令に規定されています。会社がこれとは異なる内容を定めても無効です。

また、労災保険は法令により従業員の全員が加入しますから、「臨時アルバイトは加入しない」などの規定を置いても無効です。

ただ、法令の内容とは別に、会社がプラスアルファの給付をするような福利厚生の制度を定めることは自由です。

「アルバイトでも、就業規則に定めれば社会保険に入れますか?労災保険はどうですか?」といった疑問を目にすることがあります。しかし、就業規則の規定とは無関係に、法令の基準によって加入することになるわけです。

 

就業規則の各規定と労働基準法など法令との関係は、判別がむずかしいと思います。就業規則の作成、変更、解釈については、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

 

2019.04.03.解決社労士

<内規の意味>

「内規」を小学館のデジタル大辞泉で調べると「組織の内部に適用されるきまり」とあります。

しかし、就業規則も「組織の内部に適用されるきまり」であることから、内規と就業規則との区別が難しくなっています。

また、就業規則については、労働基準法に詳細な規定があることから、その効力や性質が明確です。

一方で、一口に「内規」と言っても性質は一律ではないため、効力についても統一的に把握できません。

 

<就業規則の一部となる場合>

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「身だしなみは、常に整えておかなければなりません。詳細は別に定める内規によります」

勤務にあたって身だしなみを整えておくことは、全社統一の要請であるものの、具体的な基準は本社、営業所、店舗などによって異なるため、それぞれの拠点で内規を定めて運用するわけです。

このように就業規則で概略を定め、内規に詳細を定めることにしてあれば、内規は就業規則と一体のものとして、就業規則と同等の効力を持ちます。

従業員の立場からすると、「これは内規に過ぎないから」と言って遵守することを拒めません。

 

<労使慣行となる場合>

会社の中で、一定の事実や行為が相当長期間にわたり反復され、労使双方がこれに特段の異議を述べないことがあります。

これも内規と呼ばれますが、その性質は労使慣行です。

就業規則や労働協約などに文書化されていなくても、規範として確立しているのであれば、就業規則の変更を怠っているだけですから、就業規則と同等の効力を持つといえるでしょう。

ただ、「相当長期間」が何年なのかは、労使双方からどの程度強く認識され尊重されているかによるので明確ではありません。

 

<一時的な基準となる場合>

会社が労働組合に宛てて発した文書や、社内の決裁文書は、一種のルールに見えることもありますが、一般には一時的な基準に過ぎないので、就業規則と同等の効力を持ちません。

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「賞与の額は、会社の業績及び正社員の勤務成績などを考慮して、次の計算式により各人ごとに決定する。基本給×支給月数×考課係数」

この場合、ある賞与について、支給月数が2か月と決定されたとしても、この「2か月」がその後の賞与支給額の基準となるわけではありません。

たとえ数回連続で「2か月」と決定されたとしても、ある意味偶然であって、ルールになったわけではありません。

 

<内規が独り歩きしないように>

会社としては、一時的な基準としての内規を作ったつもりなのに、いつの間にか労使慣行となり、就業規則と同等の効力を持つことがあります。

これを防ぐには、一定の事実や行為が反復されたときには、これを文書化して「会社が決定する」ということを明示することです。

また、一時的な基準についての文書を作成した場合には、その適用対象や期間を明示して、反復継続を予定していないことを明示することです。

こうしたことは、労使紛争を予防する小さな工夫といえるでしょう。

 

2019.04.01.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<特定の従業員への手当支給>

たとえば、自由参加の社内行事でケガをした従業員が、公共の交通機関では通勤が困難で、家族が自家用車で送り迎えをするようになったとします。

このとき、会社が恩恵的に出勤1日につきいくらという手当を支給しても、就業規則には違反しません。

ただ、今後も時々発生しうることで、その会社の多数の従業員に共通する労働条件だと判断されるなら、就業規則に定めておくべきでしょう。

またたとえば、人事部門の従業員が社会保険労務士の資格をとって、業務に直接役立てている場合に、こうしたことがその会社にとって初めてのことであれば、就業規則にない資格手当を支給しても就業規則には違反しません。

もし、こうした資格手当の制度を新たに設けたのであれば、その会社にとって多数の従業員に共通する労働条件となりますから、就業規則に定めるべきこととなります。

 

<就業規則の権利保障機能>

就業規則に「従業員が結婚したときは、祝金3万円を支給する」と規定されているのに、特定の従業員だけ手続きをしても支給されないのは、就業規則違反となります。

これは、就業規則で定められた共通の労働条件のはずなのに、特定の従業員だけ対象外としているからです。

反対に、会社が特定の従業員に、就業規則には規定のないプラスアルファのことをしても、その従業員に対しては、就業規則違反が問題とはなりません。

就業規則は、それぞれの従業員に対して、最低限の権利を保障する機能を果たしているわけです。

 

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

たとえば、就業規則に通勤手当の規定が無い会社で、正社員だけに通勤手当が支給されている場合には、同一労働同一賃金に反する可能性が高いといえます。

なぜなら、通勤手当は通勤にかかる費用をまかなうのが目的ですから、正社員とその他の従業員とでその必要性に差が無いからです。

それにもかかわらず、正社員だけに支給するのは、不平等であり不合理なわけです。

これに対して、正社員だけに転居を伴う人事異動があり、転居による住宅費の負担を考慮して、正社員だけに住宅手当を支給するのは、公平であり合理的であって同一労働同一賃金の考え方に反していないことになります。

この場合、住宅手当が就業規則に規定されていないのであれば、正社員のみに支給されていることではなく、正社員の労働条件の共通部分であるにもかかわらず、就業規則に定めて所轄の労働基準監督署長に届出をしていないことが労働基準法違反となります。

 

<同じ雇用形態でも>

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇の公平・平等についての考え方です。

しかし、正規雇用労働者同士、非正規雇用労働者同士でも、一部の従業員だけに手当を支給すること、あるいは金額の異なる手当を支給することが、不公平・不平等となることもあります。

現に支給されている手当については、その手当支給の目的を再確認し、その目的に照らして不公平・不平等が発生していないかを確認し改善することが必要です。

この場合、不公平感・不平等感の有無について、従業員に聞き取り調査を行うことで、改善の方向性が見えてくると思います。

 

2019.03.29.解決社労士

<「許される」の意味>

使用者側からも、労働者側からも、「遅刻は何回まで許されるか」という質問を受けます。

この質問では「許されない」とは何かを想定し、それぞれについて回答する必要があります。

 

【遅刻について「許されない」の意味】

① 給与の欠勤控除を受ける。

② 懲戒処分を受ける。

③ 損害賠償の請求を受ける。

 

1回でも遅刻すれば、上司や先輩から注意を受けるでしょうから、これすら無くて許されるということは想定できません。

すると、上記の3つについて考えることになります。

 

<① 給与の欠勤控除を受ける>

欠勤控除について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【欠勤等の扱い】

第43条  欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令には規定がありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

また、遅刻による欠勤の時間に相当する賃金を超えて欠勤控除をすることは、懲戒処分になりますから、懲戒処分としての適法性が問題となります。

 

<② 懲戒処分を受ける>

モデル就業規則の最新版で、遅刻についての懲戒処分の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第64条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

 

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

この規定によると、2つのパターンがあります。

・正当な理由なくしばしば遅刻をしたとき → けん責、減給、出勤停止

・正当な理由なく無断でしばしば遅刻し 回注意されても遅刻したとき → 懲戒解雇など

 

「無断で」「注意されても」なお遅刻すると、懲戒解雇もありうるということになります。

これは、別に次の規定があって、遅刻の事前申し出と承認を必要としているからです。

こうした規定により、事前申し出と承認を義務付けていなければ、「無断で」を理由に一層重い処分とすることはできません。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第18条  労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

さて、モデル就業規則第64条第1項第2号には、「しばしば」という言葉があります。

この意味は、会社ごとに運用で決めることになります。

すると「何回まで許されるか」については、「運用による」という回答になってしまいます。

 

また、ここの第2項第3号には「  回にわたって」という言葉があり、何回にするかは会社が決める形になっています。

こうした規定があれば、会社の無断遅刻が何回まで許されるかは、かなり具体的にわかります。

 

このように、懲戒処分を受けないという意味で「許される遅刻は何回までか」という質問に対しては、「会社の就業規則と運用による」という回答になります。

 

<③ 損害賠償の請求を受ける>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

ここで遅刻は「労働契約の不履行」になりますから、「遅刻すると1回につき3千円の罰金」などのルールは、賠償予定となって労働基準法に違反するため無効となります。

しかし、「予定」するのではなく、会社に実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、遅刻した社員に損害賠償を請求することができます。

朝一番で予定していた大事な商談に遅刻して、商談相手が怒って帰り、その後お詫びしても許してもらえず、大きな仕事をライバル会社に取られてしまったという場合には、ある程度具体的な損害額が算定できるでしょう。

つまり、損害賠償責任については、遅刻の回数は問題ではないことになります。

 

こうしてみると、懲戒処分についての規定の中の「しばしば遅刻」「  回にわたって注意を受けても」という部分は、会社に与えた損害額や不注意の程度を基準にすることも、十分に客観的な合理性があるといえます。

 

2019.03.15.解決社労士

<今年のGWは10連休>

皇太子さまが即位される2019年5月1日と、即位を公に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日を、今年に限って「国民の祝日扱い」とする法律(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律)が成立しました。

これによって、2019年のゴールデンウィークは4月27日から5月6日までの10連休となります。

祝日法(国民の祝日に関する法律)には、祝日に挟まれた平日は休日となるという規定があり、5月1日が祝日になったことで、4月30日と5月2日が「国民の休日」となります。

 

<銀行の対応>

みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行は、「連休中は支店窓口を休業、ATMとネットバンクは稼働」という方針を示しています。

連休直前の4月26日と連休明けの5月7日は、店頭の大混雑が予想されますので、経理部門は前倒しで必要な手続きを済ませておくことをお勧めします。

 

<休日が多すぎる?>

会社の休日について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【休日】

第20条  休日は、次のとおりとする。

① 土曜日及び日曜日

② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)

③ 年末年始(12月  日~1月  日)

④ 夏季休日(  月  日~  月  日)

⑤ その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

この規定によれば、4月30日と5月2日は「国民の休日」であって、「国民の祝日」ではありませんから、会社の休日にはなりません。

しかし、会社の就業規則の規定が「祝日法に定める休日」となっていれば、10連休となります。

これだけ休日が多いことで、業務が停滞する恐れがある場合に、上に示したモデル就業規則第20条第2項のような規定があれば、「休日を他の日と振り替えること」もできます。ただし、休日の総日数は変わりません。

休日の振替に関する規定があっても無くても、業務をこなすのに必要な勤務日数が不足するのであれば、計画的に休日出勤を命じておくことも考えなければなりません。

いずれにせよ、業務の進行具合や計画と会社の就業規則を再確認し、各従業員のゴールデンウィークの勤務予定を確定しておくことをお勧めします。

 

2019.02.15.解決社労士

<無期転換の特例>

有期雇用の労働者は通算で5年を超えて働くと無期雇用に転換できますが、大学教員などに限っては5年より長い期間の研究プロジェクトに携わることもあるので、教員任期法などで10年超での転換が特例として定められています。

 

【労働契約法の原則】

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

 

【教員任期法(大学の教員等の任期に関する法律)による特例】

(労働契約法の特例)
第七条 第五条第一項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 

<東京大学で基準の変更>

東京大学も、これまでは教員任期法の特例を適用し、非常勤講師を無期雇用に切り替えるまでの期間を10年としてきました。

しかし東大教職員組合が、非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていないなどとして大学側に再考を要請し、大学側がこれを了承して、平成31(2019)年4月からは無期転換に必要な期間を5年とすることになったそうです。

この判断は、他の大学にも影響を与え、波及していくのではないでしょうか。

 

<立法事実という視点>

立法事実というのは、法令を制定する際の基礎となり、その法令の存在の合理性を支える事実です。

法令を制定する際には、規定に合理性(合憲性)を持たせるため、立法事実が確認されます。

これが不十分であると、後から「非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていない」など、規定の合理性を揺るがす立法事実を指摘されることがあります。

こうなると、法令の適用の合理性や、法令そのものの合理性が疑われるようになります。

また、法令が制定された当初は、その法令の合理性を裏付ける事実があったにもかかわらず、その後の社会的事実の変化により、法令が合理性を保てなくなる場合もあります。

 

<就業規則の見直し>

就業規則は法令ではありませんが、それぞれの規定には、裏付けとなる事実があります。

それが見込み違いであったり、時代とともに変化しているのであれば、規定を見直す必要があります。

この視点からも、御社の就業規則を見直すようお勧めします。

 

2019.01.29.解決社労士

<就業規則の作成・届出義務>

就業規則の作成と届出については、労働基準法に次の規定があります。

 

【就業規則の作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

全体で常時10人以上の労働者を使用するようになれば、就業規則の作成・届出義務が発生します。

パートやアルバイトなど非正規社員が1人であっても、全体で10人以上であれば、その1人に適用するための就業規則が必要となり、作成・届出義務が発生します。もし作成しなければ、その非正規社員には正社員の就業規則が適用されることになってしまいます。

 

<意見書の添付>

就業規則の作成や変更を労働基準監督署長に届け出るには、「意見書」の添付が必要です。

これについては、労働基準法に次の規定があります。

 

【意見書の添付】

第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

 

労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合の、「労働者の過半数を代表する者」は、正社員の就業規則の手続きに使用する意見書であっても、非正規社員を含めた「労働者全体の過半数を代表する者」であることが必要です。

 

<短時間労働者の就業規則の意見書>

一方で、パートタイム労働法(正式名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、パートやアルバイトなど短時間労働者の就業規則の作成・変更について、次の規定を置いています。

 

【就業規則の作成の手続】

第七条 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。

 

この規定にある「短時間労働者の過半数を代表すると認められるもの」というのは、労働基準法90条にならって、「当該事業場に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者」を指すものと考えられます。

また、意見聴取が努力義務とされている以上、短時間労働者の就業規則の作成・変更の届出に、短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの「意見書」を添付する必要は無いことになります。

 

2019.01.01.解決社労士

<法改正があった場合>

本来、法令の内容を広く国民に知らせるのは国家の役割だと思われるのですが、労働基準法には次の規定があって、労働基準法などの内容を労働者に周知させるのは使用者の義務ということになっています。

これには、30万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働基準法120条1号〕

 

【法令等の周知義務】

第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 

就業規則に、「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いておけば、法改正があっても法令と就業規則との矛盾が発生することは防げます。

しかし、こうした規定を置いたとしても、法改正の内容を労働者に周知する義務は果たしたことになりませんから、別途資料を配布して説明会を開催するなどが必要になってしまいます。

これではかえって大変ですから、法改正の内容を就業規則に反映させて、就業規則の一部として周知した方が簡単だということになります。

 

<労働条件の実態が就業規則に記載されている内容とズレている>

次のようなケースが考えられます。

・就業規則に出勤簿による勤務管理の規定があるが、実際にはタイムカードを使用している。

・就業規則には女子の制服についての規定があるが、数年前に制服が廃止されている。

・電車の遅れによる遅刻に、就業規則で必要とされている遅延証明書が不要とされている。

たしかに、古い規定が残っていても特別な不都合は無いのですが、会社側の就業規則に対する無関心な態度を示していることになりますから改めるべきでしょう。

 

<就業規則の予定していない非正社員がいる>

正社員と非正社員がいても、就業規則が1種類しか無ければ、その就業規則がすべての社員に適用されます。

そもそも、会社ごとに決めているはずの「正社員」の定義すら無いでしょうから、賞与、退職金、昇進、昇給、人事異動など、就業規則上は一律に扱うことになるわけです。

会社から非正社員に口頭で説明し、納得してもらっているつもりであったとしても、その人が退職後に経済的に困った場合には、会社に対して未支給の賞与や退職金の支払いを求めてくることもあります。

 

<「労使で話し合って」という規定が残っている>

社員のすべてが経営者の家族や親戚であれば、何でも話し合って円満に解決するのがベストでしょう。

しかし、会社が成長し従業員が増えてくると、赤の他人が会社に入ってきます。「労使で話し合って」では解決がむずかしくなります。

就業規則がトラブルの予防や解決に対応できる内容となっていないのであれば、早い段階で見直すことをお勧めします。

 

<会社の成長や労働環境の変化>

会社側からも従業員側からも、会社や社会の変化に応じて、労働条件の変更についての要望が出てくることがあります。

特に、今のように「働き方改革」について報道されない日が無いといった状況では、数多くの点について意見が出てきていることでしょう。

これはチャンスですから、よく話し合って就業規則の変更についての合意を形成したいところです。

 

<労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた>

「是正勧告」は、法令違反を直ちに改めなさいという内容ですから、速やかに就業規則の内容と運用を改めなければなりません。

似たものに「指導票」というのがありますが、こちらは計画的に改善を進める姿勢を示すことが求められるものです。

素人判断で動いてしまうと、将来に向けて大きな影響が生じますから、特に労基署対応に慣れた社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

<不利益変更の留意点>

従業員の全員ではなくても、一部の従業員にとって不利益となる就業規則の変更は、その不利益を被る従業員から、変更の無効確認や損害賠償の請求などの形で問題が露見することがあります。

 

【問題となる不利益変更の例】

・定年制が無い会社で新たに定年制を設ける。

・すでに規定されている休職期間を短くする。

・賃金の一部をカットする。

・退職金の支給額を減らす。

・所定労働時間を延長する(時間単価が下がる)。

 

経営者の立場で考えて、「やむを得ない事情がある」としても、裁判になれば「経営努力の不足」として一蹴されてしまうこともあります。

反対に、不利益変更の実質的な理由がさほど強固ではなくても、段取りが適正であるために是認されるケースもあります。

社会保険労務士にご用命いただく場合には、不利益変更の内容や理由だけでなく、変更の手順についても具体的にご相談いただけたらと思います。

 

2018.12.23.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<就業規則の必要性>

小規模な企業では、就業規則が無いこともあります。

しかし、明文化した規定がなく、労働条件が個人ごとに決められるようでは、事務処理が煩雑になるばかりでなく、労働者にも不信感を与えることになります。

これでは、トラブルとなる可能性が高まります。

会社の秩序を守り、統一的に事業を運営していくためには、労働条件や服務規律などを明らかにした就業規則を作成することが必要です。

 

労働基準法には、次の規定があります。

 

【就業規則作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

罰則があるわけですから、正社員、パート社員、嘱託社員、アルバイト社員など区分はどうあれ、臨時雇いではない従業員が10名以上なら、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

<就業規則のメリット>

罰則のことはともかく、就業規則を作成するメリットとしては、次のことが挙げられます。

 

【使用者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律を統一的、画一的に定めることによって、合理的で効率的な労務管理を行うことができる。・ 労働者一人ひとりが職場ルールを良く理解することによって、職場の秩序を良好に保つことができるようになる。

・ 無用なトラブルを予防し、安定した労使関係をつくることができる。

 

【労働者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律が明確になることによって労使関係が安定し、安心して働くことができるようになる。・ 明確にされた職場ルールを守ることによって、使用者からの恣意的な制裁を避けることができる。また、自分が知らない定めによる懲戒を受ける心配がなくなる。

・ 就業規則によって労働者の権利が守られるとともに、生活設計がたてやすくなる。

 

社会保険労務士という仕事をしていると、就業規則がちゃんとしていないために、余計なトラブルが多発する事態を目の当たりにしてしまいます。

「こんなトラブルは、こういう規定を置いておけば防げたのに」と思うことが多すぎます。

経営者も労働者も安心して事業を継続するために、その会社にマッチした就業規則は是非とも必要です。

 

なお、就業規則は生ものです。2年も放置していたら、害悪をもたらします。定期的な見直しをどうぞお忘れなく。

 

2018.12.18.解決社労士

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<意見書の内容>

所轄の労働基準監督署長に就業規則の変更届を提出するには、上記5.の意見書を添付しなければなりません。これが無いと、受け付けてもらえません。

ところが、「この変更は納得できません。私たちにとって不利になる変更です」「この変更は、労働基準法違反です」などの意見が書かれていても、問題なく受け付けてもらえます。

提出したときに押されるゴム印には、「受付」の文字があります。「承認」「確認」ではなくて「受付」です。

これは、内容の審査までは行わず、形式を満たしているので受け付けましたということです。

つまり、意見書に労働者の切実な訴えが書かれていたとしても、これは全く考慮されないのです。

 

<従業員に不利な変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

<法令違反の変更>

労働契約法13条の定めにより、法令で定める基準に達しない労働条件を定める就業規則は、その部分については無効となります。

不思議ですが、法令違反の就業規則でも、労働基準監督署に持って行けば受け付けてもらえます。

労働基準監督署にしてみれば、たとえ法令違反の規定が含まれていたとしても、そこは無効になって法令の内容に修正されるわけですから、安心して受け付けることができるわけです。

こうして、実際に所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)や訴訟などがなければ、就業規則の法令違反は指摘されないのが実情です。

 

<結論として>

このように、会社に都合よく就業規則を変更することは、かなり自由にできてしまうことは事実です。

明らかに不合理な不利益変更であるとか、法令違反であるとか、確信が持てる場合であれば、従業員や退職者から訴訟が提起されることもあるでしょう。

しかし、確信が持てない場合には、信頼できる社会保険労務士に相談してみることも考えましょう。

ちなみに、「就業規則を見せてもらえない」ということであれば、その就業規則は無効です。

この場合には、すべて法令通りということになりますし、法令に規定の無いことは何もルールが無いということになります。

 

2018.12.06.解決社労士

<契約書には似た規定が>

契約書の最後の方に「本契約書に定めのない事項、または本契約の履行にあたり疑義を生じた事項は、甲乙協議の上円満に解決をはかるものとする」という規定を見ることが多いですね。

しかし、契約書というのは、当事者間に紛争が発生した時にこそ、その解決の拠り所とするために作成されるものです。

なんでも話し合って円満に事が進むのならば、その当事者間に契約書は要りません。

それなのに、何か疑問に思うことがあれば話し合って解決しましょうという条文は矛盾しています。

 

<就業規則では>

就業規則の最初の方に「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」という規定を見ることも多いです。

なるほど、こうすれば法改正があっても、就業規則を変更する必要が無くて便利なようにも見えます。

しかし、こうしておけば不都合が無いといえるのでしょうか?

 

<たとえば労働基準法で>

労働基準法第7条の公民権行使の保障について、たとえば投票に行っている時間の賃金が支払われるか否かは、通達により労使の取り決めによるとされています。

ということは、賃金の支払いについて決めておかないとトラブルになるでしょう。

これは労働基準法第68条の生理休暇も同様です。休んだ日の賃金が支払われるのか支払われないのかは大問題です。

労働基準法第41条は、「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。さて、適用されない人の休憩や休日はどうなるのでしょうか。ご本人が自由に決めるのでしょうか。取締役に近い従業員についての話ですから事は重大です。

 

<他の労働法でも>

高年齢者雇用安定法が改正されたとき、会社は定年を引き上げるか、定年をなくすか、あるいは継続雇用制度を導入するかの選択を迫られました。

これと同様に、育児・介護休業法には、会社の義務として、どちらか/どれか選んで措置を実施するという規定がいくつかあります。

こうした場合には「法令の定めるところによる」と言ってみても、何も決まっていないことになります。

会社がどうすべきかについて、選択肢を与えられる条文というのは、最近になってから出現しています。

昔は「法令の定めるところによる」としておけば問題なかったのですが、最近の法令では「会社が従業員と話し合って選んでください」という内容が出てきましたので、対応しきれなくなっているというわけです。

 

<そもそも法令に規定が無い場合>

懲戒処分ができる場合とは、どのような場合なのか、法令には規定がありません。反対に、懲戒処分の限度や無効となる場合については、労働基準法や労働契約法に規定があります。ということは、就業規則に具体的な規定を置かなければ、懲戒処分が適正にできないことになります。

特に男女雇用機会均等法は、セクハラの禁止とセクハラ行為者に対する懲戒処分などの規定を企業に義務づけていますが、その具体的な内容は各企業の実情に応じて定めることになっています。セクハラの定義は法令にありませんから、「法令の定めるところによる」という規定ではセクハラが野放しになってしまいます。各企業ごとにきちんと定義を規定しなければなりません。

またたとえば、「正社員」ということばに、法令上の定義はありません。社内に正社員と正社員以外の従業員がいて、異なる処遇をしているのなら、それぞれの定義づけが必要です。もし「無期労働契約の従業員が正社員である」としていたら、労働契約法18条による有期労働契約の無期化により、正社員が増産されることになります。

 

<不都合を避けるためには>

何もせず放置したことによって「何もしていないのに」退職者から訴えられたり、労働基準監督署から是正を求められたりというのは、珍しいことではありません。

それぞれの会社にとって、必要不可欠な内容が、その会社の就業規則にきちんと規定されているか、法改正によって変えるべきところは変わっているか、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士のチェックが必要でしょう。

そして、会社の状況の変化や法改正のことも考えると、定期的なチェックが必要ということになります。

 

2018.12.03.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

3つのうちのどれにあたるかによって、就業規則変更の可能性と必要性は異なります。

 

<職場のルール>

明らかに不合理とならない限り、会社の実情に合わせて自由に変えられるのが原則です。

たとえば、「従業員は、従業員同志およびお客様・お取引先に対して明るく元気に挨拶すること」という規定を新たに就業規則に定めるような場合です。

そして変更の必要性については、会社の判断に委ねられています。

ここは、会社の創業の精神や経営理念を反映した内容が十分に盛り込まれるところです。

 

<労働契約の共通部分>

労働者に不利な変更は「不利益変更」となり厳格な要件のもとで許されます。

しかし、不利とならない変更や有利となる変更は原則として自由です。

たとえば、深夜労働の賃金の割増率を25%から30%に引き上げるような変更です。

これも、変更の必要性は会社の判断に委ねられます。

人手不足や働き方改革で、従業員の処遇改善が必要になっており、各社とも対応が迫られている部分です。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

労働基準法などの労働法に改正があれば、少なくとも会社に影響のある範囲内で、就業規則を変更しなければなりません。

そして就業規則の変更は、労働基準監督署への届け出が義務付けられていますから、法改正の情報が出たら早めの対応が必要となります。

ここの部分を変更していなくても、法律の規定が優先されますので、就業規則に古い部分が残っていれば、ただみっともないだけの物になってしまいます。

 

2018.11.28.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<職場のルール>

「就業規則」という名前の通り、働くにあたって労働者が職場で守るべきルールです。

 学校の校則は、学校で生徒が守るべきルールをまとめたものですが、これの会社版です。

ですから、会社ごとに会社の実情に合わせた内容となっています。

 

<労働契約の共通部分>

同じ会社の中でも、勤務地、業務内容、給与・時給などは、労働者ごとにバラバラです。

しかし、会社ごとに見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。

たとえば、出張したときの旅費や手当ての定めは、これに当たります。

「正社員」というのは、法律用語ではありません。

ですから、「正社員」の定義も会社ごとに就業規則の中で定めておく必要があります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

2018.11.27.解決社労士

<就業規則作成料金の相場>

社会保険労務士に就業規則の作成を依頼すると、相場は20万円前後です。

何に経費がかかるのかというと、経営者や人事部門の責任者と繰り返し行う打合せの時間、移動時間、就業規則をパソコンで作成する時間、これらすべての人件費です。

こうした業務を行えるのは、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法その他の労働法についての専門知識があり、法改正や通達の変更、裁判所の新判例や判例変更、社会情勢の変動などに即した知識の更新があって、トラブル対応の実戦経験を積んでいればこそのことです。

日頃の自己研鑽あっての高度に専門的な業務なので、人件費の時間単価は高額になるのです。

 

<高い就業規則で元が取れるのか>

下手な就業規則はトラブルを招きます。

会社と退職者との間で争いが生じ、徹底的に争った場合には、時間、労力、人件費その他の経費、そして何より精神力の負担が大変です。裁判になれば、会社の評判も落ちます。

会社の負担を減らすため、和解に持ち込むことができたとしても、3・6・12の法則があると言われるくらいです。

 

【解決金の相場3・6・12の法則】

賃金の3か月分 ― 退職者側に悪質性が認められる場合の解決金

賃金の6か月分 ― 会社と退職者のどちらが悪いともいえない場合の解決金

賃金の12か月分 ― 会社側に悪質性が認められる場合の解決金

 

こうしてみると、優れた就業規則でトラブルを防ぐことができるか、あるいは会社に悪質性が認められずに済むことが1回でもあれば、十分に元を取ることができます。

 

ネットに公開されている就業規則を手直ししたり、友人の会社の就業規則をコピーさせてもらったりでは、自社の実態に合った就業規則にはなりません。

この実態に合わない就業規則がトラブルの種となるのです。

 

<就業規則はいつ作るか>

労働基準法には、次の規定があります。

 

(作成及び届出の義務)第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

これによると、従業員が9人までは就業規則の作成義務が無いことになります。

しかし、なるべく早く就業規則作りに取りかかることを強くお勧めします。

残念なことに、「そろそろ従業員の人数が2ケタになりそう」「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というタイミングで、就業規則の作成を依頼してくるお客様が多いのです。

 

会社を設立し、いつか従業員を雇い入れる予定があるのなら、すぐに就業規則を作るようお勧めします。

従業員が1人でもいれば、就業規則の変更にあたって、不利益変更という厄介な問題が出てきます。

しかし、適用対象者がいないのであれば変更は自由です。

思い立った時に変更をかけていけば、会社にぴったりの就業規則が完成してから従業員を雇い入れるという理想的な形になります。

 

2018.10.30.解決社労士

<就業規則と労働契約(雇用契約)との優先順位>

 

労働契約は、会社と各労働者との個別契約です。

一方、就業規則に定めてあることは、その就業規則が適用される労働者に共通するのが原則です。

そして、就業規則に定めきれない各労働者に特有のことは労働契約に定められます。

原則として、就業規則が労働契約に優先します。〔労働基準法93条、労働契約法12条〕

ところが、就業規則が優先という法律の規定は、労働契約が就業規則よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして就業規則に従うという内容になっています。

ですから、労働契約の中に就業規則よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結論として、就業規則と労働契約の規定のうち、その労働者にとって有利なものが有効となります。

 

<具体的な判断>

就業規則と労働契約を比べて、違いがある部分については労働者に有利な方が有効となるとはいえ、これが簡単ではないのです。

たとえば、午後1時から3時の間はお客様が少なくてお店が暇だとします。

就業規則には、休憩時間が1時間と書かれているけれども、店長がパートさんとの労働契約更新にあたって「これからは休憩を2時間にしましょう」と提案し、パートさんがこれに合意したらどうでしょう。

多くの方にとっては、拘束時間が変わらないのに収入が減るので不利になると考えられます。

ところが、自宅が職場の隣にあって「ラッキー!昼休みに洗濯が済ませられるわ」と喜ぶパートさんがいるかもしれません。

労働法全体の考え方からすると、休憩時間は長い方が労働者に有利と考えられています。

しかし、必ずしもそうではありませんから、ここは会社と労働者との話し合いで解決したいところです。

 

2018.07.13.解決社労士

<誕生日の前日に1歳年をとる>

「年齢計算ニ関スル法律」という古い法律に次の規定があります。

 

年齢は出生の日より之を起算す

民法第143条の規定は年齢の計算に之を準用す

 

つまり、誕生日の前日の「午後12時」(2400秒)に年をとります。

「前日午後12時」と「当日午前0時」は、時刻としては同じですが日付は違うという理屈です。

学校でも、42日生まれから翌年41日生まれまでを1学年としています。41日から翌年331日までの間に○歳になる生徒の集団ということです。

おそらく「誕生日に年をとる」だと、229日生まれの人は、4年に1回しか年をとらないので不都合だからでしょう。

2月29日生まれの人は、前日の228日に年をとることにして、救済しているのだと思います。

 

<就業規則にある定年の規定>

会社の就業規則で、「65歳の誕生日が属する月の月末をもって定年とする」なら勘違いは無いのですが、「65歳に達した日の属する月の月末をもって定年とする」だと、毎月1日生まれの人の定年退職日を間違えてしまいやすいのです。

たとえば、41日生まれの人の場合、前者の規定なら4月末で定年、後者の規定なら3月末で定年です。

間違った運用を長く続けているのなら、就業規則の方を改定しましょう。

 

<保険年齢という考え方>

満年齢で計算したうえで、1年未満の端数については6か月以下のものは切り捨て6か月を超えるものは切り上げて計算する方式があります。端数についての「67入」です。

たとえば、299か月の保険加入者(被保険者)は30歳として取り扱われるわけです。

これは、保険年齢方式と呼ばれ、健康診断でも健診機関によっては個人の問診票にこの年齢が記載されます。

従業員から「私の年齢が1歳多い」というクレームが出ることもあります。

こうした場合には、健康診断のお知らせの中に保険年齢の説明を加えておくことをお勧めします。

 

2018.07.11.解決社労士

<禁止する必要性>

幹部社員や高度に専門性の高い社員が退職すると、会社に大きなダメージが生じます。

ましてや、その社員がライバル企業に転職したのでは、ダブルパンチを食らうことになります。

会社としては、こうした事態を阻止したいところです。

 

<職業選択の自由>

一方で、退職していく社員には職業選択の自由があります。〔憲法22条1項〕

どのような職業を選択するかの自由は、ライバル企業に転職する自由を含みます。

もっとも、この職業選択の自由に会社と社員との合意で制限を設けたなら、原則として合意による制約は有効です。

ただし、その合意の内容が合理性を欠き公序良俗に反するのであれば無効になります。〔民法90条〕

 

<競業避止義務を有効にするために必要なこと>

ライバル会社への転職を禁止した場合、その禁止が無制約に許されるわけではありません。

次のようなことを考慮要素として、公序良俗違反とならないことが必要です。

・就業規則や誓約書に内容が明示されていること

・その社員が営業秘密に関わっていたこと

・正当な目的によること

・「同業他社」の範囲など制限の対象が妥当であること

・地域・期間が妥当に限定されていること

・特別な手当の支給など、相当の代償が与えられること

 これらの考慮要素のうち、範囲の限定と相当の代償は大きなウエイトを占めるでしょう。

代償措置としては、給与の上乗せや退職金の上乗せが考えられます。

社員のメリットが無いのに、会社側から一方的にライバル企業への転職を制限したのでは、合理性を欠き公序良俗に反するものと認定されてしまいます。

 

<違反された企業の対応>

社員が退職して競業避止義務に違反した場合、競業行為の差止めが考えられます。

しかし、会社在籍中に十分な代償措置が取られていなければ、これを主張するのは困難です。

また、損害賠償を請求するには損害額の証明が必要となるのですが、これもかなり困難です。

こうしたことから、退職金の減額が現実的な措置となるのですが、退職し退職金を受け取ってからライバル会社に転職するケースには対応できません。

就業規則に規定する場合には、「退職後1年以内に別表のライバル会社に就職した場合には、退職金の半額を会社に返還するものとする」のような規定が必要でしょう。

 もっとも、会社が社員を大切にし、社員が会社に恩を感じるようになっていれば、社員は安易に会社を辞めないでしょうし、ライバル企業に転職することもありません。

これを目指すのが会社としてベストな対応でしょう。

 

2018.07.02.解決社労士

<就業規則の作成義務>

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出義務を負わせています。

このことから9人までの会社は、就業規則が無くても違法ではないといえます。

たとえ所轄の労働基準監督署が監督(調査)に入ったとしても、就業規則のことで指摘を受けることはありません。

しかし、従業員の少ない会社で就業規則が無いと、明確な基準が無いために、知らず知らずのうちに不平等や不公平が発生し、従業員の中に不満が芽生えて転職のきっかけとなるリスクは高まってしまいます。

しかも、懲戒処分は就業規則に具体的な規定が無いと、不適法とされ無効とされる可能性が高まるなど、問題社員への適切な対応が困難になってしまいます。

 

<労働条件の通知義務>

就業規則を作成していない会社であっても、誰か1人でも採用すれば、採用した人に対して、労働時間、賃金、退職に関する事項などにつき、書面を交付する義務を負っています。〔労働基準法15条1項〕

そのため、雇用契約書を交わしたり、会社から労働条件通知書(雇い入れ通知書)を渡したりしています。

これを怠ることは、もちろん労働基準法違反になるわけですが、待遇について具体的な内容を伝えていないと、残業や年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

中には「残業代は支払わない。有給休暇は取らせない。だから関係ない」という経営者もいるのですが、多くの場合、労働者の権利を主張してくるのは、在籍している従業員ではなくて、退職後の元従業員です。しかも、弁護士や社会保険労務士に相談したうえで請求してきますから、慰謝料を含め請求できるものはすべて請求してくる形となりやすいのです。

このときに、労働条件を示した書面が無いと、無いことそのものが会社側の落ち度ですから、元従業員の主張を認めざるを得なくなってしまいます。裁判にでもなれば、会社に有利な証拠を見つけるのが困難になってしまいます。

 

<会社の義務は単に負担なのか>

法令が会社に対して何かを義務付けているとなると、会社の負担になることばかりが目についてしまいます。

しかし、労働基準法が義務づける就業規則や労働条件通知書というのは、会社にとっても助け船になると考えられます。

何かトラブルが発生した場合には、就業規則や労働条件通知書が、会社のことも、まじめに働く社員のことも、問題社員から守ってくれるからです。

雇用契約書に、セクハラの禁止、会社の物品の持ち出し禁止、パソコンの個人的使用の禁止など、記載しておけば、言った言わないの世界にはなりません。

どのような場合に懲戒解雇となるのか、きちんと文書化しておけば不当解雇の指摘も避けることが可能になります。

今や懲戒については、就業規則や雇用契約書に規定しておかないと、無効とされるのが当たり前です。

世間の実態としては、労働者側から不当解雇や懲戒処分の無効を主張して会社と争ったら、半分以上は勝っていると思われます。

 

<労働時間の認定でも>

会社に労働基準監督署の監督(調査)が入った場合、雇用契約書や労働条件通知書に始業時刻・終業時刻が記載されていれば、これを基準に労働時間がチェックされます。休憩時間についても同様です。

しかしこれが無ければ、労働基準監督署は、従業員が会社に来た時点から会社を出た時点までのすべてを労働時間と認定せざるを得ません。

従業員から「忙しくて休憩は取れませんでした」という声があれば、休憩時間ゼロと認定されることもありうるのです。

 

<結論として>

会社を守るには、きちんとした雇用契約書や労働条件通知書が役に立ちます。

もし、複数の従業員に共通する内容が多いのであれば、それらをまとめて就業規則を作っておいた方が楽です。

あれもこれも労働条件通知書に記載していたら、A4判で10ページでは足りないことでしょう。しかし、そこまで充実した労働条件通知書は見たことがありません。

「本通知書に定めの無い事項については就業規則による」と書いておくのが現実的な運用となっています。

そして、従業員が9人までであれば、就業規則を作っても変更しても労働基準監督署長に届け出る義務は無いのです。

事務手続きの負担が軽いうちに、就業規則を作成し備えておくことをお勧めします。

 

2018.06.29.解決社労士

<大阪北部の地震で>

平成30(2018)618日午前8時前に、大阪府の北部で震度6弱の地震が発生しました。

「京セラドーム大阪の屋根に亀裂」「京阪電車が脱線」「シマウマが脱走」「箕面市全域で断水」などのデマが流れ、住民の不安をあおりました。

地域の住民にとっては大変な迷惑なのですが、これを取り締まるのは困難ですし、犯罪として立件するのも至難の業です。

一方、これが特定の会社の中で起こった場合には、犯人捜しは割と楽かも知れません。

会社の中で社員についての噂を流し、これが社内に広まった場合には、たとえその噂が真実であったとしても、刑法には次のように規定されていて、名誉毀損罪が成立しうるので注意したいものです。

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」〔刑法2301項〕

 

<誰も傷付かない噂>

特定の店舗や営業所に、就業規則の運用について間違った噂が流れることがあります。

これ自体、誰の名誉も傷付けることは無いのですが、会社全体で考えたときは不公平が生じますし、内容によっては労働法違反となることもあります。

社長も人事部門の社員も知らないうちに、会社の一部門で違法なことが行われていても、なかなか気づかないものです。

実際、次のような噂は立ちやすいものです。

・入社して14日目までは自由に解雇できる。

・試用期間中は社会保険に入らなくてもよい。

・予め本人の承諾があればセクハラやパワハラは問題にならない。

・仕事のやり直しによる残業は本人に責任があるので残業代は出ない。

・残業を8時間貯めると1日休める。

・本人の不注意による労災は、自己責任なので労災保険の対象外となる。

・過失で会社の物品を壊したら全額弁償しなければならない。

どれもこれも職場の責任者に都合の良い嘘ですが、真に受けると罰則が適用されうる危険な作り話です。

 

<就業規則は有効であっても>

就業規則は、社内に周知すれば有効です。この場合の周知というのは、読もうと思えば社員の誰でも読める状態にしておくことです。

しかし、社員が就業規則のルールに従って行動できるようにするためには、定期的な教育研修が必要です。特に部門長以上に対しては、会社のルールをきちんと理解させ記憶させておかなければ、いつの間にか自分に都合のよいルールを作りかねません。

店長などの部門長が、何か困り事があって人事部門に相談したところ、「これは例外に当たるので…」という説明を受けても、それが店長にとって都合のよい話であれば、すべてに類推解釈や拡張解釈して運用することもあるのです。

 

会社を守るため、就業規則を含め会社のルールについては、定期的な研修会の実施を怠りたくないものです。

 

2018.06.19.解決社労士

<一般的な説明>

就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、その事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。〔労働基準法89条〕

 

【絶対的必要記載事項】

① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項

② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 

【相対的必要記載事項】

① 退職手当に関する事項

② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

③ 食費、作業用品などの負担に関する事項

④ 安全衛生に関する事項

⑤ 職業訓練に関する事項

⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

⑦ 表彰、制裁に関する事項

⑧ その他全労働者に適用される事項

 

<絶対的必要記載事項>

重要な労働条件なので、必ず決めなければなりません。

就業規則が無い会社であっても、労働条件通知書で必ず示さなければならない事項です。

ですから、決まっていない会社では、きちんと決めたうえで記載しなければならない事項です。

 

<相対的必要記載事項>

特にルールが無ければ、無理して決める必要が無い事項です。

ただし、ルールが決まっていたならば、就業規則に記載しなければなりません。

たとえば、①の「退職手当」というのは退職金のことですが、ルールが無ければ書きようが無いので、就業規則に書かなくても良いのです。

⑦の「制裁に関する事項」というのは、懲戒処分のことですが、特にルールが無ければ就業規則に記載しなくてもかまいません。ただし、就業規則に具体的な記載が無い懲戒処分を行っても無効になります。それだけでなく、対象者から慰謝料など損害賠償を請求されるかも知れません。

 

相対的記載事項は、「記載してもしなくても良い事項」と解釈されがちですが、その意味を勘違いしないように注意しましょう。

 

2018.06.03.解決社労士

<両者の定義>

「配置転換」と「人事異動」は、法令によって明確な定義付けがされていません。

そのため、「配置転換」「人事異動」の意味については、会社ごとに解釈が分かれています。

とはいえ、会社の就業規則に「配置転換」と「人事異動」の両方の用語があり、異同について疑義が発生した場合や、これから就業規則に規定を置くにあたって一般的な意味を確認しておきたい場合には、以下を参考にしてください。

 

<配置転換>

配置転換とは、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを指します。

配置転換は大きく分けると、企業内の配置転換と企業間の配置転換の2つです。

企業内の配置転換には、昇進・昇格、職種変更、勤務地変更などがあります。営業所・店舗など複数の事業所間にまたがる配置転換を特に転勤と呼びます。

狭義の配置転換は、この企業内の配置転換のみを指します。

一方、企業間の配置転換には、子会社や関連会社への転籍、出向などがあります。

広義の配置転換には、企業内の配置転換と企業間の配置転換の両方が含まれます。

 

<人事異動>

人事異動とは、従業員が企業の命令によって、配置・地位や勤務状態などが変更されること全般を指します。

人事異動は、配置転換よりも広い概念で、配置転換のすべてを含む意味に使われることが多い用語です。

 

<就業規則の規定>

このように解釈が分かれる用語については、就業規則の中に定義規定を置いて、トラブルの発生を予防することが必要です。

 

2018.05.19.解決社労士

<モデル就業規則の改定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則は、かつて副業・兼業に消極的な態度を示していました。

ところが、「働き方改革実行計画」(平成29(2017)328日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、厚生労働省が副業・兼業の普及促進を図るようになりました。

これを受けて、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(副業・兼業)

第67条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<届出制か許可制か>

第2項は、会社への事前届出制を規定しています。

一方で、第3項が禁止・制限を規定しています。

届出さえすれば自由に副業・兼業できるとしておきながら、後から禁止・制限すると混乱を生じますから、事前許可制として、一定の条件を満たす場合にだけ許可する方が労働者にとっても会社にとっても安心でしょう。

第2項に事前許可制を定めても、第3項に禁止・制限の規定を置くことは必要です。許可の当時明らかではなかった事実や事後に発生した事実に対応するためです。

 

<労務提供上の支障がある場合(第1号)>

本業の方の労務提供に支障が生ずるため、会社が制限し、場合によっては禁止しなければならないことがあります。

たとえば、次のような場合です。

・副業・兼業の日時によって、本業の残業や休日出勤に対応できない場合

・副業・兼業の身体的・精神的負担が大き過ぎて、本業の方で生産性が低下してしまう場合

 

<企業秘密が漏洩する場合(第2号)>

本業の方で、その労働者が企業秘密を扱う立場にないのであれば、この規定は適用されることがありません。

また、単純に「企業秘密が漏洩する場合」という規定であれば、「漏洩の恐れ」を理由に副業・兼業を禁止・制限できません。

会社の業種に応じて、「企業秘密が漏洩する恐れが大きな場合」「企業秘密が漏洩する恐れがある場合」といった規定も考えられます。

 

<会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合(第3号)>

副業・兼業は、勤務時間外に行うものですから、本来的には労働者が自由に行えるものです。

一方で、たとえ完全に私的な行為であっても、会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為は、就業規則によって禁止され懲戒対象とされることについては、十分な合理性があります。

このことから、法的にあるいは倫理的に問題のある副業・兼業は、禁止・制限について合理性が認められます。

 

<競業により、企業の利益を害する場合(第4項)>

お客様を取ってしまい、会社の売り上げを減少させる場合には、明らかに当てはまるでしょう。

また、その恐れがある場合でも、第3号の「信頼関係を破壊する行為」になりえます。

ただ、多少競合する副業・兼業であっても、そこから得られたノウハウを本業に活かせるのであれば良しとする考えも成り立ちます。

 

<自社の就業規則をどうするか>

このように会社のリスクを減らそうとすると、どうしても副業・兼業を制限する方向に向かってしまうのは仕方がないことかも知れません。

そもそも、副業・兼業は本業で手一杯の労働者に強制するものではありません。厚生労働省が副業・兼業の普及促進をするというのは、本業の業務に余裕があって副業・兼業を希望する労働者を支えるものだと考えるのが合理的です。

自社の就業規則にある副業・兼業の規定を改定する場合には、社内の実態と従業員の必要や欲求を把握したうえで検討したいものです。

 

2018.05.16.解決社労士

<周知の意味>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

会社で「周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<就業規則についての義務>

労働基準法には、次のように規定されています。

 

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

つまり、従業員が10名以上の会社では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。

しかし、従業員が10名未満の会社が就業規則を作成し届け出るのは任意です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法1061項〕

従業員が10名以上の会社で、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出たとしても、周知しなければ効力が発生しません。ここは重要なポイントです。

 

<労使協定の周知義務>

よくある勘違いに、「うちには労働組合が無いので労使協定は関係ない」というのがあります。しかし、労働組合が無い会社では、「労働者の過半数を代表する者」が選出され、この過半数代表者との間で労使協定が交わされます。

労使協定というと、三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が特に有名です。〔労働基準法36条〕

この協定書を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければ、法定労働時間を超える残業は1分たりともできません。無届での残業は違法残業となってしまいます。

労働基準法には、他にも多くの労使協定が規定されています。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、必要に応じて協定を交わし、周知することが会社に義務付けられています。

 

<周知の方法>

周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。

 

<労働基準法の要旨の周知>

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、会社が作成するのですから、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。しかも、労働基準法106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」としていますから悩んでしまいます。

 

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的に1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、自社の従業員に合った上手い説明が見つからない場合には、国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

 

2018.05.06.解決社労士

<懲戒規定の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

これは、不都合な結果の発生を予見して回避する能力はあるのに、故意あるいは明らかな不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

しかし、能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

 

<懲戒規定の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

 

<懲戒規定の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

これは、罪刑法定主義の考え方です。ある行為を処罰するためには、禁止される行為の内容と処罰の内容を具体的かつ明確に規定しておかなければならないとする原則です。これは、日本国憲法31条と39条にもその趣旨が示されています。

対置される概念は罪刑専断主義です。たとえば「社長を怒らせたら懲戒処分」という考え方です。こんなことでは、社員はいつも不安です。

懲戒規定に定めの無い行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下します。

たとえば、ある社員が作業の問題点を指摘し、改善提案をしたとします。これを不快に思った会社側が、不当に懲戒処分を行ったならば、その職場での改善は進まなくなってしまいます。

やはり、懲戒規定に具体的な定めのない行為を行っても、懲戒処分の対象とされることはないのだという安心感に基づいて、伸び伸びと勤務できる環境が会社の成長を促すのです。

 

2018.05.05.解決社労士

<休職の性質>

休職とは、業務外での病気やケガなど主に労働者側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労働基準法などに規定がありません。

つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。

 

<モデル就業規則の規定>

平成302018)年1月に厚生労働省から公表された最新のモデル就業規則には、休職について次のように規定されています。

 

(休職)

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

①業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  年以内

②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間

 

第1号が「業務外の傷病による欠勤」に限定しているのは、業務による傷病、つまり労災のうちの業務災害については、解雇制限があるからです。〔労働基準法191項本文〕

休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とするのですが、業務災害については療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇が禁止されているので、これに配慮した規定となっています。

 

モデル就業規則では、「業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」は、「所定の期間休職とする」という規定になっています。

休日にスポーツをして大ケガをした場合であっても、酒に酔って階段で転んで大ケガをした場合であっても、年次有給休暇を使い果たし、一定の期間欠勤が続けば自動的に休職となります。

また、会社としては何年でも復帰を待ちたい人材というわけではなく、長く職場を離れるのなら代わりの人を採用したいという本音があったとしても、やはり自動的に休職となります。

「あなたは勤務態度が今一つなので、この規定を適用しません」ということはできないのです。

 

<会社に主導権のある規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を命ずる場合がある

このような規定にしておけば、会社は具体的な事情に応じて休職を命ずるか、休職を命じないで長期欠勤を理由とする解雇をするかの選択が可能となります。

ただ、不公平な運用をすれば、その合理性を問われて解雇が無効となる余地はあります。

さらに、復帰して欲しい人材に休職を命じたところ、本人から退職の申し出があった場合には、引きとめることができません。

この場合、有能な人材が復帰を拒否したということで、他の社員に与える悪影響もあるでしょう。

 

<合意を前提とする規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を申し出ることができる。この場合、会社が承認したときは、会社の認めた期間休職を命ずる

つまり、労働者がそのまま退職するのではなく復帰を希望する場合に、会社が認めた範囲内で休職を命ずることができます。

休職について、会社に主導権がある一方で、労使の合意の元に休職制度を利用することになり、円満な運用を可能とします。

 

<規定を置かないという選択>

就業規則に休職の規定が無い場合、あるいは、そもそも就業規則が無い場合であっても、労働者に休職を命ずることができます。

休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。

つまり、ある程度、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に休職についての規定を置くという選択も可能です。

ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならず解雇された労働者から、解雇の無効を主張される可能性はあります。

 

休職制度ひとつを取っても、就業規則というのは、会社の個性に応じたものでなければならないことが痛感されます。

 

2018.03.26.解決社労士

<無期転換の影響>

平成304月から、有期労働契約で働いている人が無期転換の申込権を使うと、会社側の意思とは無関係に無期労働契約に変更されます。〔労働契約法18条〕

無期労働契約になってからの労働条件は、就業規則や労使の話し合いで決まることになりますから、必ずしも正社員になるわけではありません。

しかし、就業規則の正社員の定義が「期間の定めなく雇用されている従業員」などとなっていれば、無期転換の申し込みをした有期契約労働者は、自動的に正社員になってしまいます。

 

<定義の重要性>

「正社員」というのは、法律用語ではありませんから法令には定義がありません。

各企業が独自の定義を定めていたり、あいまいにされていたり、定義が無かったりというのが実態です。

もし、正社員だけに賞与や退職金を支給している会社で、退職予定のパートさんから「退職金はいくらですか?今までもらえなかった賞与は、まとめてもらえますか?」という質問が出ても、「就業規則の定義により正社員とされていないあなたには支給されません」と説明できます。

しかし、「正社員」の定義がしっかりしていないため、会社が訴えられて、裁判所から過去の賞与や退職金の支給を命じられることもあります。

一人がこれに成功すれば、他の退職者からも請求されることになるでしょう。

退職金請求権の消滅時効期間は5年間ですから、5年近く前の退職者からも訴えられる可能性があります。〔労働基準法115条〕

 

<定義規定の例>

就業規則には、「正社員として採用された従業員、および、正社員以外から正社員に登用された従業員」のような表現で定めておくのが楽だと思います。

こうしておけば、今後、何らかの法改正があったとしても、それによる影響は受けないでしょう。

ただし、就業規則の規定だけだと、「正社員として採用された」かどうかの証拠が残りません。

労働条件通知書の「雇用形態」「社員区分」などの欄に「正社員」「正社員以外」「パート社員」「嘱託社員」のように明示しておくことが必要になります。

労働条件通知書は、入社時と賃金など労働条件の変更時に、従業員に交付される書類ですから、ここで「正社員であること」あるいは「正社員ではないこと」を正式に確認できます。

なお、厚生労働省のホームページでダウンロードできる労働条件通知書には、「雇用形態」「社員区分」などの欄がありませんから、Word形式でダウンロードしたものに手を加えて使用することをお勧めします。

 

就業規則が無かったり、労働条件通知書の交付を怠っていたりは、トラブルの元になります。こうしたことを一気に解消するためには、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

 

2018.02.18.解決社労士

モデル就業規則が平成30年1月31日に改定されました。

 

<モデル就業規則とは>

 

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。

就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

これを受けて、厚生労働省は就業規則のひな形を公表しています。これが「モデル就業規則」です。

各事業場は「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則の作成・届出を行うことになります。

 

就業規則は、各事業場の実情に合っていなければ、トラブルの種となってしまうことがあります。

「モデル就業規則」は、規定例だけでなく詳細な解説が施されていますので、これを手がかりにカスタマイズすることになります。

職場にカスタマイズできる専門家がいない場合には、社会保険労務士に依頼するなどして、実情に合った就業規則とする必要があります。

 

<新設規定>

 

マタニティ・ハラスメントの禁止規定(14条)

パワハラ、セクハラに続き、マタハラの禁止規定が新設されました。

政府による少子高齢化対策の継続的な推進に対応しています。

 

その他のハラスメントの禁止規定(15条)

標題は「その他あらゆるハラスメントの禁止」となっていますが、「性的指向・性自認に関する言動によるもの」を示していますので、LGBTへの対応を考えたものと思われます。

ハラスメントは、嫌がらせであり人権侵害ですから、刑法などにより処罰されたり、民法や会社法による損害賠償の対象となったりしますが、就業規則に明示して従業員に周知する必要があります。

 

副業・兼業についての規定(67条)

政府による少子高齢化対策に関連して、働き方改革の推進も行われます。

企業に対しては、副業・兼業の容認が求められていますので、これに関する規定が新設されました。

 

<変更・修正>

 

労働条件の通知(7条)の解説

採用内定に際しては、内定者に労働条件を書面で明示する必要があることの説明が追加されました。

 

人事異動(8条)の解説

育児休業や介護休業への配慮についての説明が追加されました。

 

遵守事項(11条)の一部削除

「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除されました。

企業に対しては、副業・兼業の容認が求められていますので、これに対応した変更です。

 

始業及び終業時刻の記録(17条)の解説

労働時間の「適正把握基準」が、平成29120日に「適正把握ガイドライン」に代わりましたので、これへの対応です。

従業員について、労働時間の把握が厳格化されています。

社外での勤務について、きちんと労働時間を把握していない職場は対応が迫られています。

 

労働時間及び休憩時間(19条)の解説

手待ち時間についての説明を「適正把握ガイドライン」の記載に合わせて修正しています。

 

家族手当(33条)の変更

家族手当から、配偶者手当が削除されています。

これも、政府による少子高齢化対策の継続的な推進に対応しています。

配偶者手当があると、専業主婦は働き手になりにくいので、これをなくして積極的に働きに出るよう促すわけです。

 

2018.02.07.解決社労士

<会社を守るということの意味>

従業員から労働者としての法的権利を主張されたら、会社の負担が増大するので内緒にしておきたいというブラックな意味での「会社を守る」もあります。

ブラック社員から会社が不当な要求をされたら、まじめに勤務している他の社員の迷惑にもなり、会社の存続も危ういので、ブラック社員から会社を守りたいという意味での「会社を守る」もあります。

 

<ブラックな意味での「会社を守る」>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

就業規則の由来からすると、その内容は労働条件の共通部分と職場の規律だけで十分なはずです。

しかし会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

ですから、従業員から労働者としての法的権利を主張されたくないので、作りたくない、作っても隠しておきたいという気持ちになってしまう経営者もいるのでしょう。

 

実際には、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になります。

もし、就業規則が見当たらないのであれば、個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に有利な方が有効になります。

さらに、経営者が法令に違反して労働条件を文書で通知していないような場合には、個別の労働契約の内容も不明確ですから、法令通りの運用であると認定されます。

 

結局、経営者が就業規則を隠して「会社を守る」ことができるのは、労働関係法令の内容を知らない労働者に対してだけということになります。

しかし、その労働者もネットなどの情報で自分の権利を知るようになります。

こうなると、ブラック経営者は「会社を守る」ことができなくなります。

 

<ブラック社員から「会社を守る」>

まじめに働く社員のためにも、経営者はブラック社員から会社を守らなければなりません。

就業規則に次のような規定を入れることによって、ある程度ブラック社員の攻撃を阻止することができます。

・ブラック社員を採用しない規定

・ブラック社員の内定を取り消せる規定

・ブラック社員を解雇できる規定

・ブラック社員の休職がトラブルにならない規定

・ブラック社員の無断欠勤を許さない規定

・ブラック社員からの不当な残業代請求を許さない規定

・ブラック社員のルール違反を許さない規定

・ブラック社員から会社が責任を追及されない規定

こうした規定は、現状の就業規則や社内ルールとの整合性を保ちつつ考える必要があります。

また、規定だけでなく運用も適正に行う必要があります。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

 

2017.12.27.解決社労士

<違法な就業規則の実在>

労働基準法などで保障された労働者の権利についての規定が無かったり、法令の基準を下回る内容の就業規則が作成されることは、少なくとも社会保険労務士に依頼したのならありえないでしょう。

しかし、就業規則を作成した時には適法だったものの、法改正が繰り返されて違法だらけの就業規則になってしまうということはあります。

この場合、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になりますから、就業規則が法律に違反していたり、個別の労働契約よりも労働者に不利であったりすれば、その規定は無視されます。

結局、形式的にブラックな就業規則というのは、実害をもたらさないということになりそうです。

 

<形式と実質>

上で言う「就業規則」「労働契約」「法令」というのは、文書化されたものをイメージしています。

こうした意味での「就業規則」は各条文が文字で表わされ、ファイルの形になっています。

文書化されているからこそ、社内に周知することも、労働基準監督署長に届出ることも、改定手続きを行うことも可能なわけです。

これは形式的な「就業規則」の話です。

 

形式的な「就業規則」とは別に、その運用実態が問題となります。

「就業規則」の運用実態こそが、実質的な「就業規則」です。

「就業規則」が絵に描いた餅になっていて、つまり「単なる建前」として扱われていて、実際にはブラックな運用がされているということがあります。

これがブラック就業規則の問題です。

 

<就業規則の軽視>

就業規則が作成されたとき、あるいは変更されたとき、それを全従業員が見られるようにしておいたのに、誰も関心を示さず読まれないということがあります。

社会保険労務士に就業規則の作成・変更を委託したのなら、併せて説明会の開催も任せればこうした事態は生じないのですが、通常は別料金なので省略されることもあります。

やがて就業規則に規定されていることについても、法令違反の勝手な解釈が生まれ慣行となり、ブラック就業規則と化すことがあるのです。

 

<ブラック就業規則の実例>

ブラック就業規則、つまり違法な運用の例には次のようなものがあります。

・セクハラは相手が嫌がっていなければ問題にならない。

・パワハラは指導や業務上の指示に伴うものはある程度許される。

・正社員は年次有給休暇を取得できない。特に役職者は無理。

・アルバイトには労災保険が適用されない。

・大ケガでなければ労災保険の適用外。

・本人に過失があれば労災保険は適用されない。

・仕事のやり直しや自己啓発のための残業は無給となる。

・試用期間中は健康保険や厚生年金に加入しない。

・おかしな辞め方をした従業員には最後の給与を支払わない。

 

<就業規則の適法性>

政府が少子高齢化対策の継続的な推進に力を入れていますから、人を巡る法改正は盛んです。これに対応できていない就業規則は多いことでしょう。

しかし、これは形式的な「就業規則」の話です。

社会保険労務士に就業規則の適法性チェックを依頼する場合には、ブラック就業規則になっていないか運用実態を含めた労働条件審査として依頼することをお勧めします。

 

2017.12.18.解決社労士

<知られざる就業規則>

「就業規則の内容を従業員に知られてしまうと権利を主張される」というような理由で、就業規則のファイルを見つからない所に保管している会社もあります。

しかし、就業規則を周知しないのは労働基準法違反ですし、周知しない就業規則というのは、たとえ所轄の労働基準監督署長への届出をしてあっても効力が無いのです。

そのため、会社から従業員に対して就業規則上の義務を果たすように求めることができませんし、不都合な行為に対してペナルティーを科すこともできないのです。

それでいて、就業規則が無くても、労働者に保障された法的な権利は、従業員から主張されたら会社は拒否できません。

 

<わかってもらえない就業規則>

就業規則というのは、なかなか従業員に見てもらえないものですし、条文の意味を説明しないと理解してもらえないことがあるものです。

かつて、自分の勤務先でふざけた写真を撮ったアルバイトがSNSに投稿した結果、閉店に追い込まれるような事件が相次ぎました。

たとえ、「会社の信用を傷付けた時」という規定が就業規則にあったとしても、アルバイトはその規定の存在を知らないかもしれませんし、知っていても自分の行為がその規定に当てはまるという理解が無かったのでしょうか。

入社と退職が盛んな時代ですし、法改正に合わせた就業規則の改定も頻繁でしょうから、少なくとも年に1回は就業規則の勉強会を繰り返す必要があるでしょう。

 

<ポンコツな就業規則>

政府が少子高齢化対策の継続的な推進に力を入れていますから、人を巡る法改正は盛んです。これに対応できていない就業規則は多いことでしょう。

こうした流れとは別に、制服を廃止して長年経った今でも「勤務中は制服着用」という規定があったり、全館禁煙なのに「喫煙は定められた場所で」という規定が残っていたりします。

これでは、会社が本気でルールの整備をしていないことが明確ですから、従業員も就業規則を守る気持ちも薄れてしまいます。

 

<ありえない就業規則>

「セクハラを行ったら懲戒解雇」というありえない規定を見ることがあります。

それでいて、社内にセクハラの定義を定めるルールが無かったり、どのような言動がセクハラに当たるのかについて教育・研修が無かったりします。

セクハラにも程度の差があり、程度の軽いセクハラ行為で一律に懲戒解雇というのは、たとえ就業規則に規定があったとしても無効になります。

「唇、ツヤツヤだね」と言っただけでクビになりうる就業規則というのは恐ろしいです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

3年以上改定していない就業規則があれば、社労士のチェックが必要でしょう。

とりあえず必要な改定と届出をして、社内研修を行えば当面は安心です。

その後のことは、社労士と相談して決めれば良いことです。

 

2017.12.17.解決社労士

<懲戒処分の有効要件>

解雇まではいかなくても、懲戒処分が有効とされるには、多くの条件を満たす必要があります。

条件を1つでも欠けば無効となり、会社としては対象者から慰謝料その他の損害賠償を請求される可能性があるわけです。

法律上の制限として次の規定があります。

 

「使用者が労働者を懲戒できる場合に、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」〔労働契約法15条〕

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

 

<使用者が労働者を懲戒できる場合>

労働契約法15条には、「使用者が労働者を懲戒できる場合に」とサラッと書いてありますが、この一言には就業規則や労働条件通知書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあるという意味が込められています。

ですから、そもそも就業規則や労働条件通知書などに懲戒処分の具体的な取り決めが無ければ、懲戒処分そのものができないことになります。

 

たとえば、厚生労働省のモデル就業規則には、懲戒処分について次のような規定があります。

 

(懲戒の事由)

第62条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

①正当な理由なく無断欠勤が   日以上に及ぶとき。

②正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

③過失により会社に損害を与えたとき。

④素行不良で社内の秩序及び風紀を乱したとき。

⑤性的な言動により、他の労働者に不快な思いをさせ、又は職場の環境を悪くしたとき。

⑥性的な関心を示し、又は性的な行為をしかけることにより、他の労働者の業務に支障を与えたとき。

⑦第11条、第13条、第14条に違反したとき。

⑧その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき。

 

従業員が大人ばかりでしたら、このまま自社の就業規則に使えそうです。

しかし、高校生のアルバイトがいるような職場では、もう少しわかりやすく、中学を卒業したばかりの人にも理解できる表現にするか、定期的に就業規則の学習会を開かないと無理がありそうです。

 

実際に懲戒規定の具体性が争われるのは、「前各号に準ずる不都合な行為があったとき」のような抽象的な表現です。

就業規則は会社が作るものですから、会社が就業規則を根拠として懲戒処分を行い、対象者がその有効性を争ったら、会社側が「前各号に準ずる不都合な行為があった」ことなどを証明しなければなりません。

 

<懲戒処分が無効とされないための規定>

従業員によって行われた不都合な行為が、就業規則の懲戒規定に当てはまるかどうかについて争いが生じたのでは、処分を行うのが難しくなってしまいます。

これを防ぐには、「正当な理由なく」「しばしば」「素行不良」など解釈が分かれそうな表現を具体化する必要があります。

また、「前各号に準ずる不都合な行為があったとき」とはどのような行為なのか、具体的に列挙する必要もあるでしょう。

実際にやってみると、懲戒規定の条文が100を超えてしまいます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

適正な懲戒処分を行うためには、就業規則の内容を自社に合ったものにしておくこと、必要な教育研修を繰り返し行うことなど事前の準備が不可欠です。

また、実際に事件が発生してしまった場合には、適法要件を満たしつつスピーディーに動く必要があります。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.12.10.解決社労士

<就業規則に規定があれば>

就業規則や人事考課規程の中に、考課期間の途中で人事異動があった場合の規定があれば、それに従い人事考課を行うことになります。

しかし、厚生労働省のモデル就業規則にも、そのような細かい規定はありません。

実際にも、人事異動を想定した規定を持たない会社は多いようです。

 

<考課期間による按分方式>

たとえば、冬の賞与支給額を決定するための考課期間が4月から9月までだったとします。

ある社員が、課長Aの部署から課長Bの部署に6月1日付で異動したならば、課長Aと課長Bの両方が人事考課をして、課長Aの評価の3分の1と課長Bの評価の3分の2を合計するという方法がとれます。

このやり方のメリットは、それぞれの課長が自由に評価できるという点にあります。

ただし、評価が数値化されていないと単純に計算できないので、この方法を使うのは困難です。

 

<協議による評価方式>

上の例で、課長Aと課長Bとで協議しながら評価を決めるという方式も考えられます。

このやり方のメリットは、評価が数値化されない場合や、少しずつ業務を移管していって実質的な異動日を特定できない場合でも問題ないという点にあります。

しかし、課長Aと課長Bとの人間関係や力関係から、どちらか一方だけの意見が強く反映される危険もありますし、そもそも仲が悪くて協議しないという場合まで考えられます。

 

やはり、あらゆることについて、人事異動を想定した明確な規定を備えておくべきです。

また、少子高齢化対策によって、労働関連法令全体に急速な法改正が広がっていますから、会社がこれに応じて就業規則を改定していくのが大変になっています。

この機会に、必要な就業規則の補充と変更をまとめて行ってはいかがでしょうか。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご用命ください。

2017.12.02.解決社労士

<モデル就業規則>

就業規則の作成・変更の参考とするため、就業規則の規定例や解説をまとめた「モデル就業規則」が厚生労働省ホームページに掲載されています。

あくまでも規定例ですから、実際の就業規則は、それぞれの職場の実情に合わせて調製します。

現在の最新版は平成28330日版ですから、これよりも古い「モデル就業規則」を参考に作成・変更した就業規則は、最近の法改正に対応できていないかも知れません。

 

<現在の副業・兼業に関する規定>

現在の「モデル就業規則」には、次のような規定があります。

 

(遵守事項)

第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。

⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。

 

(懲戒の事由)

第62条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

⑦ 第11条、第13条、第14条に違反したとき。

 

つまり、会社の許可を得ないで副業・兼業を行った場合には、始末書をとったり、減給処分や出勤停止処分を行ったりするという内容です。

 

<少子高齢化対策>

政府は少子高齢化対策を急速に進めています。

 

このままだと日本の人口は、2060年には8,674万人、2110年には4,286万人に減少すると試算されています。しかも、高齢者の比率が極端に高いのです。

国の借金が解消するためには人口が増えなければならないのに、このように減少していったのでは、日本が経済的に破たんして外国に身売りしなければならないという議論もあるほどです。

 

そこで、若者の所得と私生活の時間を増やし、結婚・出産・子育てに向かえるようにするためにも、働き方を柔軟にすることが推進されています。

そして、働き方を柔軟にするためには、企業が積極的に副業・兼業を認めるべきだとされるようになっています。

 

<副業・兼業に関する規定の改定案>

今年度中に厚生労働省から公表される予定の新しい「モデル就業規則」案では、副業・兼業の規定が次のように改められています。

 

(副業・兼業)

第65条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務が第11条第1号から第5号に該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

 

(遵守事項)

第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。

① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。

② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を行わないこと。

③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。

④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。

⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。

 

つまり勤務時間外なら、他の会社で働くことも会社の許可なく行えるということです。ただし、事前の届出を求めることはできます。

「許可」ならば会社がノーと言えば許されないわけですが、「届出」ならば会社はノーと言えません。

そして、会社に実害を与えるような行為が見られたときは、それを禁止・制限できるという規定になっています。

 

<盛んな法改正と対応>

少子高齢化対策や働き方改革などにより法改正が盛んになっていますから、各企業は就業規則の改定や運用の変更が求められます。

今までに例が無いほど急速で大量の変更です。

しかし、これを怠っていると、いつの間にかブラック企業扱いされるようになるかも知れません。

来年は無期転換ルールや派遣労働者の期間制限への対応が必要ですし、それ以降も、時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金、中小企業に対する月間60時間超の時間外割増賃金(5割以上)の適用猶予廃止、年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制の見直し、企画業務型裁量労働制の適用拡大、高度プロフェッショナル制度、産業医・産業保健機能の強化、勤務間インターバル制度、治療と職業の両立など多くの法改正が予定されています。

これに対応することは、社内のメンバーだけでは困難でしょう。

専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2017.11.29.解決社労士

<政策への対応の実態>

経済産業省が、平成29年「企業の賃上げ動向等に関するフォローアップ調査」の集計結果を取りまとめ、同年10月23日に公表しました。

 

これによると、同一労働同一賃金ガイドライン(案)について、この調査以前から「内容を含め知っていた」企業は42.0%にとどまっています。

懸念材料として多かったのは「人件費の負担増」や「就業規則・賃金規定等の見直し」です。

 

長時間労働の新たな上限規制については、この調査以前から「内容を含め知っていた」企業は47.1%にとどまっています。

「この調査によって内容を知った」という企業も含め、「新たな上限にかかる長時間労働なし」と「対応できる見込み」としたのは83.0%でした。

また、対応が困難な企業の理由としては、「人員不足」が最も多い回答でした。これによると、就業規則を「策定している」と回答した中小企業の割合は82.1%でした。

 

<就業規則の作成・変更についての相談先>

就業規則の策定体制について、社内に担当部署を置いている割合は47.0%、外部への相談体制がある企業の割合は66.7%となっています。

そして、就業規則の策定・見直しについて、想定または検討している社外の相談先の上位5位は次の通りです。

 

第1位 社会保険労務士事務所(57.6%)

第2位 公認会計士・税理士事務所(34.7%)

第3位 労働局・労働基準監督署(18.6%)

第4位 弁護士事務所(15.3%)

第5位 商工会・商工会議所(9.3%)

 

やはり、トップは社会保険労務士事務所です。

第4位の弁護士事務所も、数は少ないですが労働関係に強い弁護士の先生がいらっしゃる事務所であれば心強いといえます。

気になるのは、第2位の公認会計士・税理士事務所です。公認会計士や税理士の先生は労働関係法令の専門家ではありませんし、労働トラブルの防止についてノウハウがあるわけではないのです。顧問先から頼まれて断り切れないという実態が垣間見られます。

 

社会保険労務士事務所は、労働トラブルの予防、あるいは会社が責任を問われないようにするという消極的な考え方ではなく、会社と従業員が共に成長しWIN-WINの関係に立てるようにすることを第一に考えています。

就業規則について専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談くださることをお勧めします。

 

2017.11.03.解決社労士

<就業規則の軽視>

就業規則が作成されたとき、あるいは変更されたとき、それを全従業員が見られるようにしておいたのに、誰も関心を示さず読まれないということがあります。

社労士(社会保険労務士)に就業規則の作成・変更を委託したのなら、併せて説明会の開催も任せればこうした事態は生じないのですが、通常は別料金なので省略されることもあります。

 

<食い違い判明時の対応>

就業規則ができた時点で、従業員から社内の実態と違う部分があることを指摘されることもあります。この場合には、会社は従業員の意見を参考にしつつ、変更を検討すべきでしょう。

就業規則を実態に合わせて改定するか、実態を改めて就業規則に合わせるか、あるいは別のやり方を決めて就業規則に反映させるかということになります。

 

<食い違いが継続した場合>

たとえば、所定労働時間が8時間であるものとして、全従業員がそのように勤務していたとします。この場合には、8時間労働が社内の共通認識であり慣行となっています。

雇い入れ通知書にも、所定労働時間は8時間と記載されているでしょうし、給与計算でも8時間労働が前提となっています。

ところが、退職予定者がふと就業規則を見たところ、所定労働時間は7時間と規定されていたらどうでしょう。

 

<就業規則の効力>

就業規則で定める基準に達しない労働条件は無効となり、就業規則で定める基準が適用されるという規定があります。〔労働契約法12条〕

労働条件のうち所定労働時間は、短い方が労働者に有利ですから、雇い入れ通知書や労働契約書に8時間労働と書かれていても、就業規則の7時間労働の方が有効になります。

これは、8時間労働が長年の慣行となり、全従業員の共通認識となっていたとしても結論は変わりません。

 

<誤りが明らかな場合>

よくよく調べてみたら、就業規則が最初から間違っていた、あるいは昔変更したときに誤って7時間労働にしてしまっていたことが判明したとします。

この場合、月給制であれば1日あたり1時間分の賃金の支払い漏れがあったことになり、従業員から会社に対して未払い賃金の請求をすることができます。

会社は誤った就業規則を周知し、従業員はその就業規則をきちんと読んで誤りを指摘しなかったのですから、責任は半々のような気もしますが、裁判などでは会社が全責任を負うと判断されています。〔「甲商事事件」東京地裁平成27年2月18日判決〕

就業規則を作成・変更する会社側に責任があると認定されるわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則の規定と実態との食い違いを放置しておくことは、それが法令違反ではなくても、会社に大きな損害をもたらす原因となりえます。

就業規則のことは、信頼できる国家資格の社労士にご相談ください。

 

2017.09.14.解決社労士

<就業規則を作るきっかけ>

会社を設立し、いつか従業員を雇い入れる予定があるのなら、すぐに就業規則を作るようお勧めします。一人でも適用対象者がいるのであれば、不利益変更という厄介な問題が出てきますが、誰も適用対象者がいないのであれば変更は自由です。思い立った時に変更をかけていけば、会社にぴったりの就業規則が完成してから従業員を雇い入れるという理想的な形になります。

 

<ありがちな先送り>

労働基準法には、次の規定があります。

 

(作成及び届出の義務)

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

一  始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二  賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三  退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

四  臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五  労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六  安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七  職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

一目見て就業規則作りをあきらめたくなるような規定です。しかも、最初の方に「十人以上の労働者を使用する使用者」と書いてありますから、「まだいいや」と先送りしてしまうのが人情です。

 

<現実的な就業規則の作成時期>

私は、なるべく早く就業規則作りに取りかかることを強くお勧めしています。

ところが実際には、「そろそろ従業員の人数が二ケタになりそう」「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というタイミングで、就業規則の作成を依頼してくるお客様が多いのです。

こうした場合でも、形ばかりの就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出るのは、「百害あって一利なし」と言えます。

・従業員が就業規則を守らない。そもそも理解していない。

・経営理念や経営方針が従業員に伝わらない。そもそも就業規則に無い。

・従業員から就業規則について質問されると経営者はお手上げ。

・退職者が就業規則に基づき会社に対して多額の金銭を要求してくる。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社労士は、就業規則のプロフェッショナルですから、会社の実情に合った、経営者の思いを反映した就業規則を作成します。紛争の火種になるような規定は置きません。

「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というのであれば、自ら所轄の労働基準監督署に足を運び、作成や届出の計画を説明してきます。

従業員に対する説明会も実施しますし、運用のフォローもします。法改正などにより、就業規則改定の必要が発生すれば、その都度ご案内いたします。

就業規則の作成や変更については、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.06.解決社労士

<違法な就業規則の実在>

就業規則を作成した時には適法だったものの、法改正が繰り返されて違法だらけの就業規則になってしまうということはあります。

国際情勢、国内情勢、市場動向は変化していますし、政府が継続的に強化している少子高齢化対策に沿った法改正は、驚くほど頻繁に、そして大幅に進んでいますから、1年間放置した就業規則が適法性を保っていたら、運が良いと感じてしまいます。

 

<違法な就業規則の届出>

うっかり法令違反の就業規則を労働基準監督署長に届け出たとします。

何も指摘されないこともありますし、たまたま法令違反が見つかって指摘を受けることもあります。

違法な規定を含む就業規則であって、それが発見されたとしても「次回は直しておいてくださいね」ということで、そのまま受け付けてもらえるのが通常です。

このとき、きちんと控えを持って行けば、就業規則を届け出たことの証として、「受付」の印を押してもらえます。あくまでも「受付」であって、「受理」や「承認」ではないのです。提出したので受け付けましたというだけのことです。

 

<違法な規定の効力>

労働契約も契約の一種です。契約は、当事者が話し合って自由に内容を決めることができるという原則があります。契約自由の原則と言います。

ところが、労働契約の場合には、使用者の立場が強く労働者は弱者であるというふうに考えられています。実のところはケースバイケースですが、それでも労働関係法令は労働者が弱いという前提に立って法体系ができています。

このことから、本来は自由であるはずの労働契約に法律が介入し、労働者を保護するという役割を担っています。

就業規則は、その会社の労働者に共通な労働条件を定めています。就業規則には、いろいろ定められているのですが、労働者に共通な労働条件の規定は、必ず含まれているといえます。

そして、就業規則と個別の労働契約とを比べた場合に、違う部分があれば、労働者に有利な方が有効とされます。

さらに、その部分が法律より不利ならば、法律の規定が優先されます。

結局、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になるのです。

 

<違法な規定は効力が無い>

このように、就業規則が法律に違反していたり、個別の労働契約よりも労働者に不利であったりすれば、その規定は無視されるわけです。

このことが判っているので、労働基準監督署では就業規則の届出を受け付ける時に、法律違反が無いかじっくりとチェックしなくても問題無いことになります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

このような事情から、「労働基準監督署に受け付けてもらったから安心」とはいえません。

知らないうちに、違法な就業規則を運用し適用しているというリスクがあるのです。

このようなリスクを回避するには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.09.01.解決社労士

<創業直後の会社>

できたばかりの会社では、創業者だけ、あるいは創業者の他は家族だけということもあります。

この場合は、労働条件通知書も就業規則も作られないことが多いでしょう。

すべてはお互いの信頼関係に基づいた口約束で足ります。

創業者に対する尊敬や恩義の気持ちから、大きな問題は発生しないものです。

 

<事業の拡大>

やがて知り合いを採用し、近隣の人たちをパートやアルバイトとして採用します。

法律上は、労災保険や雇用保険の手続きだけでなく、労働条件通知書などの作成交付も必要です。

ところが、家族による事業の運営の延長線上で、これらの手続きが行われないことがあります。もちろん違法です。

違法だとわかっていて手続きをしないよりは、よくわからないから放置することの方が多いようです。

また、労働保険や労務管理の専門家は社会保険労務士なのに、何でもかんでも税理士の先生に確認して済ませていると、違法な状態が解消されません。

 

<創業者の離脱>

事業がこれからという時に、創業者が病に倒れ、配偶者やお子さんたちが後を継ぐという事態は、常に想定しておかなければなりません。

相手のあることであれば、分からないことは相手に聞けば良いのですが、それですべてが分かるわけではありません。

特に、従業員の給料のこと、とりわけ残業代については、労働条件通知書や就業規則、そしてきちんとした給与明細書が無ければ、分からずじまいになってしまうことも多いのです。

創業者に対する尊敬や恩義の気持ちから長く働いていた従業員も、会社から心が離れ、何年分もの残業代を請求してくるかもしれません。また、退職金を要求するかもしれません。

こうした法的紛争になったときに頼れるのは、人ではなくて、書類を中心とする物的証拠なのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働関係法令を知らずに他人を雇うリスクは大きなものです。会社が大きくなったら、事業が軌道に乗ったらではなくて、創業の時から信頼できる社労士にご相談ください。

従業員がいないうちに、労働条件や会社のルールを決めておいた方が楽なのは明らかなのですから。

 

2017.08.22.解決社労士

<具体的なトラブル>

円満退社のパート社員が、退職にあたって会社に退職金の支払いを請求する、あるいは、退職後に請求するということがあります。

もちろん、パート社員にも退職金を支払うルールなら問題ないですが、会社としては支払わないつもりだったならトラブルになります。

 

<就業規則が1種類しかない場合>

社員が10人以上になったとき、会社の就業規則が作成され、そのときは正社員しかいなかったのに、やがてパート社員も働くようになっていたとします。

この場合には、将来パート社員も入社してくることを想定して、就業規則が作成されているとは限りません。つまり、正社員用の就業規則しかない状態になりうるのです。

あるいは、就業規則のひな形をそのまま引用して「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する」という規定を置きながら、別に定める規則を作っていなければ、パート社員にも正社員用の就業規則が適用されます。

こうして法的には、パート社員にも正社員と共通の唯一の就業規則が適用され、会社に退職金の支払い義務が発生するのです。

 

<定義がない場合>

就業規則に「正社員に退職金を支給する。パート社員には退職金を支給しない」という明確な規定があったとします。

それでも退職するパート社員から「私は残業もしたし、休日出勤もしました。この会社は賞与が出ないけど、誰ももらっていないから我慢しました。でも、退職金が出ないなんておかしいです。私は正社員として働いてきました」と主張されたら、会社は就業規則に示された正社員の定義とパート社員の定義を説明して切り抜けなければなりません。

しかし、就業規則に「正社員とは…」「パート社員とは…」という定義が定められていなければ、説明のしようがありません。「何となくわかるでしょ」というレベルなら、労働者に有利な解釈がとられるのが労働法の世界です。

結局、会社は退職金の請求を拒むことは困難です。

 

<労働条件通知書には「退職金なし」と書かれている場合>

労働条件通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で、個人ごとに労働条件が通知されています。ここに「退職金なし」と書かれている場合でも、労働契約法に次の規定があります。

 

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

つまり、就業規則には「退職金あり」と書いてあって、労働条件通知書などに「退職金なし」と書かれていたら、労働者に有利な「退職金あり」が有効になるということです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

退職金一つをとっても、法的に争われたら会社が負けてしまうことがあります。

就業規則にトラブルの火種を残さないよう、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.14.解決社労士

<就業規則の有効性>

裁判所の判断によると、就業規則はその変更を含め、周知されていないと効力がありません。これは、労働基準監督署長に届出をしていても同じです。

このことから明らかなように、届出は法令により義務づけられているものの、届出で有効になるわけではなく、周知することによって有効になるのです。

 

<周知の意味>

「周知」という言葉は、本来、周(あまね)く=広く知らせるという意味です。しかし、就業規則について求められる周知は、内容について一人ひとりの従業員に知らせることではありません。就業規則ができたこと、変更されたことだけ伝えておいて、あとは見ようと思えば見られる状態にしておけば良いのです。

たとえば、就業規則のファイルを休憩室やロッカー室に置いておくとか、パソコンやスマートフォンで見られるようにしておくのです。ただし、アルバイトやパート社員などを含め、すべての従業員に見られるようにしておく必要があります。

 

<事業の拠点が複数ある場合>

営業所や店舗など、会社の事業の拠点が複数ある場合には、すべての職場で就業規則を周知する必要があります。周知されていない職場の従業員に対しては効力がありません。そうした職場では、たとえば懲戒処分ができないことになります。

印刷した就業規則をファイルの形で置いておく形なら、本社だけでなくすべての営業所や店舗などに置く必要があります。そして、アルバイトでも気軽に見られるよう、休憩室などに置くのが普通です。店長や所長の机の引き出しに入っていたのでは周知になりません。

就業規則をパソコンで見る形になっている場合には、やはりアルバイトでも気軽に見られる状態にしておく必要があります。正社員はパソコンを使えるけれども、アルバイトは触れないというのでは、アルバイトに対して周知になりません。

 

<会社目線の素人判断では>

「就業規則の変更は社員に知らせなくても労働基準監督署長に届け出れば有効」「まず届出をしてから社員に知らせるのが正しい」という誤解は生じやすいものです。

就業規則に限らず、「うちは昔からこれでやっている」ということで、毎回、間違いを繰り返していたり、法改正を知らずに違法な状態から抜け出せずにいたりということもあります。

柳田事務所では、社内に労働法違反の点が無いか、もし労働基準監督署の監督(調査)が入ったらどの部分の違法を指摘されるか、あるいはどのような改善を求められるかというチェック(労働条件審査)も行っております。

いずれにせよ、いつも行っていることが本当に正しいのか、少しでも不安に感じることがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.08.05.解決社労士

平成29101日に改正育児・介護休業法が施行されるのに先立ち、厚生労働省から「育児・介護休業等に関する規則の規定例〔簡易版〕」が公開されました。

利用にあたっては、現在の就業規則との整合性や職場の具体的な事情に応じたカスタマイズが不可欠です。

詳しくは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]

 

第1条(育児休業)

1 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、申出により、育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、次のいずれにも該当する者に限り、育児休業をすることができる。

 一 入社1年以上であること

 二 子が1歳6か月(本条第4項の申出にあっては2歳)になるまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

2 配偶者が従業員と同じ日から又は従業員より先に育児休業をしている場合、従業員は、子が1歳2か月に達するまでの間で、出生日以後の産前・産後休業期間と育児休業期間との合計が1年を限度として、育児休業をすることができる。

3 次のいずれにも該当する従業員は、子が1歳6か月に達するまでの間で必要な日数について育児休業をすることができる。なお、育児休業を開始しようとする日は、原則として子の1歳の誕生日に限るものとする。

(1)従業員又は配偶者が原則として子の1歳の誕生日の前日に育児休業をしていること

(2)次のいずれかの事情があること

 (ア)保育所等に入所を希望しているが、入所できない場合

 (イ)従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳以降育児に当たる予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合

4 次のいずれにも該当する従業員は、子が2歳に達するまでの間で必要な日数について、育児休業をすることができる。なお、育児休業を開始しようとする日は、子の1歳6か月誕生日応当日とする。

(1)従業員又は配偶者が子の1歳6か月の誕生日応当日の前日に育児休業をしていること

(2)次のいずれかの事情があること

 (ア)保育所等に入所を希望しているが、入所できない場合

 (イ)従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり、1歳6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合

5 育児休業をすることを希望する従業員は、原則として、育児休業を開始しようとする日の1か月前(3及び4に基づく1歳を超える休業の場合は、2週間前)までに、育児休業申出書を人事担当者に提出することにより申し出るものとする。

6 申出は、次のいずれかに該当する場合を除き、一子につき1回限りとする。ただし、産後休業をしていない従業員が、子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内にした最初の育児休業については、1回の申出にカウントしない。

(1)第1項に基づく休業をした者が第3項又は第4項に基づく休業の申出をしようとする場合又は第3項に基づく休業をした者が第4項に基づく休業の申出をしようとする場合

(2)配偶者の死亡等特別の事情がある場合

7 育児休業申出書が提出されたときは、会社は速やかに当該育児休業申出書を提出した者に対し、育児休業取扱通知書を交付する。

 

  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

  2 1にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒

むことができる。

   一 入社1年未満の従業員

   二 申出の日から1年以内(3及び4の申出をする場合は、6か月以内)に雇用

関係が終了することが明らかな従業員

   三 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

  ※以下、1項ずつ繰り下げ

 

第2条(介護休業)

1 要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)は、申出により、介護を必要とする家族1人につき、通算93日までの範囲内で3回を上限として介護休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、次のいずれにも該当する者に限り、介護休業をすることができる。

 一 入社1年以上であること

 二 介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

2 要介護状態にある家族とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある次の者をいう。

   配偶者/父母/子/配偶者の父母/祖父母/兄弟姉妹/孫

3 介護休業をすることを希望する従業員は、原則として、介護休業を開始しようとする日の2週間前までに、介護休業申出書を人事担当者に提出することにより申し出るものとする。

4 介護休業申出書が提出されたときは、会社は速やかに当該介護休業申出書を提出した者に対し、介護休業取扱通知書を交付する。

 

  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

  2 1にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒む

    ことができる。

   一 入社1年未満の従業員

   二 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員

   三 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

  ※以下、1項ずつ繰り下げ

 

第3条(子の看護休暇)

1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。

2 子の看護休暇は、半日単位で取得することができる。

 


  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

   1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除

く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当

該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第○条に規定す

る年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人

以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得する

ことができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日まで

の期間とする。

 ただし、労使協定により除外された次の従業員からの申出は拒むことが

できる。

一 入社6か月未満の従業員

二 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 

第4条(介護休暇)

1 要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、当該家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。

2 介護休暇は、半日単位で取得することができる。

 


  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

   1 要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)

は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合

は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介

護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3

月31日までの期間とする。

     ただし、労使協定により除外された次の従業員からの申出は拒むことが

できる。

一 入社6か月未満の従業員

二 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 

第5条(育児・介護のための所定外労働の制限)

1 3歳に満たない子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。

2 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、制限を開始しようとする日及び制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、制限開始予定日の1か月前までに育児・介護のための所定外労働制限申出書を人事担当者に提出するものとする。

 

  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

  2 1にかかわらず、労使協定によって除外された次の従業員からの所定外労働の

制限の申出は拒むことができる。

   一 入社1年未満の従業員

   二 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

  ※以下、2項を3項に繰り下げ

 

第6条(育児・介護のための時間外労働の制限)

1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する従業員が当該家族を介護するために申し出た場合には、就業規則第○条の規定及び時間外労働に関する協定にかかわらず、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、1か月について24時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせることはない。

2 1にかかわらず、次の一から三のいずれかに該当する従業員は育児のための時間外労働の制限及び介護のための時間外労働の制限を申し出ることができない。

 一 日雇従業員

 二 入社1年未満の従業員

 三 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

3 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、制限を開始しようとする日及び制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、制限を開始しようとする日の1か月前までに、育児・介護のための時間外労働制限申出書を人事担当者に提出するものとする。

 

第7条(育児・介護のための深夜業の制限)

1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員が当該子を養育するため又は要介護状態にある家族を介護する従業員が当該家族を介護するために申し出た場合には、就業規則第○条の規定にかかわらず、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、午後10時から午前5時までの間に労働させることはない。

2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員は深夜業の制限を申し出ることができない。

 一 日雇従業員

 二 入社1年未満の従業員

 三 申出に係る家族の16歳以上の同居の家族が次のいずれにも該当する従業員

  イ 深夜において就業していない者(1か月について深夜における就業が3日以下の者を含む。)であること

  ロ 心身の状況が申出に係る子の保育又は家族の介護をすることができる者であること

  ハ 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産予定でなく、かつ産後8週間以内でない者であること

 四 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 五 所定労働時間の全部が深夜にある従業員

3 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上6か月以内の期間について、制限を開始しようとする日及び制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、制限を開始しようとする日の1か月前までに、育児・介護のための深夜業制限申出書を人事担当者に提出するものとする。

 

第8条(育児短時間勤務)

1 3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。

  所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる。)。

2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。

 一 日雇従業員

 二 1日の所定労働時間が6時間以下である従業員

3 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮を開始しようとする日の1か月前までに、短時間勤務申出書により人事担当者に申し出なければならない。

 

  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

  2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの育児短時間勤務の申出は

   拒むことができる。

   一 日雇従業員

   二 1日の所定労働時間が6時間以下の従業員

   三 労使協定によって除外された次の従業員

   (ア)入社1年未満の従業員

   (イ)1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 

第9条(介護短時間勤務)

1 要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)は、申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。

  所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とする。

2 1にかかわらず、日雇従業員からの介護短時間勤務の申出は拒むことができる。

3 介護のための短時間勤務をしようとする者は、利用開始の日から3年の間で2回までの範囲内で、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮を開始しようとする日の2週間前までに、短時間勤務申出書により人事担当者に申し出なければならない。

 

  《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》

  2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの介護短時間勤務の申出は

   拒むことができる。

   一 日雇従業員

   二 労使協定によって除外された次の従業員

   (ア)入社1年未満の従業員

   (イ)1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 

第10条(給与等の取扱い)

1 基本給その他の月ごとに支払われる給与の取扱いは次のとおり。

 一 育児・介護休業をした期間については、支給しない

 二 第3条及び第4条の制度の適用を受けた日又は時間については、無給とする

 三 第7条、第8条及び第9条の制度の適用を受けた期間については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。

2 定期昇給は、育児・介護休業の期間中は行わないものとし、育児・介護休業期間中に定期昇給日が到来した者については、復職後に昇給させるものとする。第3条~第9条の制度の適用を受けた日又は期間については、通常の勤務をしているものとみなす。

3 賞与については、その算定対象期間に育児・介護休業をした期間が含まれる場合には、出勤日数により日割りで計算した額を支給する。また、その算定対象期間に第8条及び第9条の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対応する賞与は、支給しない。第3条~第7条の制度の適用を受けた日又は期間については、通常の勤務をしているものとみなす。

4 退職金の算定に当たっては、育児・介護休業をした期間は勤務したものとして勤続年数を計算するものとする。また、第3条~第9条の制度の適用を受けた日又は期間については、通常の勤務をしているものとみなす。

5 年次有給休暇の権利発生のための出勤率の算定に当たっては、育児・介護休業をした日は出勤したものとみなす。

 

第11条(育児休業等に関するハラスメントの防止)

1 すべての従業員は第1条~第9条の制度の申出・利用に関して、当該申出・利用する従業員の就業環境を害する言動を行ってはならない。

2 1の言動を行ったと認められる従業員に対しては、就業規則第○条及び第△条に基づき、厳正に対処する。

 

第12条(法令との関係)

 育児・介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働の制限、時間外労働及び深夜業の制限、育児短時間勤務並びに介護短時間勤務に関して、この規則に定めのないことについては、育児・介護休業法その他の法令の定めるところによる。

 

(附則)本規則は、平成○年○月○日から適用する。

<存在について>

入社したばかりの新人やアルバイトにとって、そもそも会社に就業規則があるのかどうか不明なこともあります。

労働基準法では、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、…就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。…変更した場合においても、同様とする」となっているので、臨時で働く人を除き、従業員が10人未満の会社では、就業規則が存在しないこともあります。〔労働基準法89条〕

こうした小さな会社では、就業規則の存否については、直接社長に確認すれば良いでしょう。

 

<保管場所について>

使用者は、就業規則を周知する義務を負っています。〔労働基準法1061項〕

「周知」というのは、従業員が見ようと思えば見られる状態にしておくことです。こうしておかなければ、たとえ所轄の労働基準監督署に届け出た就業規則であっても、無効ということになってしまいます。

ですから、少なくとも就業規則をどこでどうやって読んだら良いのかわからない従業員に対しては、会社は就業規則の効力を主張できません。

この場合でも、年次有給休暇、産休、育休など法定の権利については、従業員に与えられています。

就業規則の保管場所については、直属の上司や、総務・人事の担当者に確認すると良いでしょう。

 

<どこを読んだら良いのか>

自分が疑問に思った点について、就業規則のどこを読んだら良いのかわからないことがあります。

この場合には、総務・人事の担当者に相談することになります。ただ、就業規則が作られただけで、法改正や会社の状況に応じた変更が無い会社では、社内に詳しい人がいないという困った状態もありえます。

社労士(社会保険労務士)に就業規則をチェックさせて、運用できる内容に改善したり、社内研修を実施したりが必要になります。

 

<読んでも意味がわからないとき>

必要な部分を読んでみたものの、その意味がわからないということがあります。

この場合にも、総務・人事の担当者に相談することになります。それでもわからないことがあります。

特に法令やひな形を丸写しにしただけの規定であれば、会社の実情に合っているかどうかのチェックもされていませんので、会社にとってどういう意味があるのか、誰にもわからないということも稀ではありません。

こんなときも、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.07.04.解決社労士

<遅刻の連絡先と連絡手段>

寝坊の場合だけではなく、家族の急病や自宅の水漏れ対応など、個人的な事情で遅刻する場合には、なるべく早く上司に連絡するのが常識でしょう。

上司が休日や休暇のこともありますから、念のため、もう一つ連絡先を設定しておくと安心です。

ところが、連絡手段となると、従業員の個人的な判断に任されていることが多いようです。これでは、不都合が発生することもあります。

 

<就業規則の規定>

たとえば、厚生労働省のモデル就業規則には次のような規定があります。

 

(遅刻、早退、欠勤等)

第16条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

このように、連絡先の定めがあるだけで、連絡手段は定められていません。

常識的な連絡手段としては電話でしょう。ついで、メールでしょうか。職場によってはLINEかもしれません。

さすがに電報や伝書鳩は無いでしょうけれど、社長の自宅の固定電話に留守電を入れておいたとか、上司にショートメールで連絡を入れておいたところ上司はショートメールの受信を拒否する設定にしていたなどという場合には微妙です。

正当な連絡方法といえるのか、従業員個人の常識と会社の判断とで食い違いがあれば、つまらないことで労働トラブルが発生しかねないのです。

特に無断で遅刻することが、懲戒処分の理由となりうる職場であれば、こうしたトラブルの原因は無くしておかなければなりません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

価値観の多様化している時代ですから、個人の「常識」に頼っていては、労働トラブルを未然に防止することはできません。

就業規則のある会社も無い会社も、会社の統一見解としての「常識」を文書化し、従業員全員に共有させておく必要があります。

それぞれの職場の個性に応じて、どのような「常識」をルール化するのが良いのかは、専門的な判断に従う必要があります。

迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.12.解決社労士

<ブラックな経営方針>

「うちの会社はブラックでいこう!」という経営者など、いないものと信じたいです。少なくとも、ブラック企業では長続きできないことはわかります。

 

<ありそうな事例>

新しく入ったパート社員から会社に「うちの子が熱を出したのでお休みをいただけませんか?」という電話があったとします。

このとき、会社の責任者はどのように応対するでしょうか。

もし、この電話が入社1か月のパート社員からのもので、同様の電話が3回目だったらどうでしょうか。

 

<子の看護休暇>

小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができます。平成22年6月30日からは、対象となる子が2人以上なら、1年に10日まで休暇を取得できるようになりました。〔育児・介護休業法16条の2、16条の3〕

申出は口頭でも認められます。

事業主は、業務の繁忙等を理由に、子の看護休暇の申出を拒むことはできません。

ただし、勤続6か月未満の労働者や週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。この他の労働者を対象外とすることはできません。

子の看護休暇は、法によって労働者の権利とされているものですから、残業手当の支払いや年次有給休暇と同じように、「うちの会社はムリだから無し」ということはできないのです。

 

<いつの間にかブラック企業となる危険>

上の事例で、電話を受けた会社の責任者は、子の看護休暇のことを知らなければいけませんし、勤続6か月未満の労働者や週の所定労働日数が2日以下の労働者について、労使協定の締結により対象外としているのであれば、そのことも知らなければいけません。

「そんなに休んでばかりじゃ採用取り消しだ」などと言ってしまったら、ブラック企業だと言われても反論できません。

労働基準法その他の労働法は、たびたび改正されます。特に少子高齢化対策に関連する法令の改正は頻繁です。

数年前に完全に適法にしたハズの就業規則とその運用が、いつの間にかブラックになっていても不思議ではありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

自覚症状の無いままにブラック企業となってしまわないためには、社内に専任の担当者を置いて、常に最新の教育を施して任に当たらせる必要があります。

これがむずかしいのであれば、会社に合った方法について、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.31.解決社労士

<定年年齢の規制>

事業主が定年制を設ける場合には、定年を60歳以上とすることが義務化されています。〔高年齢者雇用安定法8条〕

これにより、60歳未満の定年を定めた就業規則などの規定は無効とされます。

 

<定年後の継続雇用義務>

定年の定めをしている事業主に対して、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講ずべきことが定められています。〔高年齢者雇用安定法9条〕

義務付けられる雇用確保措置のうち継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度とがあります。

勤務延長制度は、原則として役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わりません。これに対し、再雇用制度は一度労働契約を終了させた後に、再び新しく労働契約を締結するものです。

つまり、定年の65歳への引上げが義務付けられるわけではありませんし、必ずしも勤務延長制度を選択しなければならないわけでもありません。再雇用制度を選択し、新しい労働契約によって、役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わることもあるわけです。

 

<定年後の再雇用を拒める場合>

しかし、トラブルの多い問題社員が定年後の再雇用を求めてきた場合に、会社がこれを拒めないというのは不合理です。

そこで、就業規則に継続雇用の条件を定めておくことにより、それが労働契約の内容となるようにしておいて、問題社員の再雇用を回避できるようにしておく必要があります。

それでも、ただ定めておけば、どんな条件であっても有効というわけではなく、不合理な条件は無効とされてしまいます。

ここにも、労働契約法の解雇権濫用法理の趣旨が及ぶわけです。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法16条〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則の具体的な規定が、客観的に合理的か、社会通念上相当であるかという判断は、労働審判や裁判の事例を見ながら専門的な見地から判断することになります。

就業規則に関連規定を置いていても不安が残る場合や、これから対応しようと考えている場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.03.解決社労士

<モデル就業規則>

厚生労働省のホームページに掲載されている「モデル就業規則」の最初のほうに、次のような規定があります。

「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。」〔モデル就業規則12項〕

そして、この条文について、次のような説明があります。

「本規程例に労働者の就業に関するすべての事項が定められているわけではありません。本規程例に定めがない事項については、労基法等関係法令の規定によることになります。」

このことは、すべての就業規則にあてはまることですから、念のための注意規定として、ほとんどの就業規則の最初のほうに置かれています。

 

<労働基準法の性質>

労働基準法の最初のほうに、次のような規定があります。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」〔労働基準法12項〕

つまり、労働基準法の基準は最低限のものだから、これを上回ることはかまわないが、下回ることは許さないと言っています。

 

<最低限の保障があること>

上記の2つのことから、まず言えることは、たとえば、就業規則に年次有給休暇の規定が無くても、労働基準法には規定があるので、労働基準法どおりの年次有給休暇が付与されるということです。

同じことは、産休、育休、介護休業、業務災害に対する補償など、あらゆることに当てはまります。

「うちの会社の就業規則には、産休の規定なんか無いから…」というときは、労働基準法の規定をチェックすれば良いのです。

 

<プラスアルファの保障は無いこと>

もう一つ言えることは、たとえば、会社の就業規則に産休や育休の規定が無い場合には、その会社の従業員には、法令による最低限の権利しか保障されていないということです。

産休の期間を長く認めていたり、産休中に賃金の支払いがある会社では、そのことについての規定が、就業規則の中に定められています。

つまり、規定が無ければ、プラスアルファの恩恵は無くて、最低限の保障となるわけです。

 

<就業規則の無い会社>

就業規則が無いということは、すべてのことについて「就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。」という規定を置いているようなものですから、何か不明なことがあるときは、関連する法令の条文を参照して確認することになります。

実際、経営者が従業員から権利を主張されてアタフタし、労働問題に発展しやすいのは、このケースです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

やはり小さな会社でも就業規則は必要です。

「うちは、アルバイトに年次有給休暇だとか、産休だとか無理だから…」という会社にも、労働基準法が適用されます。

いきなり請求されても困らないように、運用基準を決めておいてはいかがでしょうか。

信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.27.解決社労士

<就業規則の届出義務>

パートやアルバイトなどを含め、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して、所轄の労働基準監督署に届け出る義務を負っています。〔労働基準法89条〕

ですから、従業員が9人以下の会社では、就業規則を作らなくても労働基準法違反にはなりません。

しかし就業規則が無いと、経営者は余計な苦労を背負い込んでしまいます。

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<労働条件の共通部分>

労働条件は、原則として書面により労働者に示されなければなりません。〔労働基準法15条1項〕

一部のブラック企業を除き、法定の項目が記載された「労働条件通知書」などが労働者に交付されています。名称は、「雇用契約書」「雇い入れ通知書」などいろいろなものがあります。

就業規則が無い会社では、「詳細は、就業規則○○条参照」という表示ができないので、きちんとした物を作れば、数十枚から百枚以上の分量になり、とても現実的ではありません。

 

<職場の規律>

就業規則が無い会社では、新人に職場の規律を説明し、また、朝礼やミーティングで「こうして欲しい」「こういうことは禁止します」という内容を、説明することになります。

こうした具体的な説明が無ければ、ひとり一人の従業員が、自己判断で良かれと思う行動をとりますから、組織的には働けません。せっかく複数の従業員がいるのに、その力を結集できないのです。

また、自己判断で行ったことについて注意を受けても、その根拠が文書化されていないと、なかなか納得してもらえません。不満がふくらんで、退職にもつながります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これらについては、就業規則の内容に盛り込んでおけば、就業規則の周知によって、会社の義務を果たしたことになります。

しかし、就業規則の無い会社では、法令や法改正の内容について、その都度、個別に説明が必要になります。これは時間と労力の無駄です。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

それぞれの会社の実情に適合した就業規則の作成と改善は、社労士の最も得意とするところです。

きちんと会社の利益を確保し、会社が成長できる就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.13.解決社労士

<不満分子に見えますが>

問題社員なら、就業規則の抜け道や不合理な部分を見つけても、これを会社に言わないでしょう。むしろ悪用するチャンスをうかがうハズです。

就業規則を批判する社員は、会社の成長を願う真面目な社員だと受け取った方が良いでしょう。

 

<批判の対象>

就業規則には、労働法の概要、労働契約の共通部分、社内ルールの3つが含まれます。ですから批判も、労働法に対する批判、労働契約に対する批判、社内ルールに対する批判に分類できます。

 

<労働法に対する批判>

法律を作るのは国会です。ですから、会社に対する批判とはなりません。

ただ、こうした批判が出るということは、社員教育が不十分かもしれません。会社は労働基準法について、周知義務を負っています。〔労働基準法1061項〕

少なくとも、労働法の内容は会社の方針で決めたものではなく、批判されても対応できないということは理解してもらいましょう。

 

<労働契約に対する批判>

この部分で批判が出るということは、労働契約の内容に法令違反があるかもしれません。批判の内容を良く聴いて、就業規則に法令違反が無いか専門家にチェックさせることをお勧めします。労働法は、しばしば改正されていますから、労働契約の内容がいつの間にか違法になっていることもあるのです。

 

<社内ルールに対する批判>

もし、規定されている通りに実践されていないという批判なら、頼もしいことです。その批判をした社員を含めたメンバーで、実践を推進すべきでしょう。

そうではなくて、規定の中身が悪いという批判であれば、これは経営者の考えが強く反映されている部分に対する批判ですから少し警戒したいところです。

一番多いのは、時代遅れであるとの指摘でしょう。しかし、古くても良いことはたくさんあり、新しくてもダメなこともあります。ライバル会社を中心に業界全体の動向を把握し、また他業界や世界の動きも見据えて、在るべき姿を再考するチャンスです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

法的観点や業界動向を踏まえて、就業規則の適法性、妥当性を確認するのも、労働法の基本についてレクチャーするのも、社労士の得意分野です。社内でまかない切れない部分については、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください

 

2017.03.24.解決社労士

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<手順がおかしいと>

ところが実際には、5.意見書 → 6.届出 → 4.周知 の順番になってしまうことも多いようです。就業規則が効力を発生するのは、従業員への周知の時なのですが、労働基準監督署への届出の時だという勘違いがあるのでしょう。

社内の一部の人や社労士が就業規則の変更案を作り、これが従業員一般に公開されないまま決定されて労働基準監督署に届出が行われるというのは良くないです。「就業規則が変わりました。労働基準監督署にも届出済です。守ってください」では、唐突すぎて会社に対する不信感が生まれてしまいます。

たとえ従業員に有利な変更だったとしても、だまし討ちのように思われてしまいます。やはり、正しい手順で行うことは大切です。

 

<一歩進んで>

就業規則の変更案を作る段階で、その変更により最も影響を受ける従業員から意見を聴き、それを参考にしたらどうでしょうか。

意見の内容はバラバラでしょうから、すべての意見を聞き入れることはできません。それどころか会社の都合で、変更案に意見が全く反映されないこともあるでしょう。それでも、一応、意見を聴いておけば、思わぬ勘違いを防げますし、より良い変更案のヒントが得られるかもしれません。なにより、会社が従業員の意見を聴いたうえで、就業規則の変更を進めるというのは、民主的で良いことです。

このように、一手間加えることで、会社の態度を示すことができますし、従業員の皆さんも就業規則に関心を持ち、守ろうとする気持が高まることでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則が従業員に理解され守られるようにするのは、手間がかかることです。勤務先の店内でふざけた写真を撮りネットに掲示することが、就業規則の中の「会社の信用を傷付け・・・」にあたるとは思わない若者が多いのです。

新人が入ってきたら、就業規則について基本的なことは説明しなければなりません。初めて役職者になった従業員に対しては、一段高いレベルの教育も必要です。理想を言えば、毎年のように定期的な説明会を開きたいところです。

もし、社内でまかない切れない部分があれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.23.解決社労士

<就業規則の3つの柱>

就業規則には、次の3つの柱があります。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

<職場のルール>

会社と労働者が職場で守るべきルールです。

ここには経営者の想いが反映されます。「明るく元気に自分から挨拶」「会議では積極的に発言」「書類は探すことがないように整理整頓」など、違法なことを除き自由に規定できます。会社として、従業員にどのように働いて欲しいのか、存分に規定しておくべきです。

当然のことですが、就業規則のひな形に、それぞれの経営者の想いは反映されていません。社労士は、経営者の方から普段考えていることや心情をうかがって、それを就業規則にふさわしく解かりやすい表現にまとめていきます。もちろん違法性が疑われる表現は排除します。

 

<労働契約の共通部分>

会社ごとに見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。この共通部分は会社ごと、職場ごとに異なります。文書化されているものも、口頭で認識されているものもあります。

社労士は、労働契約の内容を法的観点から分析し、共通部分を抽出して、就業規則の規定にまとめます。

労働契約の内容や慣行が法令違反の場合もあります。必要な手続きが行われていないために違法な場合には、社労士が手続きを指導しあるいは代行します。実質的に違法な部分については、社労士が改善のお手伝いをします。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

法令はしばしば改正されていますから、子の看護休暇などのように、法定されていて会社に義務づけられていても、あまり知られていないものもあります。

社労士は、これらの内容をわかりやすく就業規則にまとめます。年次有給休暇の制度や産休のしくみなど、必要に応じて説明会を開催することも可能です。

 

<社労士(社会保険労務士)に就業規則の作成を依頼する意味>

ただ形ばかり規定を備えるのであれば、ネットで検索したひな形に少し手を加えればできそうです。

それなのに社労士に報酬を支払ってまで就業規則の作成を依頼するのは、次のような効果が期待されるからです。

・問題社員から会社と真面目に働く従業員を守る。

・就業規則を通じて経営者の想いを従業員に伝える。

・会社で運用されるルールのうち問題のあるものを改善できる。

・法改正や労働市場動向に適合した内容にできる。

つまり、就業規則の作成を通じて、実は会社の強化と成長促進ができるわけです。

 

2017.03.19.解決社労士

<服装の場合には>

男女兼用の服や、どの世代の人にも似合う服というのは、一時的に流行しても、その流行は長続きしません。

人は歳をとるものですし、体型も変わります。ですから、高校時代に着ていた服を40代、50代になっても違和感なく着こなせるという人は、尊敬に値しますが稀な存在です。

たとえ身体にフィットしても、流行との関係で、恥ずかしくて外出時は着られず、もっぱら部屋着になる服もあります。

それでも、我慢して着ていると、流行が一巡して外出するのに問題なくなることもあったりします。

 

<会社にフィットした就業規則>

大企業と中小企業のどちらにもピッタリな就業規則や、小売業にも工場にも適合する就業規則というのは、ちょっと想定しがたいです。

公開されている就業規則のひな形の中には、中小企業向け、小売業向けなど親切なものもあります。しかし、同じ小売業でも呉服店とコンビニが一緒の就業規則を使うというのは、無理があるでしょう。

やはり会社の規模や業種に応じた就業規則であることが望ましいのです。

 

<時代遅れの就業規則>

会社の設立以来30年間改定していない就業規則を見たことがあります。もちろん法改正に対応していないので、違法なポイントが満載でした。女性が結婚を理由に退職すると、男性の場合よりも多くの退職金が支給されるというのは、時代を反映していて、興味深いものがありました。

もちろん、この就業規則は実際には機能していなくて、労働基準監督署の調査予告が入ってしまい、あわてたということです。

 

<流行と就業規則>

就業規則について、流行を追いかける必要は無く、また、流行を追っている会社も無いでしょう。

しかし、ブラック企業や過労自殺の話題に接したなら、自分の会社の就業規則が対応できているのか確認して、必要な改定をしていくというのは正しい姿です。

もう少し想像力を働かせて、たとえば大雪のニュースを見たら「社員が大雪で出張や旅行から帰って来られない場合の給与支払いはどうなるのか」など考えてみると良いでしょう。電車の事故で出勤が遅れても、遅刻扱いにしないというルールは、多くの会社で見られます。その延長線上で考えてみるのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働関係の法令も社会情勢も、1年間変わらないということが無い世の中ですから、就業規則を3年以上も改定しないというのは危険です。

この1年を振り返ってみて、会社が痛い思いをしたことがあったなら、就業規則と運用の改善で再発を防げないか検討の余地があります。

ノービスクラスの就業規則を改善して、会社を守る武器にするためにも、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.15.解決社労士

<退職金の支払い義務>

民間企業の従業員に対する退職金支給義務は、使用者に課されていません。

ですから民間企業では、必ずしも退職金を支給する必要はなく、実際に退職金制度の無い企業も少なくありません。

とはいうものの、退職金は日本の雇用慣行の中で、引退後の生活基盤の原資として重視されています。

その額も、給与や賞与に比べても多額なのが通常です。

 

<退職金と就業規則>

就業規則に「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を規定すべきことが定められています。〔労働基準法89条〕

ここでいう退職手当とは、退職金よりは広い概念で、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確になっていて、その受給権が退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化するものであれば良いとされています。

また、一時金だけでなく年金である場合も含みます。

 

<社外の退職金制度利用の場合>

使用者が、中小企業退職金共済制度などの社外積み立て型の退職金制度を利用している場合も、ここにいう退職手当の制度に該当します。

ですから、この場合にも、就業規則に規定を設けなければなりません。

 

<危険なケース>

社外の制度を利用しているからという理由で、就業規則に退職金の規定を置かないのは、労働基準法違反になります。

それ以上に問題なのは、就業規則がひな形や他社の就業規則のマネを元に作られていて、実際には退職金を支給していないのに、あるいは支給する予定がないのに、規定だけが存在するという場合です。

これらの場合には、自己流で修正することがトラブルの原因となりかねません。是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.06.解決社労士

<労災保険での失敗>

あくまでも人から聞いた話です。

労災保険はアルバイトに適用しない旨の規定が就業規則にあって、アルバイトに労災事故が発生しても、手続きをしていない会社がありました。

ある日、アルバイトが出勤の途中でひき逃げされ、ご本人は意識を失い救急車で病院に運ばれて、ご家族が駆けつけました。

アルバイトの父親から、その会社に電話しました。急な欠勤のお詫びと、労災手続きを速やかにして欲しいとの依頼です。ところが、その会社の社員から自信たっぷりに「うちの会社はアルバイトに労災保険を適用しません」という話をされます。

そこでこの父親が、所轄労働基準監督署の労災課に相談して、会社に調査が入り、労災保険料の不足と、今までの手続きの未了が発覚します。そして、多額の出費と手続きのやり直しの手間が発生し、経営が危うくなったということです。

 

<社内の常識>

社内での長年の常識が、実は法令違反ということもあります。所轄労働基準監督署に届けてあるのだから、その就業規則に規定されていることは、すべて合法であり問題無いと思ったら大間違いです。

労働基準監督署は、届け出のあった就業規則に違法な部分を見つければ、その是正を指導します。しかし、私の経験からしても、就業規則の作成や変更を労働基準監督署の窓口に届け出たときに、1時間以上かけてじっくりとチェックされたのは、約100回中たったの1回です。

通常は、ざっと見てくださって、気づいたところをコメントしてくださる程度です。ですから届けの控えに「受付」のハンコを押してもらっても、内容が保証されたわけではないのです。

また、就業規則を届け出てから2~3年もすれば、法改正によっていつの間にか違法になってしまう規定が出てくるものです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

なぜ不適法な就業規則が作成されたのか、その経緯は不明です。

しかし、少なくとも専門家のチェックを経ないまま、所轄労働基準監督署に届け出が行われ、そのまま長年にわたって運用されてしまったのでしょう。

それでも、何かキッカケが無ければ発覚しないものです。

就業規則の作成、変更、運用については、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。

 

2017.02.05.解決社労士

<規定が無いと>

就業規則に産前産後休業の規定が無い会社では、従業員が希望しても産休を取ることはできず退職するしかないのでしょうか。

そもそも従業員が10人未満の会社では、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出義務がありませんから、実際に就業規則が無いこともあります。

 

<労働契約を規制するもの>

労働契約は、労働者の「働きます」という意思表示と、使用者の「雇います」という意思表示が合致して成立します。

そして、契約自由の原則というものがあり、契約を締結するかしないか、誰と契約するか、どのような内容の契約をするかなどは、原則として自由だとされています。

しかし、この原則を制約する法令の規定として、強行規定があります。強行規定は、それに反する契約当事者間の合意にかかわらず、強制的に適用される規定をいいます。

強行規定かどうかは、条文を見ただけでは区別できず、その趣旨が社会の秩序を維持するためであったり、弱者保護のためであったりすることによって、強行規定であると解釈されます。

労働基準法は、まさに弱者である労働者を保護するための基準を示した法律ですから、その条文は基本的に強行規定だといえます。

 

<結論として>

就業規則に規定が無くても、そもそも就業規則が無くても、産休を取る権利は労働基準法によって認められています。

使用者は、就業規則のことを理由に産休を否定することはできないのです。

これは、産休だけでなく、年次有給休暇、残業手当などにも当てはまります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

労働基準監督署で「うちではアルバイトに労災保険を適用しない」と主張する経営者、ハローワークで「パートまで雇用保険に入れる必要はない」と熱弁をふるう取締役の姿を見たことがあります。会社独自のルールを設けて良いことと悪いことの区別がついていないわけです。

会社のルールがおかしくないか、少しでも疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.01.25.解決社労士

<就業規則の機能>

就業規則は、労働条件や職場の規律を明らかにして、働きやすい職場づくりに役立ちます。

つまり、就業規則が文書化され明らかであれば、労働者は労働条件や守るべきルールが明らかなので、安心して働くことができます。

また、使用者も職場秩序を確立・維持し、多数の労働者の労働条件を統一的に管理することによって、事業運営の見通しを立て計画性を保つことができます。

さらに、労働者と使用者との間の権利義務関係を明らかにして、労働紛争を予防することができます。なぜなら、労働紛争の多くは「あやふや」であることに起因するからです。

 

<就業規則に対する法規制>

就業規則は、労働基準法をはじめとする法律、命令、省令、労働協約に反してはなりません。反している部分は無効となります。

これらに反する就業規則が作成された場合には、所轄労働基準監督署長が変更を命じることになります。

 

<就業規則の個性>

就業規則は、法令や労働協約により規制されるものの、その範囲内では職場の実情に応じたものを定めることができます。つまり、就業規則にも個性があります。

そして、労働者の権利が最低限守られるだけの就業規則もあれば、労働者の権利を大幅に認めた就業規則もあります。

最低限の就業規則であれば、会社の負担は少ないのですが、労働者が不満を感じて労働意欲を失ったり、退職してしまったりでは元も子もありません。

反対に、福利厚生やその他の面で、労働者に最大限の権利や自由を認める就業規則であれば、労働者の利益になるようにも見えますが、会社の負担が大きすぎて経営が行き詰まるようでは、結局、労働者の雇用の安定が損なわれてしまいます。

結局、実際に運用されている就業規則は、労働者と使用者との間の権利義務関係が、職場の実情に応じて微妙なバランスを保った内容であることが求められるわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の実情を踏まえたバランスの良い就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.22.解決社労士

<就業規則の由来>

就業規則は、従業員の労働条件や職場の規律などを定めたものです。

多数の従業員を抱える企業では、営利追求の目的を達成するために、雇い入れた従業員を組織化し労働条件や職場の規律をある程度画一的に規制する必要があります。

多くの従業員が集まって生産活動に携わる場合には、予め決められている一定の秩序に従うことが効率的であり、安全も確保され、生産設備や施設の管理も適切に行えるため、その必要性が認識されて自然発生的に作られ、やがて慣行化されたものです。

このように就業規則は、労働基準法が作成を命じているから作られたというものではありません。

 

<就業規則の内容>

実際の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

就業規則の由来からすると、その内容は労働条件の共通部分と職場の規律だけで十分なはずです。

しかし会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

<パート・アルバイトがいる場合の就業規則>

就業規則は、労働条件の共通部分についての規定を含みます。そして、正社員とパート・アルバイトでは労働条件が違うのですから、それぞれ別の就業規則が必要となります。

正社員には退職金制度があり、パート社員には退職金を支払わないという暗黙のルールがあっても、正社員の就業規則しか無ければ、退職したパート社員から退職金の支払いを請求されても断り切れないのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

それぞれの会社の実情に適合した就業規則の作成と改善は、社労士の最も得意とするところです。

きちんと機能する就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.01.21.解決社労士

<法律の第1条>

雇用保険法、労働安全衛生法、労災保険法、健康保険法、厚生年金保険法、男女雇用機会均等法、パートタイム労働法など、会社の労働に関わる法律の中には、第1条でその法律の目的を示しているものが多いと感じます。

これは、最初にその法律の目的を明らかにすることによって、1つの条文に複数の解釈が可能な場合には、目的に沿った解釈を選択できるようにするためです。そして、法律の意図した解釈とは違う解釈がされないように、一種の道しるべの役割を果たしているといえます。

 

<社内規程の第1条>

会社の就業規則や、賃金規程、退職金規程などを見ても、第1条にその規則や規程の目的が示されていることは多いものです。

もし、社内規程の最初にその規程の目的が示されていないとすると、個々の規定を見たときに、一般社員は労働者側に有利な解釈をし、経営者や人事部門の責任者は使用者側に有利な解釈を示して、対立してしまうという事態が発生しやすくなります。

反対に、「第1条(目的)」の役割をこのように把握したうえで、規程全体の解釈が統一的なものになるよう、「第1条(目的)」の内容を充実させなければなりません。

 

<モデル就業規則の「第1条(目的)」>

厚生労働省のモデル就業規則も、第1条は「目的」です。そして、労働基準法89条を基に規定していること、規定し切れないことについては法令の定めによるということが書かれています。

そこで、労働基準法89条を見てみると、就業規則に必ず規定する項目、社内にルールがあれば規定を置く項目が並んでいます。これによって、会社ごとに無ければならない項目が明らかとなります。

また、就業規則に規定が無いからと言って、その会社の従業員に適用されないということではなく、法令の内容が適用されるということを示しています。たとえば、産休や介護休業について就業規則に規定が無くても、法令が適用されてちゃんと休業できるということです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

実際に就業規則を読んでみて、どう解釈して良いのかわからない規定があったり、そもそも意味不明な部分があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。それぞれの職場に適合した就業規則について、アドバイスや提案を受けることができます。

 

2017.01.14.解決社労士

<憲法と就業規則>

それぞれの国の事情に応じて、それぞれの憲法があり法律があるように、それぞれの企業の事情に応じて、それぞれの就業規則が必要です。

なにしろ就業規則は、その企業の憲法であり法律ですから。

今の日本国憲法は、国民の人権を国家権力から守る構造になっています。

しかし、前の大日本帝国憲法は国家権力を守る構造になっていました。

就業規則の中にも、企業を守る要素が強いものと、労働者の権利を守る要素が強いものとがあります。

 

<理想を言えば>

ですから、経営者が自分の会社を守り自分の理想に近づけようとするなら、これを実現するための武器として自分で作った就業規則を持つべきです。

ただそのためには、少なくとも憲法、民法、そして労働基準法などの労働法について、体系的な理解と知識が必要ですから、もともとそうした勉強をしてきた経営者でなければ手がつけられないかも知れません。

また、就業規則には「何をどう規定したらどうなるか」という独特な専門知識と事例経験も必要です。これを習得するためには、さらに2~3年かかるでしょう。

 

<お手軽な方法>

知り合いの会社の就業規則を真似して…というのは最悪です。よその会社の就業規則を真似してもメリットがありません。経営者の考え方も違いますし、毎年のように改定されているのでなければ、法改正に追い付いていなくて違法な部分も含まれているでしょう。

やはり、厚生労働省のモデル就業規則をベースに作るのが安全です。これは、法改正に対応していて、適法であることが保証されているようなものですから。あとはこれに経営者の思いや、会社の個性、実情、成長段階などを反映させれば出来あがりです。

 

<詳しい人に任せる方法>

経営者が自分自身で就業規則を作ったり改定したりしなくても、社内に詳しい人がいたり、人事部門の責任者や担当者がいるときには、その人に任せるのも良いでしょう。

ただし、これには「お手盛り」の落とし穴があります。

企業で「お手盛り」というと、取締役が自分の報酬を自分で決めると多めの金額になるということを指すでしょう。

しかし、このことは就業規則にもあてはまります。就業規則の作成・改定を任されたのが取締役ならばともかく、労働者であれば労働者に有利な規定になるのは当たり前です。

たとえば、人事課長に給与規程を作らせれば、自分に有利な給与体系を作るのは、たとえ悪意が無くても、無意識のうちにそうしてしまうのは仕方のないことです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

より短期間で強力な就業規則にするには、信頼できる社労士(社会保険労務士)と経営者とで打ち合わせを重ね、作り上げていくのが賢い方法です。

たしかに報酬などの経費が発生します。しかし、退職者から不当解雇を主張され、3か月から1年分の賃金プラス慰謝料を請求されることを1回でも防止できれば、すぐに元が取れる程度の経費です。

社労士事務所によっては、顧問契約の範囲内で、少しずつ就業規則を改善していくサービスも行っています。これは、就業規則を社内に定着させる点でも優れていると思います。

ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.04.解決社労士

<具体的な例>

総務や経理のメンバーが、新規開店の店舗の応援に行き、慣れない仕事をしてケガをしてしまったという場合、普段と違う仕事内容でも、会社の業務として行った以上、労災になります。

それはそれとして、社内的には誰の責任かが問われることになります。

 

<一般的な基準>

応援メンバーが、所属部門の上司から相当に具体的な指示を受けたうえで、応援に行ったのなら、その指示をした上司にも責任があります。

ただ「応援要請があったので頼む」という抽象的な指示しか無かったのであれば、応援先の責任者がほぼ全面的に責任を問われることになります。

しかし実際には、所属部門の上司からの指示が具体的と言えるかどうか、応援先の責任者の指導は的確だったのかなど、水掛け論になりがちです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

他部署の応援がありうる職場の就業規則には、次のような規定を置いて責任の所在を明らかにしておくべきです。

 

第○条 従業員には会社の都合により、他部署の応援を求めることがあります。

2. 従業員は、正当な理由なくこれを拒んではなりません。

3. 従業員はこの場合、直属上司から応援先責任者の指定を受け、応援先責任者の指揮命令に従うものとします。

 

たしかに、他部署の応援がありえない職場では、全く必要のない規定です。しかし、応援のある職場には必要不可欠な規定でしょう。

社労士が就業規則の作成・改善を依頼された場合には、その職場に適合するものにします。もし、現在の就業規則に不安があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.20.

<常識的な考え方>

就業規則には職場のルールが定められ、従業員にある程度共通する労働条件の統一的内容が示されています。

ですから、これに従うのが当然であるというのが、企業と従業員の共通認識だと考えられます。

 

<就業規則は校則のようなもの?>

しかし、就業規則は使用者が一方的に作成するものです。

労働基準監督署長に就業規則を届け出る場合には、労働者の過半数で組織される労働組合または労働者の過半数を代表する者の「意見書」を添付します。

この「意見書」は労働者側の意見を示したものですが、使用者はこれに従う義務どころか応答する義務もありません。

作成の経緯としては、中学校や高校の生徒手帳に書いてある校則と同じようなものです。

契約であれば当事者の合意を根拠として、その内容に従う義務を負うのは当然ですが、就業規則は契約ではないのです。

 

<法令の規定は?>

次の2つの条件を満たしている場合には、労働者も使用者も就業規則の規定に従う義務があります。〔労働契約法7条〕

・合理的な労働条件を定めていること

・周知されていること

ですから、合理的ではない就業規則に労働者が従う義務は無いということになります。

しかし、「周知されていること」というのが、就業規則を見ようと思えば見られるかどうかで明らかなのに対して、「合理的」かどうかは簡単に判断がつきません。

 

<「合理的」の判断基準>

労働契約法は、裁判所が判断するにあたって形成してきた理論(判例法理)を立法化したものです。そして、2007年の成立後も数多くの裁判例があらわれています。

それでも、統一的な基準ができているわけではなく、一つひとつの具体的な事例に即して判断する形がとられています。

ですから、社会人としての一般常識から「合理的」かどうかを判断するのは困難です。多くの労働法と、さらに多くの裁判例を踏まえて、具体的な就業規則の規定の合理性を判断する必要があるのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

ある会社で就業規則の規定について、「合理性」の判断が分かれた場合、社内で解決することは困難です。

こうした場合には、専門家である社労士に判断を仰ぎ、わかりやすい説明を求めることで決着させるのが安心です。

もし、不合理な規定であったり、法令違反の規定であった場合には、会社の実情に照らしてふさわしい規定の提案も依頼できます。

こんなときは、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.12.05.

<休職とは>

休職とは、長く働く予定であった従業員が、個人的な事情により長期間勤務できない状況となり、本来ならば退職しなければならないところ、会社が必要を認めて退職させずに雇用を継続する制度です。

そして、長期間勤務できない理由ごとに一定の休職期間が設定され、復帰できる状態になれば職務に復帰し、期限までに復帰できなければ退職となります。

これが一般的な形です。しかし、育児休業や介護休業などを除き法定の制度ではありませんから、この制度を設けるかどうか、どのような制度にするかは基本的に会社の自由です。

 

<私的な病気やケガによる休職の例>

たとえば、次のような規定が考えられます。

 

第XX条(休職)

労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

(1)業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないときは、2年以内

(2)前号のほか特別な事情があり、休職させることが適当と認められるときは、必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

1項1号で、「業務外の傷病」と言っているのは、業務災害の場合には解雇が制限されているからです。〔労働基準法19条1項〕

 

<お勧めしたい表現の変更例>

主語を明確にして、トラブルを未然に防止するには、下線部を次のように変更することが考えられます。

 

第XX条(休職)

労働者が次のいずれかに該当するときは、会社が必要に応じて、所定の期間休職を命ずることがある。

(1)  業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないときは、2年以内

(2)  前号のほか特別な事情があり、会社が休職させることが適当と認めたときは、必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当と会社が判断した場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

このように表現を変更することによって、次のことが明確になります。

・会社は従業員に休職の権利を与えたわけではない。

・休職を判断するのは従業員ではなく会社である。

・会社は休職を命じても良いし、命じなくても良い。

・元の職務と違う職務に復帰させる必要性についても会社に判断権がある。

これによって休職は、会社にとって必要な人材を確保するための仕組みであることが明確になります。

こうしておけば、従業員から「3か月の世界一周旅行に行ってくる。これは1項2号の特別な事情にあたるから必要な期間休職させなさい」などと言われることも無いと思います。

 

就業規則は、言葉が足らなくても余計な言葉が付いていても、それがトラブルの元となります。

ぜひ一度、信頼できる社労士(社会保険労務士)のチェックを受けるよう強くお勧めします。

 

2016.10.29.

<就業規則の有効性>

就業規則は所轄の労働基準監督署長に届出をしても、労働者に周知しなければ効力がありません。

この「周知」というのは、すべての労働者が見ようと思えば見られるようにしておくことをいいます。つまり、本当に中身を読んだかどうか、理解したかどうかまでは問われません。

もっとも、日本語がよくわからない外国人には、その母国語で書かれた就業規則を周知したり、内容を解説した文書を公開したり、別の工夫が必要となります。

 

<就業規則が使われるケース>

実際に就業規則の規定が活用されるのは、「就業規則にこう書いてあるのに守らなかった」「就業規則によればこういう結論になる」といったケースです。これらの場合には、「読めば誰でも具体的な内容を理解できる」というのが前提になっています。

ところが実際には、表現が古くさくて理解できなかったり、そもそも読めなかったりということがあります。就業規則を作った人にはわかる内容でも、会社に高校生のアルバイトがいて、その人にはわからないというのでは困ります。就業規則違反を問いただしても、「へぇーそれはそういう意味だったんですかぁ」と言われたら、反省を促すこともできません。

 

<実例として>

就業規則のひな形の中で、たとえば次のような用語は、書き換えたほうがわかりやすいと思います。

就業に関する → 仕事に関する

若しくは → もしくは

漏洩しない → もらさない

多胎妊娠 → 双子・三つ子などを妊娠

既往の → それまでの

顕著な → 特にすばらしい

それぞれ、法令の用語がそのまま就業規則のひな形に使われ、それが会社の就業規則に入ってしまったものと思われます。

上にあげた例もそうですが、ことばは使われる場所によっても意味が違ってきます。前後の文脈も考えたうえで、ことばを選ぶ必要があります。

 

<わかりやすい就業規則にするには>

社員数名で就業規則の読み合わせをしてはいかがでしょうか。「ここの意味がわからない」と気軽に申し出られるメンバーであることが必要です。そして、よりわかりやすい就業規則の修正案を作成していくのです。

もし、こうしたことが社内でできないのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.23.

<見直しの必要性>

就業規則の内容は、大きく分けると次の3つです。

・法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分

・自社の従業員にある程度共通する労働条件

・自社で独自に定めた職場のルール

このそれぞれについて、見直していく必要が発生します。

おそらく就業規則を1年間放っておくと実情に合わないものになるでしょう。

 

<法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分>

これには、法改正への対応を迫られるケースと、今までの対応では足りない新事情が発生するケースがあります。

法改正については、テレビニュースや新聞記事をキッカケに、ネットで情報を検索して、自社内で就業規則の関連部分を手直しすることも可能でしょう。

しかし、新事情への対応となると、その必要性に気づきにくく、イザというとき規定が足りないというケースが発生しやすいのです。

最近では、従業員の親の高齢化による介護休業制度の見直し、メンタルヘルス不調者の発生による休職制度や復職支援制度の見直しの必要性が、クローズアップされています。

 

<自社の従業員にある程度共通する労働条件>

これは従業員の勤務の実態が変化して、対応を迫られるケースです。

事業が拡大して、遠方に支店や新営業所ができれば、転勤や単身赴任のしくみが必要となります。場合によっては、全国エリア社員と勤務地限定社員を区分するしくみが必要となるでしょう。

また、勤務中のポケモンGOが問題となり、賃金の欠勤控除を厳密に行う必要が発生することもあるでしょうし、毎日のように居眠りする社員が疑問視され、新たな懲戒項目を設ける必要が感じられるようになることもあるでしょう。

 

<自社で独自に定めた職場のルール>

これには社内事情の変化への対応と、社会情勢の変化への対応があります。

社内事情の変化には、たとえば事務所の引っ越しがあります。これによって、通勤手当の見直しや、出勤・退勤時のルールや休日出勤のルール見直しが必要になるでしょう。

社会情勢の変化には、たとえば社員が社内でふざけた写真をとりネットに掲示する事件などがあります。この場合には、自社で発生を防止する一方、万一発生した場合の対応についても、ルールを決めておく必要があります。

 

<独特なむずかしさ>

就業規則の一部分だけを見直すことによって、関連する規定との間に矛盾が発生してしまい、これに気づかないという問題は多発します。実際に発覚するのは、何か具体的な問題が発生して、就業規則を調べたときです。このときは、問題が解決できず本当に困ってしまいます。これを防ぐには、就業規則というものの体系的な理解をしている専門家の関与が必要です。

「転ばぬ先の杖」ということで、3年に1回程度は、お近くの社労士(社会保険労務士)のチェックをお勧めします。

 

<柳田事務所にご依頼なら>

顧問契約をお勧めします。

就業規則見直しの必要性について、日常的に多角的にチェックしています。

そして、会社の実情に応じて、無理のない見直しをご提案します。そして社内に定着するまでのフォローをします。

経営者の方や社内のご担当者の方が主体となって就業規則の見直しを行い、柳田事務所が指導・サポートする形であれば、つまり改定案作成の丸投げでなければ、顧問料の範囲内で行うこともできます。

しかも、顧問契約(総合委任契約)の業務範囲は広く、就業規則関係だけでなく、人事制度、労災、雇用保険、健康保険、労働紛争、採用、懲戒、コンプライアンス、労働基準監督署・会計検査院の調査対応、教育など人事業務全般に及びます。

もし必要を感じましたら、まずはご一報ください。このページ右上のお問合せフォームをご利用いただけます。

 

2016.09.21.

<大前提として>

就業規則は従業員に周知することで有効となります。周知というのは「誰でも読もうと思えば読める状態に置くこと」です。

しかし、高校生が読んでもわからない就業規則では威力を発揮できません。ですから、読んでわかる就業規則というのが大前提です。

 

<ひな形の活用>

就業規則を作るとなると、厚生労働省のモデル就業規則や、業界ごとに作られたものをネットで検索して利用することが多いでしょう。

厚生労働省のものは、法改正などに応じて内容が更新されています。最終改定年月日も示されていますので安心して利用することができます。

他のひな形は、どこまで法改正に対応できているか確認するのが大変です。また、知り合いの経営者の方が、その昔専門家に作ってもらったという就業規則をコピーさせてもらっても、何度も行われてきた法改正や社会情勢の変化に対応できていないことが多いので注意しましょう。

 

<自社の個性への対応>

就業規則の内容は、大きく分けると次の3つです。

・法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分

・自社の従業員にある程度共通する労働条件

・自社で独自に定めた職場のルール

こうしてみると、自社の就業規則はひな形を丸写しにしてでき上るものではないことがわかります。

厚生労働省のモデル就業規則にも、その最初と各条文のところに、自社に合わせることの重要性と注意点がとても細かく書かれています。

ひな形の規定であっても、自社に無理なことをマネすると苦労します。

「お客様、お取引先、従業員など関係者には自分から進んで明るく元気にあいさつすること」が、社内では当たり前のルールになっていたとしても、これを就業規則に入れておかないと、従業員に対して「ルールを守りなさい」と注意したときに、「何を根拠に?」と反論されたり、反感を抱かれたりします。

こうしたことから、社内規定を十分に理解していない若手事務担当者に作成を任せるのは、不可能を押しつけることになってしまいます。やはり、社内で就業規則を作成するのは、経営者やベテラン社員の仕事ということになります。

 

<柳田事務所にご依頼なら>

新しい会社であれば、経営者の方からご意向をうかがい、会社にマッチした就業規則案を作成し、これをベースに微調整という進め方になります。

設立後ある程度の年数を経過し、労働者数が10人以上になりそうなので就業規則を作成したいというケースもあります。この場合には、従業員の方々にもお話をうかがい、完成形に近い就業規則案を作ってしまいます。

特長的なのは、就業規則の運用に必要な社内の申請書類やチェック表などの準備、さらには従業員の教育研修の実施なども、運用をスムーズにするために役立つことは、すべてご要望に応じてサポートしている点です。

もちろん、就業規則作成にあたって、一部分だけのお手伝いをすることもあります。

もし必要を感じましたら、まずはご一報ください。このページ右上のお問合せフォームをご利用いただけます。

 

2016.09.20.

<就業規則に発生する矛盾>

会社が初めて就業規則を作成し、労働基準監督署長に届出る場合には、大変慎重になりますから、厚生労働省のひな形を参考にしたり、社労士(社会保険労務士)に依頼したりで、矛盾のないものを作成しようとします。

ところが、法改正や社会情勢により、あるいは社内の運用が変わって、就業規則を改定する場合には、1か所ばかりに気を取られて、関連する部分のすべてを改定できずに終わってしまうということがありがちです。

こうして、就業規則の中に矛盾が生じてしまいます。

 

<事務的に直してよい矛盾>

部署名や役職名など、変更されたにもかかわらず、一部の表記が古いままという場合には、これを事務的に修正しても問題ありません。

また、矛盾する2つの規定のうち、どちらか片方に統一しても、あらゆるケースを想定した場合に、適用される労働者の誰にも不利益をもたらさない場合には、きちんと就業規則改定の手続きを踏む限り、特に問題はありません。

 

<解消に手間のかかる矛盾>

ある条文によれば会社側に有利、別の条文によれば労働者側に有利という形での矛盾がある場合、これを解消するには慎重になるべきです。

多くの場合、社労士(社会保険労務士)など慣れた専門家が見れば、解釈の問題で解決できる場合が多いものです。この場合には、解釈が分かれないように条文の表現を工夫すればよいだけのことです。もちろん、就業規則改定の手続きは必要です。

困るのは、正しく解釈しても矛盾を含んでいる場合です。この場合には、基本的には労働者側に有利なほうに統一することになります。ただし、時代に合わないとか、運用が困難であるなどの理由があって、会社側に有利なほうに統一するのが合理的といえる場合には、例外的にそうします。このときにも、就業規則改定の手続きが必要です。

このことは労働契約法10条本文に次のように規定されています。

「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」

 

2016.09.12.

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。こうしたことから、労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

 

<就業規則>

労働者が10人以上になったら、労基署に届出が必要です。このことは、よく知られています。

しかし就業規則がないと、どんなに細かいことでも労働条件通知書などに記載しておかなければ効力がありません。労働者が知らないのに、これは会社のルールだと言っても通用しないのです。口頭で説明しても「聞いていません」「忘れました」と言われればアウトです。

また、就業規則や労働条件通知書に書いてなくても「法律通り」にすればよいと思う経営者の方々も多いようです。ところが、最近の法改正により「労使で協議して決める」とか、「3つの中から会社の実情に合わせて決める」という規定も増えてきました。ですから「法律通り」と言っても何も決まっていないことがあります。

特に懲戒処分については、何をやらかしたら、どんな懲戒処分になるかなどは、重要なのに法令には何も規定されていません。

こうしたことから、すべてを労働条件通知書などに書いておくことは、現実的ではありません。やはり一人でも人を雇ったら、就業規則が必要でしょう。

 

<三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法119条〕

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

たとえば、ある会社の正社員の所定労働日数が週4日で、1日の所定労働時間が6時間ならば、1週間の所定労働時間は24時間です。すると、どの日も2時間以上の残業はありえず、どの週も16時間以上の残業はありえないというのなら、三六協定は不要です。なぜなら、この協定は法定労働時間を超える場合に必要となるので、所定労働時間を超える場合でも法定労働時間以内なら必要がないということになるからです。

とはいえ、ほとんどの会社がそうであるように、18時間週5日勤務の社員がいる会社では、三六協定書の作成と労基署への届出は必須です。

 

2016.08.18.

<両者の優劣>

ノーワーク・ノーペイの原則は、法令には直接の根拠がないものの、労働契約の性質から当然のこととして認められています。つまり、労働者が働かなければ雇う側に賃金の支払義務は発生しないということです。

ところがこの原則をそのまま就業規則にとり入れず、たとえば生理休暇を有給にするとか、欠勤控除をしないルールとすることは、労働者に有利となりますので、労働基準法などに違反するものではありません。

そして就業規則に、法令の基準よりも労働者に有利な内容を定めた場合には、法令の基準を理由に労働条件を低下させることが許されなくなります。〔労働基準法12項〕

以上のことから、就業規則が優先されるということになります。

 

<就業規則に定めた基準の引き下げ>

しかし、一度就業規則に定めたなら、その条件を引き上げることはできても、引き下げることは一切許されないというのでは困ります。

なぜなら、その規定が時代に合わなくなったり、運用が不合理になったりということは現実に起こりうるからです。

たとえば就業規則上、生理休暇を有給にして、その取得にあたっては事後の口頭による申し出でもOKというルールだったとします。

年々生理休暇の取得が増え、今では月平均1人あたり10日も使われているとしたらどうでしょう。50代、60代の女性でも月5日程度なら普通に生理休暇が認められているとしたら、男性社員との間で不平等が生じているといえるでしょう。

この場合、休暇の取得にあたって業務に耐えないという医師の証明を必要とするとか、口頭ではなく申請書を提出するとか、合理的な範囲内での制約を検討する余地はあるでしょう。

同様にたとえば就業規則上、欠勤控除がない職場で遅刻・早退・欠勤が多かったらどうでしょう。まじめに皆勤している社員は、士気が低下してしまうかもしれません。

こうした状況に陥るのを防ぐため、新たに欠勤控除の規定を設けることも検討する余地はあるでしょう。

 

<不利益変更のルール>

とはいえ、会社の都合で自由に就業規則を変更できるわけではありません。

使用者は原則として、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。〔労働契約法9条〕

たしかに、就業規則を労働者に不利益に変更するのであれば、ひとり一人にきちんと説明したうえで、合意を得るのが理想でしょう。

そうもいかない場合であれば、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが客観的に認められることが必要です。〔労働契約法10条〕

この場合であっても、労働者にもれなく説明し、期間的な余裕をもって変更したいものです。

 

2016.08.09.

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法120条1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。つまり、生理なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるわけです。

 

<実態としては>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、業務に支障が出たり、女性の当然の権利だから別に遠慮は要らないのだという態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

さらに、偶発的なことではありますが、女性上司がお見舞いに行ったら不在で、翌日に確認したら「入院していた」と言っていたが、その事実はなく、遊びに行っていたことが判明したというケースでは、事前事後のウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<結論として>

生理休暇をとった事実で、昇格、昇給、賞与支給にあたっての評価を下げることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

こうしたことから、生理休暇の濫用ばかりにとらわれることなく、適正な評価制度の正しい運用こそ、望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2016.05.30.

<就業規則の改定>

従業員の一人ひとりに就業規則の冊子が配付されている会社で、いつの間にか内容が改定されていて、改定後の就業規則は配付されなかったということがあります。

その会社の責任者が一念発起して就業規則の冊子を作って配ったものの、その後は経費の関係で改定版までは作らなかったのです。

この場合に、改定後の就業規則は有効なのでしょうか。

 

<就業規則の変更手続き>

就業規則を変更する場合の手順は次のようになります。

・変更内容の社内決裁

・変更後の就業規則の作成

・変更した就業規則の周知(しゅうち)

・労働者代表などによる意見書の作成

・就業規則変更届の作成

・所轄労働基準監督署への届出

 

<周知とは?>

ここで、周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

ところが、ここでの「周知」には、具体的内容について従業員全員に教えておくというほどの強い意味はありません。

 

<周知の方法は?>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

 

<周知しないとどうなる?>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

<結論として>

会社が改定後の就業規則を周知したのに、たまたま気づかない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しても有効です。

しかし、会社が改定後の就業規則を周知しなかったので、これを知らない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しては無効です。たとえ、労働基準監督署への届出が済んでいても、その従業員に対しては無効なのです。

 

2016.05.16.