副業・兼業を制限する基準

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2020/08/06|1,543文字

 

<副業・兼業の推進>

平成29(2017)年3月に政府から「働き方改革実行計画」が示されました。

これを受けて、厚生労働省「柔軟な働き方に関する検討会」で雇用型テレワーク、自営型(非雇用型)テレワーク、副業・兼業に関する新たなガイドライン案、モデル就業規則改定案等が検討され、平成31(2019)年3月版のモデル就業規則は、次のように修正されています。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<実務的な対応>

企業が副業・兼業を禁止・制限する根拠は、就業規則に規定することになりますが、その内容が不明確だとトラブルの元になってしまいます。

また、定期的な研修などで繰り返し説明する必要があります。

問題は、モデル就業規則のような規定を設けたとしても、副業・兼業を禁止・制限する基準が必ずしも客観的・具体的に明確にならない点にあります。

令和2(2020)年7月30日、労働政策審議会労働条件分科会が開催され、副業・兼業の労働時間管理に関する検討が行われました。

この中で、就業規則に規定するなどして、明確にしておくべき事項として、以下のものが挙げられています。

 

<安全配慮義務の観点から>

・長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について、労働者の安全や健康に支障をもたらさないか確認すること。

・副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること。

 

<秘密保持のために>

・業務上の秘密が漏洩する場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密の漏洩が生じないよう注意喚起すること。

 

<競業避止義務の観点から>

・競業により、自社の正当な利益を害する場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業を行う労働者に対して、自社の正当な利益を害することがないよう注意喚起すること。

・他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと。

 

<誠実義務の観点から>

・自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業の届出等の際に、それらのおそれがないか確認すること。

 

<原則と例外>

労働者には、職業選択の自由がありますから、原則として副業・兼業が自由にできます。

一方で、企業には営業の自由がありますから、原則として、営業に支障をきたす事情を排除する権利があります。

どちらも、日本国憲法第22条第1項で保障されている権利です。

両者が対立する局面では、2つの人権を調整しなければなりません。

こうして、労働者は本業に支障をきたさない範囲で、副業・兼業を自由に行うことができるという結論になるのです。

副業・兼業の制限は、あくまでも例外的なものであることを念頭に置いて、基準を考えていかなければなりません。

 

解決社労士