取締役の勤務時間・休日・休暇

2023/07/11|1,067文字

 

<委任契約>

取締役は、会社との間で委任契約を結んでおり、会社経営や業務執行の意思決定を担当します。

 

【会社法第330条:株式会社と役員等との関係】

株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

【民法第643条:委任】

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

一般の従業員は、会社との間で労働契約(雇用契約)を結んでいますから、労働者として労働基準法などによる保護を受けています。

しかし、取締役は労働者ではありませんから、労働基準法など労働者を保護する法令の適用がないのです。

また、会社の「就業規則」も適用されず、「役員規程」に基づいて経営に携わることになりますが、この「役員規程」は「就業規則」と異なり、所轄の労働基準監督署長への届出も不要です。

 

<就業時間>

取締役は、従業員のように始業・終業の時刻が決められることなく、建前としては、365日24時間態勢で経営に携わる立場です。

会社に何かあれば、日時に関係なく対応を求められることになります。

したがって、早出や残業という概念もありません。

 

<休日・休暇>

取締役の場合、休日についても、「就業規則」が適用されません。

委任契約ですから、いつ働くか、いつ休むかは、取締役自身の判断で行うことになります。

年次有給休暇などの休暇もありません。

慶弔休暇について、「役員規程」に規定が置かれることもありますが、本来は必要の無いことです。

 

<兼務役員>

取締役が、部長や工場長などを兼務することがあります。

この場合、部長や工場長は、労働者の立場で行うことになりますから、労働基準法も「就業規則」も適用されることになります。

ただし、労働者としての立場であっても、ほとんどの場合には、管理監督者の立場ですから、厳密な労働時間管理は行われず、残業代も支給されないことが多いでしょう。

ただし、労働安全衛生法によって、労働時間の記録と集計は義務づけられています。

 

<名ばかり役員>

労働基準法などの適用を避けるため、従業員を取締役として登記し、実際には一般の従業員に近い役割と権限しか与えないという、不当な扱いが行われることがあります。

しかし、労働基準法などの労働法の適用では、形式ではなく実質が基準とされます。

たとえ、株主総会で取締役に選任され登記されても、その実質が従業員であれば、労働基準法などが適用されます。

年次有給休暇も付与されますし、労働時間の管理が行われていれば、残業手当も支給されなければならないのです。

 

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