2024/07/21|1,105文字
<残業時間の繰越>
建設業で働くある男性が、月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。
この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。
本来、適法な三六協定を交わし、かつ、所轄の労働基準監督署長への届出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は、たとえ1分間でも違法です。
<違法な慣習の発生メカニズム>
社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた!」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。
これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。
もし「いいこと考えた!」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえない可能性があります。
<違法な慣習の例>
違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。
所轄の労働基準監督署は就業規則の届を受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。
違法な慣習としては、次のような例があります。
・正社員には年次有給休暇を取得させない。
・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。
・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。
・妊娠したら退職するルールがある。
・日給制、年俸制で残業手当を支給しない。
・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。
・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。
・遅刻に対する「罰金」の定めがある。
・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。
こうした会社の典型的な特徴としては、入社にあたって労働条件通知書を交付していないという点があります。
入社して、1か月経過しても交付されない場合には、従業員から「まだ労働条件通知書をもらっていません」と確認してみて、それでも交付されないようなら転職先を探しながら働くと良いでしょう。
<実務の視点から>
今日までは何事も起こらなくても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。
たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、育児介護休業法の制度を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。
面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。