退職勧奨の許容範囲

2023/10/06|968文字

 

<退職勧奨の法的性質>

新人を採用する場合には、会社が求人広告を出し、求職者が応募します。

そして、採用面接などを経て会社が採用を決めます。

この流れの中では、求職者の応募が労働契約の申し込みであり、会社の採用決定が労働契約の申し込みに対する承諾です。

こうして労働契約が成立します。

求人広告は、労働契約の申し込みを誘っている広告で、法的には「申し込みの誘因」とされます。

同じように、希望退職者を募って社内に告知し、退職希望者が退職の申し出をして、会社が承諾すれば、労働契約の合意解除による退職が成立します。

このとき、希望退職者募集の社内告知は、退職の申し出を誘っているので、法的には「申し込みの誘因」とされます。

この退職の申し出を誘う相手が多数の社員ではなく個人であれば、退職勧奨ということになります。

退職勧奨は、求人広告と同じように、相手が申し込むかどうかが完全に自由です。

 

<退職勧奨が問題となるケース>

このように退職勧奨は、本来、会社が自由に行えるはずのものですが、社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効とされたり、会社から退職勧奨を受けた社員に対する慰謝料の支払い義務が発生したりします。

 

<安全な退職勧奨>

退職が無効とされたり、慰謝料が発生したりのリスクが無い退職勧奨とは、次のようなものです。

・1人の社員に対して2名で行う(1対1で退職勧奨を行うのは、セクハラなどを主張される恐れがあるので避けます)。

・パワハラ、セクハラなど、人格を傷つける発言はしない。

・大声を出したり、机をたたいたりしない。脅さない。だまさない。

・長時間行わない。何度も繰り返さない。

・きっぱりと断られたら、それ以上の退職勧奨は行わない。

・他人に話を聞かれる場所で行わない。明るく窓のある個室が望ましい。

・家族など本人以外の人に働きかけない。

結局、本人の自由な本心による退職の申し出が必要なので、後になってから本心ではなかったとか、脅された、だまされたなどの主張がありえない退職勧奨であることが必要となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社としては何とかして辞めてもらう必要を感じていて、退職勧奨にあたる社員も熱くなりがちです。

冷静さを求められる局面でこそ、信頼できる社労士にご相談いただきたいものです。

 

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