労働条件の明確化は法的義務

2023/09/24|1,326文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で1人につき1回30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

30万円単位の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

 

<労働条件明示の理由>

労働条件の明示が労働基準法に規定されているのはなぜでしょうか。

労働契約は、使用者の「働いてください。給料を支払います」という意思表示と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思表示が合致することによって成立します。

しかし、具体的な労働条件が決まっていなければ、使用者からアルバイトに「明日は私の自宅のトイレと浴室の掃除をしてもらいます」ということも、絶対に無いとは言えません。

こうなると、労働者ではなくて奴隷扱いになりかねません。

もちろん、これは極端なたとえ話ですが、労働基準法が明示を義務付ける労働条件は、すべて限定されないと労働者が困る事項ばかりです。

 

<労働条件が不明確だと下がる定着率>

労働条件が不明確であれば、労働者は不安を感じ、退職しやすい理由となります。

定着率の低い会社は、労働条件があやふやになっていることが多いものです。

不安の内容としては、次のようなものが挙げられます。

●契約期間、契約更新の有無

これが不明確だと、次の仕事を探す必要性も、探し始めて大丈夫かどうかもわかりません。

契約期間の終了が近づくと、労働者は不安ですし、中には次の仕事を見つけて自分から退職する人も出てきます。

●就業の場所

これが不明確だと、どこで働くのか、勤務地が変わることがあるのか、不安になります。

例外的に転勤する人が出た場合、転勤を恐れて退職する人も出てきます。

●業務内容

これが不明確だと、仕事の範囲がわかりません。

「こんな仕事までする約束ではなかった」と感じた人は退職を考えます。

●出勤日と始業終業時刻

ただ単に「シフト制」とするなど、不明確になっていると私生活との調整がむずかしくなります。

また、どれだけ働いて、どれだけの収入が得られるのかもわからないのでは、勤務時間の安定した仕事を求めて退職するのは仕方のないことです。

この状態だと、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

つまり、「うちは有給休暇を取らせないよ」と自白していることにもなります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

実際、その日によって勤務時間帯が変わるなど、労働条件をどのように明示すれば良いのか迷うケースもあります。

労働条件が良くわからないために、新人が定着しないのでは、経費、時間、労力、精神力のムダです。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

今は、新型コロナウイルス感染症関連で、助成金が話題となっています。

元々の労働条件が書面で明確化されていないのに、「従業員を休ませた」という証明はできません。

労働条件の明示は、助成金の受給にも大きな役割を果たすのです。

 

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