2023/06/23|1,054文字
<本来は自由な身だしなみ>
髪型や服装などの自由については、憲法第13条が根拠とされます。
【日本国憲法】
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 |
「個人として尊重される」のですから、各個人の個性が尊重されるわけです。
また、個人的事柄について、公権力(国や学校など)から干渉されることなく、自ら決定することができる権利として自己決定権が認められています。
そして、髪型、髪の色、ひげ、アクセサリー、服装などを決定する自由も、個人的事柄について自ら決定することですから、自己決定権として保障されていることになります。
<雇用契約による制約>
ただ、こうした本来の自由も、会社と雇用契約を交わした従業員については、雇用契約に定められた義務を果たすために必要な範囲で、制約を受けることがあります。
会社側としては、男性の口ひげ、女性の明るい髪色、ネイルアートなど、職場にふさわしくないと思われるような身だしなみの従業員に対しては、これを規制したいと考えたくなります。
具体的には、就業規則、内規、運用ルール、通達などで、身だしなみについての基準を示し、規制をかけていくことになります。
<実害のある場合>
長い髪が機械に巻き込まれる恐れがある、高いヒールが転倒事故につながる恐れがあるなど、従業員自身の安全を確保する必要がある場合に、合理的な範囲内で規制することは許されます。
また、付け爪、ピアス、イヤリングなど、食品に混入する恐れがあるので、作業中は外しておくなどのルールにも合理性があります。
さらに、公共性が強い事業や、お客様の信用を第一に考えるべき業種・職種では、企業経営の必要性やお客様の心情などを踏まえ、一段上の規制が許されることもあります。
職業選択の自由(憲法第22条第1項)がある中で、従業員はその会社を選び、現在の業務に就きうることを包括的に承諾しているわけですから、合理的な範囲内で規制に服する義務を負っているわけです。
<定期的な見直し>
たとえば、お客様から特定の従業員の身だしなみについてクレームがあって、一定の身だしなみを禁止する規定を設けたとします。
その規定は、その時点では妥当であったとしても、その後も正当性を維持し続けるとは限りません。
就業規則一般にいえることですが、定期的にルールの妥当性をチェックし、社会の認識に沿った内容へと改善していくことが求められます。