離職理由の変更は事実関係の変化があったとき、誤りを修正するときに可能です。労使の合意で事実に反する変更はできません

2024/11/29|1,380文字

 

<離職理由の重要性>

離職者が失業手当(雇用保険の基本手当)を受給するためには、事業主が雇用保険の脱退(資格喪失)手続をするとともに、離職証明書(離職票)の作成手続をする必要があります。

基本手当の受給開始日や受給期間は、離職理由によって異なりますから、この離職理由が重要な意味を持ちます。

 

<離職理由の判断手続>

手続の流れとしては、まず事業主が会社所轄のハローワークに離職証明書を提出します。

事業主は、離職証明書に離職理由を記載しますが、離職理由を裏付ける客観的資料により、所轄のハローワークが確認することになっています。

そして離職票は、離職証明書と3枚綴りのセットになっていて、一部が複写式になっています。

離職者は、会社を経由して離職票を受領することになります。

さらに離職者は、この離職票に離職理由を記載して、離職者の居住地を基準とした管轄のハローワークに提出します。

ここでも、事業主の記載している離職理由が、客観的資料により確認されます。

このとき、離職者が異議を唱えなければ、事業主の記載した離職理由が正しい離職理由であると判断されます。

しかし、離職者が異議を唱えていれば、離職者の離職理由を裏付ける客観的資料により、管轄のハローワークが離職理由を確認します。

管轄のハローワークは必要に応じ、事業主と離職者から聴取し、最終的にはハローワークの所長が離職理由を判断します。

長くなりましたが、これが離職理由の原則的な判断手続です。

 

<事実の変化による離職理由の変更>

ここでは、単純化のために、離職理由を会社都合・自己都合に集約して考えます。

ある従業員が、会社都合により3月末で普通解雇される予定だったところ、その従業員の家族の都合で急遽2月下旬に転居することになったため、自己都合により2月末で退職することになったとします。

この場合には、事実の変化により、退職日が1か月繰り上がるとともに、離職理由も変更されたことになります。

 

<判断の変化による離職理由の変更>

従業員から事業主に対して、長時間労働による健康不安を理由に退職の申し出をしたとします。

そして、事業主も従業員も自己都合であるとして離職証明書(離職票)の作成手続に入ったとします。

しかし、3か月以上にわたって月の法定時間外労働が45時間を超えていた場合などは、会社都合と判断されることになっていますので、事業主か従業員が途中で気づき、あるいはハローワーク主導で会社都合に変更されることがあります。

 

<合意による離職理由の変更>

長年会社に尽くした従業員から退職の申し出があり、事業主が「本当は自己都合だが感謝の印として会社都合にしてあげよう」と考えて手続すると、不正受給に加担することになりますから違法です。

たとえ当事者が合意しても、事実と異なる離職理由での手続は許されないのです。

しかし、労働局でのあっせんなど、個別労働紛争解決制度を利用した結果作成される「和解書」などの中で行われる離職理由の合意は、あっせん委員が具体的な事実関係を確認し、事実に基づいて「和解書」が作成されるため違法ではありません。

この場合には、申立人と被申立人とで離職理由についての意見が分かれていたところ、誤った判断をしていた側の勘違いが是正されて、正しい離職理由での合意が形成されているので、不正が回避されたことになるのです。

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