2024/11/30|1,074文字
<支払約束や慣行が無い場合>
退職金の支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定が無く、支給する慣行も無いのであれば、雇い主側に支払の義務はありません。
しかし規定が無くても、退職金を支給する慣行があれば、その慣行を就業規則や労働条件通知書などに規定することを怠っているだけですから、規定がある場合と同様に支払い義務が発生します。
<対象者が限定されている場合>
就業規則などに、「勤続3年を超える正社員に支給する」という規定があれば、勤続3年以下の正社員に支給する必要はありません。
しかし、パート社員など非正規社員に支給する必要性には注意が必要です。
まず、正社員用の就業規則しか無い、就業規則に正社員の明確な定義が無いなどの不備があれば、本人からの請求によって支払わざるを得ないこともあります。
また、令和3(2021)年4月から同一労働同一賃金が全面施行されていますので、賞与支給の趣旨・目的が明確で、正社員以外に支給しない客観的に合理的な理由があるというのでなければ、会社が非正規社員から、特に退職後に訴えられるリスクがあります。
この場合には、不払残業代、パワハラに対する慰謝料、年次有給休暇を取得させなかったことに対する損害賠償など、すべて合わせて請求されるでしょう。
少なくとも、就業規則や労働条件通知書は、法改正を踏まえ社会保険労務士(社労士)のチェックを受けておくことをお勧めします。
<不支給の例外規定がある場合>
退職金の不支給について、就業規則や労働条件通知書などに規定があって、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当な場合には、例外的に不支給とすることが許される場合もあります。
「規定さえあれば不支給で構わない」ということではありません。
「会社の承諾なく退職した者には退職金を支給しない」という規定は、その承諾が会社の主観的な判断ですから、客観的に合理的とはいえないでしょう。
「懲戒解雇の場合は退職金を支給しない」という規定があっても、必ずしも不支給が許されるわけではありません。
退職金を不支給としても良いのは「労働者のそれまでの勤続における功労を抹消するほどの信義に反する行為」があった場合に限られます。これが最高裁の判断です。
それほどの事情があったわけではないのなら、懲戒解雇そのものが不当解雇となり無効である可能性があります。
<実務の視点から>
同一労働同一賃金への対応は単純ではありません。
本当に退職金を支払わなくても大丈夫かといった専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。