2022年 9月

2022/09/30|794文字

 

<派遣会社の義務>

派遣会社は、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)に基づき、ある派遣先との間で労働者派遣契約が打ち切られたとしても、派遣先と協力しながら、派遣労働者の新たな就業先の確保を図り、それができない場合は解雇せず休業等を行って、雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当を支払うことになっています

 

<休業手当の支払>

使用者が新たな就業機会(仕事)を確保できず、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させる場合には、使用者(派遣会社)には休業手当を支払う義務があります。〔労働基準法第26条〕

ここで「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかどうかの判断は、派遣会社について行われます。

派遣先の事業場が、天災事変等の不可抗力によって操業できないため、派遣されている労働者をその派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないとは必ずしもいえず、派遣会社について、その労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかが判断されます。

 

<雇用調整助成金>

大雨の影響に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた派遣会社が、派遣労働者の雇用維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金を活用できることがあります。

 

<雇用保険の特例措置>

大雨などにより、被災地内にある派遣先が直接的な被害を受けたことに伴い、派遣先が事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた人(雇用予約がある場合を含む)については、失業給付を受給できる特別措置の対象となることがあります。

大雨の影響で、ハローワークに行けない、求職活動ができない、退職した会社と連絡が取れないなどの事情がある場合には、とりあえずハローワークに電話で相談することをお勧めします。

 

2022/09/29|1,445文字

 

<行政指導>

行政指導の定義は、行政手続法第2条第6号に次のように規定されています。

 

【行政指導】

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 

役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように、または行わないように、具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導です。

特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすのは「処分」であって、行政指導ではありません。

役所の行為が、処分か行政指導かは、法令の規定を読んでも判別が困難なものもあります。

ただ、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか)を明確に示さなければならないことになっています。〔行政手続法第35条第1項〕

判断に迷うことがあれば、その行為を行っている各役所に確認するのが確実です。

 

<行政指導の効力>

行政指導には法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を求めるものです。

したがって、よく言われるように、行政指導を受けた者について、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。

また、行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。〔行政手続法第32条第2項〕

 

<行政指導の拒否>

たとえば、申請者の申請に対して、役所が自主的に申請を取り下げるよう、また、申請の内容を変更するようしつこく行政指導することもあります。

こうした場合、申請者がその行政指導に従わないことを明らかにしたときは、役所は、これに反して、行政指導を続け、その行政指導に従うまでは申請の審査を保留するなど、行政指導に従わざるを得ないようにさせることによって、申請者の権利の行使を妨げてはならないことになっています。〔行政手続法第33条〕

結局、行政指導を拒否して申請書を提出すれば、役所には審査を開始する義務が生じることになりますので、行政指導に従う意思がない場合には、それを役所に対して明確に示せば行政指導を免れることができます。

 

<労働基準監督署による行政指導>

労働基準監督署は、労働基準法などの法律に基づいて、定期的にあるいは従業員からの申告などにより、事業場(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。

その結果、法違反が認められた場合には、事業主などに対しその是正を指導します。

通常は、「是正勧告書」という文書による指導です。

これも行政指導ですから、事業主などの自主的な協力を求めていることになります。

もし、「是正勧告書」の内容が誤りであると判断したなら、事業主などは従わないこともできます。

しかし、事業場から是正・改善報告が提出されない場合には、労働基準監督署はこれを放置せず、再度の調査・確認と指導を行います。

こうして、重大・悪質な事案については、書類送検され罰則が適用される場合もあります。

同じ行政指導であっても、違法性を指摘する内容が含まれるものについては、専門家に相談したうえで慎重に対応することを強くお勧めします。

 

2022/09/28|883文字

 

<時効消滅の制度>

賃金や退職金の請求権は5年間で時効消滅します。〔労働基準法第115条〕

ただし、現在は経過措置により、賃金の請求権が3年間で時効消滅することになっています。〔労働基準法第115条の2〕

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないのに、何ら指摘せず放置したまま3年間が経過して会社から時効だと言われれば、その給与は請求できなくなります。

これは、「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の制度の趣旨に沿ったものです。

この場合、支払義務のある側からすれば、一方的に得をすることになり道義的な違和感を生ずることもあります。

ですから、時効の利益を受ける者が、時効であることを主張することによってその効果が発生します。

この主張を時効の援用(えんよう)といいます。〔民法第145条〕

 

<時効の中断>

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないので社長に確認したとします。

そして、社長から「ごめん、少し待って」といわれて、しばらく待ってから催促することを繰り返していたら、いつの間にか3年過ぎたので請求できなくなったというのは道義に反します。

そこで、社員の側から請求の意思が明確にされた場合や、会社の側から支払の意思が明確にされた場合には、時効期間の進行がリセットされます。

これを時効の中断といいます。

時効の中断には、請求(裁判上の請求、裁判外の請求)、差押え・仮差押え・仮処分、債務者の承認の3つがあります。〔民法第147条〕

もし給与の未払いがずっと続いて裁判になったとしたら「ときどき催促していました」といっても証拠がなければ負けてしまいます。

ですから、内容証明郵便などによる催促が必要になります。

しかも、催促というのは時効中断の効力が制限されていて、6か月以内に裁判で請求するなど一段突っ込んだアクションをしないと、効力を生じないことになっています。〔民法第153条〕

お勧めなのは「少しでもいいから支払ってください」と催促して、振り込んでもらうことです。

これも「債務者の承認」となって時効中断の効力があります。

 

2022/09/27|1,269文字

 

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法第34条第1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。

また、8時間勤務で全く残業が無いのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間を削ってまで働きたいという人もいます。

しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で法定以下に短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。

実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。

ただ、そうした条件で採用を希望する人は稀でしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。

喫煙者が喫煙室で休憩を取る場合などは、この方が助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与え方はできません。

そこは世間一般の常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の本来の趣旨に沿って考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法第34条第2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。

書類の作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはつまらないことです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法第34条第3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。

待機時間は労働時間です。

また、「お客様の少ない時間帯に様子を見て60分の休憩をとる」というルールは無効です。

休憩が取れなくなる可能性がありますし、実質的に見て待機時間が発生してしまうでしょう。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できる限りは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2022/09/26|628文字

 

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(相当因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<労災とはならないケガ>

・労働者が勤務時間帯に、仕事とは関係のないことを行ったり、仕事の範囲を超える勝手なことをしていて、それが原因でケガをした場合。

・労働者がわざとケガをした場合。

・労働者がプライベートな恨みなどを理由に第三者から暴行を受けてケガをした場合。

・大地震や台風など自然災害によってケガをした場合。ただし、落雷しやすい現場で作業していて落雷でやけどを負うなど、立地条件や作業環境などによっては労災と認められる場合があります。

・休憩時間や勤務の前後など、実際に業務に従事していない時間帯にケガをして、しかも事業場の施設・設備や管理状況に原因がない場合。ただし、トイレに行くなどの生理的行為については、事業主の支配下で業務に付随する行為として取り扱われますので、このときに生じたケガは労災となります。

 

2022/09/25|775文字

 

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者自身の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<業務上の疾病>

業務との間に一般的な原因と結果の関係にある疾病(病気)は、労災保険給付の対象となります。

業務上疾病は、必ずしも労働者が事業主の支配下で発症することを条件とせず、事業主の支配下で有害な原因にさらされたことによって発症すれば認められます。

たとえば、ある労働者が勤務中に心臓病を発症しても、その労働者の業務の中に原因が見当たらなければ、業務と疾病との間に一般的な原因と結果の関係は成立しません。

反対に、勤務時間外に発症した場合でも、その労働者の業務の中に有害な原因があって発症したものであれば、業務上の疾病とされます。

 

<業務上の疾病とされる3つの条件>

・その労働者の業務の中に有害な原因があったこと。例として、化学物質、身体に過度の負担がかかる作業、病原体など。

・健康障害を起こすだけの原因にさらされたこと。つまり、有害な原因の強さ、量、回数、期間が健康障害を起こしうるものだったこと。

・発症の原因から健康障害の結果が発生するまでの経過が、医学的に見て不自然ではないこと。中には、労働者が有害な原因に接してから、相当な長期間を経過した後に健康障害が発生するパターンも認められます。

 

2022/09/24|1,406文字

 

<基本はプライベート>

多額の借金を抱えた社員が会社で働いていると、それだけで上司や同僚、人事部門の社員たちは大きな不安を覚えます。

それでも、借金というのは、会社からの借り入れでない限り、基本的にはプライベートなことです。

たしかに、プライベートなことであっても、会社の利益を害し信用を傷つける行為であれば、懲戒処分の対象となることはあります。

しかし、借金が多いことが発覚したからといって、それだけで解雇を検討するというようなことはできないのです。

以下、順を追って検討してみます。

 

<人事異動の検討>

多額の借金を抱えた社員が、お金を直接扱える業務に携わるのは好ましくありません。

人員配置の大原則である適材適所の観点から、経理、会計、財務、店舗のレジなどへの異動は避けなければなりません。

また、借金が発覚したときに、こうした業務に携わっていたならば、早期に別の業務に異動させることが望ましいといえます。

しかし、借金があることを理由に、降格、降職などを行うことは、人事権の濫用となり、その効果が否定される場合もあるでしょう。

 

<督促で会社に迷惑がかかっている場合>

借金の相手がサラ金業者などの場合には、会社にまで電話やファックスでの督促や嫌がらせがあったりもします。

時には、サラ金業者の従業員が直接、職場に押しかけてくるようなこともあります。

しかし、これは社員が借金したことの結果ではあっても、社員が違法・不当なことを行っているわけではありません。

むしろ、サラ金業者が貸金業法に違反する方法で督促を行い、嫌がらせまで行っているのです。

こうしたことで戸惑って、懲戒処分や解雇を検討するのは的外れです。

明らかに、懲戒権や解雇権の濫用となってしまいます。〔労働契約法第15条、第16条〕

 

<給与の差押が発生した場合>

債権者が裁判所で手続きをして、裁判所から会社に給与債権差押の命令が届くこともあります。

会社は、この命令に素直に従わなければなりません。

給与の一部を、指定された方法で支払うことになります。

このことによって、会社側に余計な事務手続きの手間は発生しますが、やはり、懲戒処分や解雇を検討するほどの大きな負担ではありません。

 

<破産した場合>

社員が破産しても、会社の業務に支障は出ません。

ちなみに、個人破産の場合、破産手続きをするのに十分な資力が無いなどの事情により、破産手続きの開始と共に終了する「同時廃止」となることが多いのです。〔破産法第216条第1項〕

この場合も、懲戒処分や解雇を検討すべきではありません。

 

<懲戒や解雇を考えるべき場合>

多額の借金を抱えた社員が、同僚や上司から借金をして具体的なトラブルに発展したような場合、あるいは会社の金品を横領したような場合には、当然に懲戒処分や解雇を検討しなければなりません。

しかし、これは借金を抱えた社員に限定されることではなく、すべての社員に共通することです。

 

<上司による指導>

多額の借金を抱えた社員が、その精神的な負担から、体調を崩して遅刻しがちになったり、業務に集中できなくなったりする恐れは大きいといえます。

上司としては、それをただ人事考課で評価すれば済むというのではなく、面談の機会を持ち、現在の生活ぶりや不安、借金を抱えるに至った事情など、本人から自発的に話してもらえるよう働きかけ、注意すべきところは注意する一方で、支えになってやる必要があるでしょう。

 

2022/09/23|1,566文字

 

<学習性無力感>

「学習性無力感」というのは、もともと心理学で「抵抗したり回避したりすることができないストレス下に置かれているうちに、そのストレスから逃れようとする行動を起こさなくなってしまう現象のこと」を言っていました。

今では、「自分の行動から期待する結果が得られないことを、何度も経験するうちに、何をしても無意味だと思うようになってしまい、たとえ結果が期待できる場面でも積極的に行動を起こさなくなってしまった状態」のことについても言われます。

 

<個人の学習性無力感>

職場で、ある従業員のやる気が見られない、向上心が感じられないということがあります。

職場では、たびたびストレスに直面しても、精神的に充実しているうちは、このストレスを乗り越えようと抵抗を示します。

しかし、ストレスに抵抗してみても、乗り越えることができなければ、さらに大きなストレスを感じることになります。

こうした体験を何度も繰り返していると、「結局、何をやっても無駄だ」と思うようになり、抵抗することをやめてしまいます。

この状態が学習性無力感です。

学習性無力感に陥った社員は、誰かに細かい指示を出してもらわないと、自発的に行動できなくなり、パフォーマンスが低下します。

これはまさに典型的な「指示待ち人間」の状態です。

 

<組織の学習性無力感>

新たに入社してきた従業員は、やる気に満ち、新鮮な目で物事をとらえ、さまざまなアイデアや意見を出すものです。

しかし、学習性無力感に陥ると、アイデアや意見を出さなくなります。

これは、自分が口出ししたところで、状況は変わらないと感じるようになったことによるものです。

組織内で発言する機会が減ると、その組織の改善や向上は期待できなくなります。

こうして発生した個人の学習性無力感は、組織のメンバーにも伝染します。

ある従業員が学習性無力感に陥ることで、その人のパフォーマンスが低下し、周囲の従業員がその穴を埋めることになります。

しかし、学習性無力感に陥る社員が一人ではなく、人数が増えてしまうと、フォローが必要となる業務が増えて、組織全体のパフォーマンスも低下します。

組織の全員が、「自分がいくら頑張ってみても、組織が今の状態から抜け出すことはできない」と感じ、組織の学習性無力感が発生します。

 

<全社的な学習性無力感>

職場では、ひとり一人のネガティブな言動が、周囲の社員にも悪影響を与えます。

たとえば先輩から「この会社では、いくら頑張っても評価されない」という話を聞かされた新人や後輩は、やる気をそがれることになります。

さらに、管理職の中に「頑張っても無駄」という共通認識が生じると、全社に学習性無力感が蔓延することになります。

 

<学習性無力感の発生原因>

学習性無力感の中心には「何をやってもムダ」という固定観念があります。

この固定観念は、周囲の人、特に影響力の強い上司や先輩から、次のような態度を取られることによって、植え付けられてしまいます。

・能力や言動の否定

・向上心、努力、意欲、責任感の否定

・小さなミスに対する叱責や軽蔑

・報連相に対する拒否的態度

これらは、パワハラと重なる部分も多いのですが、必ずしもパワハラ行為に限られません。

 

<学習性無力感の打開策>

当然ですが、全従業員にパワハラ教育を実施し、社内からパワハラを排除しなければなりません。

また、部下や後輩の人格を尊重する風土の醸成も必要です。

一方で、「失敗した従業員」「結果を出せなかった従業員」には、同じタスクを「成功させた従業員」「結果を出した従業員」の指導を受けさせます。

この中で、成功のポイントは、努力と能力の向上であることに気づいてもらわなければなりません。

さらに、管理職が「努力が報われない」と思わないように、適正な人事考課制度の運用も必要です。

 

2022/09/22|1,075文字

 

<労働基準法施行規則第32条>

休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法第34条第1項〕

その日の労働時間が6時間以下であれば、その日については休憩時間を与えないことができます。

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。

ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえません。

 

<法定の基準を上回る定め>

以上はすべて法定の基準ですから、就業規則や労働契約に法定の基準より多くの休憩を与える規定があれば、労働者に有利である限りその規定が優先されます。

たとえば、6時間勤務の労働者に昼休みを1時間与えるなどは、法定の基準を上回るものとなります。

ただし、「労働者に有利である限り」という部分は、慎重な判断が必要です。

たとえば、昼休みが4時間ある場合には、就業の場所のすぐ近くに自宅があって、帰宅してくつろげる労働者なら問題ありませんが、いたずらに拘束時間が増えるだけの労働者にとっては不利になることもあります。

こうしたときには、不利になる労働者についてのみ、規定の効力が認められないケースもありますので注意しましょう。

 

2022/09/21|482文字

 

下の表に示した端数処理は、賃金計算の便宜上の取り扱いとして、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則違反にならないとされています。〔昭和63年3月14日基発150号通達〕

これに反する社内ルールを定めて運用することはできません。

1か月の賃金支払い額 1か月の賃金支払い額に100円未満の端数が生じた場合 50円未満を切り捨てそれ以上を100円に切り上げる
1か月の賃金支払い額に1,000円未満の端数が生じた場合 翌月の賃金支払い日に繰り越す
1か月の労働時間数 時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間の合計に1時間未満の端数がある場合 30分未満の端数を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げる
1時間あたりの賃金額 1時間あたりの賃金額に1円未満の端数が生じた場合 50銭未満の端数を切り捨てそれ以上を1円に切り上げる
1時間あたりの割増賃金額 1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合
1か月の割増賃金総額 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額

日々の残業時間集計は、1分単位で行うのが正しいのであって、5分未満切り捨てなどは違法ということになります。

 

2022/09/20|1,177文字

 

<ケガをさせられた場合の追加の手続き>

通勤途上でひき逃げされたり、居酒屋でアルバイトをしていてお客様に殴られたり、休日に道を歩いていて自転車にぶつかられたりしてケガをすると、通常とは違う手続きが必要となります。

具体的には、労災では「第三者行為災害届」、私傷では「第三者行為による傷病届」という書類が必要になります。

 

<第三者行為>

保険には保険料の負担があって、負担した人やその関係者に給付があるわけです。

労災保険では会社が保険料を負担して、従業員が治療を受けると労災保険から給付が行われて、従業員は治療費を負担しなくても済みます。

健康保険では会社と従業員が保険料を折半して、従業員や扶養家族が治療を受けると健康保険から給付が行われて、治療費の3割を負担するだけで済みます。

ところが無関係な第三者からケガをさせられて、治療費に保険が使われると、ケガをさせた第三者は、治療費の負担が減ったり負担が無くなったりして得してしまうのです。

こうした不都合が起こらないように、保険者である政府や協会けんぽなどが、加害者に費用を負担させています。

 

<万一ケガをさせられたら>

可能な限りケガをさせた人に逃げられないようにしましょう。

周囲の人に助けを求めることもできます。

その場で示談してはいけません。

「大丈夫ですから、どうぞご心配なく」などと言ってしまうと、会社も手続きができなくて困ることになります。

大丈夫かどうかは、診察した医師の決めることです。

その場で治療など必要ないと感じても、冷静な判断が困難な状況であることを考えましょう。

相手の氏名と連絡先は確実に把握しなければなりません。

結果的に医師の診察を受ける必要すら無かったなら、その相手にその旨を連絡する必要があります。

また、なるべく正確な日時や場所、状況など記憶が新鮮なうちにメモを残しておきましょう。

そして、会社の労災保険や健康保険の手続き担当者に連絡して指示を仰ぎましょう。

 

<書類の内容>

交通事故の場合と、それ以外の場合とで内容が異なります。

しかし、共通する内容で主なものは、事故の発生状況を説明した書類、負傷原因の報告書、加害者と示談しませんという念書(万が一示談していたら示談書)、加害者からの損害賠償金の納付を確約する書類などです。

 

<書類作成ご担当のかたへ>

実際に書類を作成する会社の担当者は、被害者からの情報が頼りとなります。

すべての情報がそろっていても、慣れていないと書類の作成に数時間かかってしまいます。

必要な書式は、労働基準監督署や協会けんぽなどで入手できます。

このとき、ついでに必要な添付書類の確認をするとよいでしょう。

交通事故の場合には、警察に「交通事故証明書」の発行を依頼するのですが、手続きが遅れると人身事故でも物損扱いとなるなど不都合が起こります。

大変ですが落ち着いて急ぎましょう。

 

2022/09/19|2,447文字

 

<不当解雇>

解雇権の濫用となる場合には、会社側から労働者に解雇を通告しても、解雇が無効となり、その結果、労働契約は解消されず、賃金や賞与の支払い義務は継続しますし、労働者に精神的な損害を与えていれば、慰謝料請求の問題ともなります。

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<不当退職>

労働者から会社に退職(辞職)を申し出たとしても、すぐに退職の効果が発生するとは限りません。

すぐに退職の効果が発生する場合として、労働基準法には、明示された労働条件が事実と相違する場合の規定があります。〔第15条第2項〕

 

【労働条件の明示】

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

しかし、これがわざわざ規定されているということは、あくまでも例外であって、一般には、労働者から退職の意思を表明しても、すぐには退職の効果が発生せず、実際に退職の効果が発生するまでは、労働者は働く義務を免れないということです。

それにもかかわらず、職場を放棄してしまっては、債務不履行となりますし、場合によっては不法行為となることもありえます。

こうした状態を、ここでは「不当退職」と呼びたいと思います。

 

<急な退職でも通常は損害賠償の対象ではない>

労働者が急に退職したからといって、これを理由に、会社から労働者に対して損害賠償を請求できるわけではありません。

退職そのものは、違法でも不法でもないからです。

一般に、退職者が発生した場合でも、会社が代替要員を手配して支障が出ないようにします。

損害が発生することは稀なのです。

また、採用後すぐに退職した場合であっても、採用にかかった費用を、会社の損害と見ることはできません。

どれだけの費用をかけるかは会社の判断に任されていますから、労働者の意思が反映されてはいません。

勤続20年の社員が退職するにあたって、会社から採用時の費用を請求することが無いのと同様に、採用後すぐ退職した社員に対しても費用を請求することはできません。

法的には、退職と採用の費用との間に、相当な因果関係が無いと表現されます。

これらの事情は、退職者の後任を採用する場合の費用についても同じです。

 

<不当退職となりうるケース>

不当退職が発生しうるのは、労働者が辞めたつもりで、労働契約が解消していない場合です。

まず、無期雇用の労働者が会社に退職を申し出た場合、その後、2週間は労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 

さらに、有期労働契約の場合には、やむを得ない事由が無いのに辞職を申し出ても、本来の契約期間の間は労働契約が継続します。〔民法第628条〕

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

こうして、労働者が会社に対して辞職の意思を表明した後、労働契約が継続している間に出勤しなければ、労働者の債務不履行が発生しますから、「不当退職」となるわけです。

 

<債務不履行による損害の発生>

特殊技能をもった労働者を採用し、手作り商品の注文を受けていたのに、不当退職により必要な数量の商品が製造できなくなった場合には、少なくとも欠勤した間に製造出来たはずの商品が製造できなかったことによる損害は、明らかに発生しています。

この場合に、同様の特殊技能をもった労働者を容易に補充することは困難でしょうから、簡単に会社が代替要員を手配することはできないのです。

 

<不法行為による損害の発生>

結婚式場にウエディングケーキを運搬中の労働者が、突然行方をくらまし、会社に退職の意思を伝えたような場合には、単なる債務不履行を超えて、不法行為が発生しています。

労働者の故意または過失によって、結婚式の新郎新婦他、多くの人々に損害を与えていますし、会社の信用を喪失させています。

こうした場合には、懲戒解雇の対象ともなりうるわけですが、不法行為を理由として会社から労働者に損害賠償を求めることになるでしょう。

 

<損害額が算定しがたい場合>

不当退職によって損害が発生した場合に、不当退職と損害発生との間の因果関係が明らかであっても、会社が損害額を立証することが困難なケースは多いものです。

しかし民事訴訟法には、損害額の認定について次の規定がありますので、訴訟という手段を利用してでも賠償請求を行うべきだと考えます。

 

【損害額の認定】

第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 

2022/09/18|972文字

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

<優越的な関係の意味>

上記の1.で「優越的な関係」というのは、必ずしも直属の上司である、役職が上であるといったことに限りません。

正社員がパート社員に対して優越的な関係に立つのは、契約形態の違いによる権限と責任の違いが根拠となっています。

ベテランのパート社員が、新人の正社員に対して優越的な関係に立つのは、業務経験の豊富さによるものです。

この他、専門知識の多寡、パソコンスキルの巧拙、職場での人気なども「優越的な関係」の根拠となりえます。

また、社長一人に対して、多数の社員が詰め寄る場合のように、人数の優位性から優越的な関係に立つ場合もあります。

 

<パワハラを行う部下の事情>

パワハラ行為に走る部下の中には「パワハラというのは、上司から部下に対して行われるものであり、部下から上司に対してパワハラが成立することはない」と誤解している人がいます。

パワハラの成立要件(3要素)についての理解が不十分なわけです。

こうした従業員がいる職場では、パワハラ防止のための教育が不十分であるといえます。

管理職のみを対象としてパワハラ防止教育を行っただけでは、部下から上司へのパワハラを防止できないだけでなく、一般社員がパワハラではない行為をパワハラとして問題視してしまうことも多発しかねません。

 

<パワハラを受ける上司の事情>

たとえ社内にパワハラ相談窓口が設置されていたとしても、部下からのパワハラについて相談する人は稀でしょう。

なにしろ、その部下を指導する立場にあるのですから、部下に対してパワハラ行為がいけないことを認識させ、止めるよう指導できる建前です。

こうしたことから、管理職としての能力が不足していると思われるのが嫌で、相談できずにいることが多いのです。

 

<解決社労士の視点から>

年功序列的な昇進昇格や、360度評価を行っている職場では、部下から上司に対するパワハラが起こりやすいともいえます。

こうした職場では、全社員を対象とするパワハラ防止教育が必須となるでしょう。

 

2022/09/17|1,232文字

 

雇用保険と労災保険の保険料は、あわせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

ただし、建設の事業で賃金総額を正確に算定することが困難な場合には、請負金額に労務比率を掛けて保険料を算定します。

 

<年度更新>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕

したがって事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。

これが「年度更新」の手続きです。

また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付することとなっています。

 

<労働保険対象者の範囲>

労働保険の対象者ということは、労災保険の適用対象者と雇用保険の適用対象者ということになります。

その範囲は重なりますが、同じではありません。

労災保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・正社員、嘱託、契約社員、パート、アルバイト、日雇い、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、賃金を受けるすべての人が対象となります。

・代表権・業務執行権のある役員は対象外です。賃金ではなく報酬を受けています。

・事業主と同居している親族でも就労の実態が他の労働者と同じなら対象となります。就業規則が普通に適用されているなら対象となります。

雇用保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば原則として対象者です。雇い入れ通知書、労働条件通知書、雇用契約書などが基準となります。これらの書類が1つも無いのは、それ自体違法ですから注意しましょう。

・昼間に通学する学生は対象外です。

・65歳以上で新たに雇われた人は、法改正により対象者になりました。

複数の会社などで同時には雇用保険に入れません。主な賃金を受けているところで対象者となります。これには、65歳以上の特例による例外があります。

両方の保険に共通の注意点としては、次のものがあります。

・代表権も業務執行権も無く、役員報酬と賃金の両方を受け取っている役員は、賃金についてのみ計算対象となります。

・派遣社員は派遣元で保険に入ります。派遣先での手続きはありません。

・出向社員は賃金を支払っている会社などで雇用保険に入り、実際に勤務している会社などで労災保険に入って、そこでの料率が適用されます。出向先の会社は、年度更新のために出向元から賃金などのデータをもらう必要があります。

 

加入漏れがあると、その人の離職時に大変困ったことになります。

労働保険の対象者を間違えないようにしましょう。

 

2022/09/16|708文字

 

<年金関係法令の規定>

この法律において、「配偶者」、「夫」および「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。〔国民年金法第5条第7項、厚生年金保険法第3条第2項〕

つまり事実上夫婦であれば、国民年金・厚生年金のどちらでも、夫婦と同様に扱われるということです。

 

<事実婚(内縁)>

事実上の夫婦と認められるためには、婚姻届を出していないだけで実態は夫婦であるという事情が必要です。

まず形式的に、婚姻届を出そうと思えば出せること、つまり原則として、事実上の夫婦のどちらにも戸籍上の配偶者がいないことが必要です。

法律上の正式な配偶者がいれば、重ねて結婚することはできないからです。

また実質的に、お互いに結婚する意思をもって、夫婦としての共同生活を営み、生計を同じくしているという事実が必要です。

 

<実際の手続き>

法律上の夫婦とは異なり、住民票の写しなどで夫婦であることは確認できません。

それぞれに法律上の配偶者がいないことを示す書類と、同居の事実を示す書類を添付して、年金関係の手続きを行うことになります。

また、事実婚状態にありながら別居しているような場合には、たとえば遺族年金や加給年金では「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」という書式があって、これに記入のうえ第三者による証明を書いてもらう必要があります。

さらに事実婚状態にあって、勤め人である内縁の夫が、内縁の妻を扶養している場合には、会社を通じて国民年金の第3号被保険者とすることができ、保険料の免除を受けることもできるのですが、事実婚をどうしても会社に知られたくないために手続きできずにいるということもあります。

 

2022/09/15|972文字

 

<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

 

【法人の能力】

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

会社も法人です。

会社の中で働く人たちが相互に協力し合い、まるで1人の人間のように統一的に活動することによって、会社は目的を果たすことが可能となります。

このためには、社員間・部署間で報告・連絡・相談が適切に行われている必要があります。

 

<報連相が足りない社員>

報連相を密にして組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

ところが、報連相が滞ったり不足したりする社員がいます。

報告書の提出締切を守らなかったり、いい加減な報告書を提出して済ませたりしています。

 

<報連相不足に対する懲戒処分>

報連相に問題のある社員の多くは、業務の中で報連相の優先順位が低いのだと思われます。

上司が、本人に対して報連相を重視し優先順位を上げるように指導する必要があります。

最初は口頭による注意・指導を行い、それでも改善されない場合には、書面による注意を行います。

この書面には、就業規則の条文を示し、報連相を怠ることが就業規則違反であり、場合によっては懲戒処分の対象となりうることも記載しておくべきです。

前提として、就業規則を調えておく必要はあります。

 

<懲戒処分の対象とすべきではない報連相不足>

能力不足で報連相が上手くできない社員もいます。

他の業務はともかく、報告書の作成などが極端に苦手というタイプです。

この場合には、本人を戒めても効果が期待できません。

むしろ、技術的な側面もありますので、教育が大きな効果をもたらします。

しかし、安易に上司に指導を任せてしまうと、上司が「こんな報告書じゃダメだ」という拒絶の態度を示し、ともするとパワハラに及んでしまう恐れがあります。

人事部門が主体となって集合研修を行うのが効果的です。

 

2022/09/14|999文字

 

<常識的な解決>

たとえば、会社で20年以上使われてきた電卓を、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから、自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法第709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形の無いものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が弁償した場合も含まれます。

特に、労働者が故意に基づいて会社に損害を与えたのであれば、その責任は重く、会社から損害額の全額を労働者に請求できる場合もあります。

もっとも、この場合であっても、中古品を破損した場合に新品の代金を請求するようなことはできません。

ましてや、故意によらず過失によって損害が発生した場合には、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

会社は労働者の働きによって利益をあげていて、その利益のすべてを労働者に分配し尽くしているわけではありません。

損害についてだけ、労働者がすべて負担するというのは、あまりにも不公平です。

また、会社には危機管理の義務もありますから、これを怠っておいて、労働者に損害を押し付けるのもおかしいのです。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<損害額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に損害額の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法第24条第1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法第16条〕

これは物品の破損などに限られず、「遅刻1回につき罰金3,000円」などのルールを設けることも違法です。

 

2022/29/13|1,309文字

 

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

実際の就業規則でも、普通解雇について、中途採用と新卒採用とで別の規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

 

<新卒採用の雇用契約>

新卒採用は、相当長期にわたって雇用が継続することを予定して行われます。

また多くの場合、即戦力であることは期待されておらず、会社が一から教育を施して、必要な能力を身に着けさせることを予定しています。

この方が、会社の方針・風土に即した成長が期待できるので、会社にとっても都合が良いものです。

配属後の働きぶりを見て、適性の面で無理があるようならば、全く異なる部署への異動も検討すべきことになります。

 

<新卒採用の普通解雇>

このような雇用契約の性質から、会社が根気よく教育を行ったにもかかわらず、本人がどの部署でも能力を発揮できないような、極めて期待外れな場合でなければ普通解雇は困難です。

なぜなら、労働契約法第16条や就業規則の普通解雇の条件を満たすためには、会社側にかなりの努力が求められるからです。

 

<中途採用の雇用契約>

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことはなく、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<中途採用の普通解雇>

このように中途採用は、会社から新卒採用よりも高い期待を持たれています。

会社としては、会社に馴染むまである程度の期間はフォローするものの、予定した役割を果たしてくれなければ、期待外れになってしまい、普通解雇を検討せざるを得なくなります。

この点、新卒採用の場合よりも中途採用の方が、会社の解雇権は広く認められることになります。

 

<会社が心がけること>

このように中途採用と新卒採用とで普通解雇の有効要件が異なるのは、雇用契約の内容が異なるからです。

しかし、「常識的に」「暗黙の了解で」というのでは、雇用契約の内容があやふやになり、解雇を検討する際にはトラブルの発生が危惧されます。

特に中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

 

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は労働者に与えられた権利ですから、本来はその権利を使うかどうかが労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と労使協定によって計画的付与がされた日数は年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。

しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。

 

<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>

年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。

この理由はさまざまです。

休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。

反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。

こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。

この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。

義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。

 

<年次有給休暇取得率70%に向けて>

内閣府は「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしていました。

これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。

年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。

これらは、権利の侵害になるからです。

休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。

2022/09/11|1,195文字

 

<フリーランスの定義>

フリーランス(freelance)のフリー(free)は自由を意味し、ランス(lance)は槍を意味します。

中世のイタリアやフランスの傭兵部隊のシステムがイングランドに伝わり、傭兵がフリーランス(自由な槍)と呼ばれるようになったとされています。

特定の君主に仕えるのではなく、戦う理由と報酬に納得できれば、戦いに望む立場の人たちがフリーランスの語源です。

現代の日本でも、フリーランスという言葉が使われています。

しかし、これは法令上の用語ではないので、明確な定義がありません。

令和3(2021)年3月26日、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が合同で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定し公表しています。

この中で、「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととされています。

 

<労働基準法における「労働者性」の判断基準>

上記ガイドラインでも紹介されていますが、労働基準法第9条では、「労働者」を「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定しています。

そして労働者性は、使用従属性の有無で判断されます。

・労働が他人の指揮監督下において行われているか、つまり、他人に従属して労務を提供しているか。

・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか。

さらに使用従属性は、請負契約や委任契約といった形式的な契約形式にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、個別の事案ごとに総合的に判断されます。

 

<労働者性が認められるタイプのフリーランス>

以上のことから、次のような特性を備えたフリーランスは労働者に該当し、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法などの労働法が適用されますので、労働者としての権利が保障されていることについて注意が必要となります。

・発注者等から具体的な仕事の依頼や、業務に従事するよう指示があった場合などに、それを受けるか受けないかを受注者が自分で決めることができない。

・業務の内容や遂行方法について、発注者等から具体的な指揮命令を受けている。

・発注者等から、勤務場所と勤務時間が指定され、管理されている。

・受注者本人に代わって他の人が労務を提供することが認められていない。

・受注者が自分の判断によって補助者を使うことが認められていない。

・支払われる報酬の性格が、発注者等の指揮監督の下で一定時間労務を提供していることに対する対価と認められる。

・仕事に必要な機械、器具等を、発注者等が負担している。

・受注者の受け取る報酬の額が、発注者等に雇用されて同じような仕事をしている労働者と比較して著しく高額であるとはいえない。

・特定の発注者等への専属性が高いと認められる。

 

2022/09/10|1,636文字

 

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

2022/09/09|940文字

 

<労働安全衛生法>

労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置については、労働安全衛生法に詳細に規定されています。

各事業場では、この法律などに従い、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことや、職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが求められています。

 

<安全衛生管理体制>

労働安全衛生法では、業種や労働者数によって、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が義務付けられています。〔第10条等〕

また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場でも、業種により安全衛生推進者や衛生推進者の選任が義務付けられています〔第12条の2〕

会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

就業規則には、このことも規定しておくことが望ましいでしょう。

 

<受動喫煙の防止>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となりました。

これに先駆けて、すでに令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになっています。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

就業規則には、次のような規定を加えることになります。

 

・20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。

・受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。

 

事業場内では、喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知することが必要です。

また、思い切って、事業場の敷地内全体を禁煙対象とすることも考えられます。

この場合の就業規則の規定は、上の2つに代えて「喫煙は、敷地内では行わないこと。」となります。

 

2022/09/08|793文字

 

<よくある誤解>

就業規則に「アルバイト社員には労災保険を適用しない」という規定のある会社もあるそうです。

また、会社に労災申請を希望したところ「あなたの業務は雇用というよりも請負に近いから、労災保険の適用対象ではない」と説明されたという話もあります。

こうした場合に、従業員は、「規則だから」「会社が認めてくれないから」と考えて諦めてしまうようです。

 

<労災認定の判断権者>

労災給付の請求があった場合に、これを認めるかどうかを判断するのは、会社を所轄する労働基準監督署の署長です。

決して会社ではありません。

ただ、貧血で倒れてケガをした場合のように、明らかに労災保険の適用対象外である場合に、会社の担当者から従業員に対してその旨の説明が行われるのは、不当なことではありません。

会社としては、具体的な事実を確認し、労災保険の適用関係に不安があれば、所轄の労働基準監督署の労災課などに問い合わせたうえで、手続きを進めるのが正しいことになります。

 

<事業主が記入しない場合>

労災の手続きに必要な書式は、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。

これには、労働者、事業主、医師などそれぞれの記入欄があります。

会社が事業主の欄に記入することを拒んでも、手続きを進めることができます。

従業員が労働者の記入欄に分かる範囲で記入し、治療を担当している医師に証明欄を記入してもらい、所轄の労働基準監督署の労災課などの窓口に行って「会社が書いてくれない」と申し添えて、書類を提出すれば良いのです。

 

<従業員が納得しない場合>

客観的に見て労災保険の適用対象ではない場合に、従業員が「会社を説得して労災扱いにしてもらおう」と考えることがあります。

こうした場合には、判断するのは会社ではなく労働基準監督署長であることを会社から従業員に説明し、所轄の労働基準監督署の労災課などの電話番号を案内するのが良いでしょう。

 

2022/09/07|1,568文字

 

<個人的な残業禁止令>

日中ダラダラと効率の悪い仕事をしていながら、夕方になると調子が上がって業務に集中する人もいます。

これによって長時間の残業が発生しているのなら、生活リズムの個性を認めて午後からの出勤にするという方法もあるでしょう。

中には、残業手当が欲しくて時間外に頑張っている人もいます。

しかし、いわゆる生活残業になってしまっていると、適正な人事考課基準が運用されている会社では、生産性の低い社員であると評価され、昇進・昇格・昇給が遅れますから、長い目で見れば、収入が少なくなってしまいます。

上司が面談して、こうしたことを説明すべきですし、どうしても今の収入を増やしたい事情があるのなら、仕事を多めに割り振ることも考えられます。

また、お付き合い残業というのもあります。

同期社員間や同じ部署の社員間で、仕事の早い人が遅い人を待つ形で、一緒に帰るのが習慣になることもあります。

この場合には、全員が定時で帰れるようにする方向で、仕事の配分や役割を見直すべきです。

このように、それぞれの事情に応じた対応を取るべきなのですが、残業の発生に合理的な理由が見出せない社員に対しては、残業の禁止を命じなければならないこともあります。

 

<集団的な残業禁止令>

全社で、あるいは一部の部署で、残業禁止とされることもあります。

特定の曜日や給料日だけノー残業デーと決めることもあります。

働き方改革の一環で、残業時間の削減を試みてもなかなか進まないので、「残業禁止」という施策も増えてきました。

 

<残業禁止令の本質>

就業規則に残業の根拠規定が置かれます。

「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定です。

「労働させることがある」という表現から解かるように、「使用者側から労働者に対して、時間外労働や休日労働をさせることがある」という意味です。

具体的には、使用者から個別に残業命令が出た場合や、「クレームが発生した場合には、所定労働時間を超えても、一次対応と報告を完了するまでは勤務を継続すること」のような条件付きの残業命令がある場合に、そうした事態が発生すると残業が行われるということになります。

このことから残業禁止令の本質を考えると、「使用者側から残業命令は出さない。条件付きの残業命令はすべて撤回する」という内容になります。

 

<残業する権利>

残業禁止令が出されると、残業手当が減って収入が減る、あるいは業務が溜まっていくことによる不安が増大するなど、労働者側に不利益が発生します。

これは、労働者の残業する権利の侵害ではないかという疑問も湧いてきます。

しかし、残業が使用者側から労働者への命令によって行われる性質のものである以上、労働者から会社に残業を権利として主張することはできません。

判例では、労働者から使用者に対して就労請求権が認められることも稀です。

つまり、会社が給与を支払いながら労働者の出勤停止を命じた場合に、労働者から会社に対して働かせるよう求めることは、特殊な事情が無ければ認められていません。

ましてや、労働者から会社に残業させるよう求める権利は認められないわけです。

 

<残業禁止令の弊害>

残業禁止となると、収入減少や持ち帰り仕事の発生などにより、社員のモチベーションは大いに低下します。

また、残業時間ではなく残業手当の削減という、目的をはき違えた方向に進んでしまうと、管理職へのシワ寄せが発生し、管理職が過重労働に陥り心身に障害を来すこともあります。

こうなると、一般社員がその会社で管理職に昇進することを敬遠し、将来の構図を描けなくなれば、転職者が多数出てしまいます。

残業禁止という最終手段に出る前に、業務や役割分担の見直しや機械化・IT化などの正攻法によって、残業の削減を目指していきましょう。

 

2022/09/06|705文字

 

<基礎年金番号の形式>

基礎年金番号は、国民年金・厚生年金保険・共済組合といったすべての公的年金制度で共通して使用する「1人に1つの番号」です。

基礎年金番号は10ケタの数字で表示され、4ケタと6ケタの組み合わせとなっています。0000-000000という形式です。

 

<基礎年金番号の導入>

公的年金制度では、平成8(1996)年12月までは、年金制度ごとに異なる番号により年金加入記録を管理していました。

そのため、転職等により加入する制度を移り変わった場合、国民年金または厚生年金保険の「年金手帳の記号番号」、共済組合の組合員番号など、一人で複数の年金番号を持っていました。

このため、年金を請求する際には制度ごと番号ごとに照会が必要となり、調査のために時間を要していました。

この不都合を解消するために、平成9(1997)年1月から基礎年金番号が導入されました。

 

<基礎年金番号についての注意点>

正しく運用されていれば、基礎年金番号と同様に年金手帳も「1人1冊」です。

複数の年金手帳があったり、基礎年金番号が不明の場合には、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

年金手帳の発行は終了していますので、新規加入者への交付も、紛失した場合の再交付もありません。

基礎年金番号さえあれば、不都合はなくなっているからです。

現在は、基礎年金番号が不明でも個人番号(マイナンバー)があれば、問題なく行える年金手続の種類も増えています。

これからマイナンバーの活用が進み、基礎年金番号に取って代わる日が来るかもしれません。

そうなっても、基礎年金番号が重要な個人情報であることに変わりはありませんから大事に扱いましょう。

 

2022/09/05|667文字

 

<性別による差別>

募集・採用の際、次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。

・募集または採用で男女のどちらかを排除すること。

・募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。

・能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

・募集または採用で男女のどちらかを優先すること。

・求人の内容の説明など、募集または採用の情報提供で、男女で異なる取扱いをすること。

・合理的な理由なく、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別採用で転勤に応じることを条件とすること。

 

<年齢による差別>

募集・採用では、原則として年齢を不問としなければなりません。

年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合だけでなく、民間の職業紹介事業者や求人広告などを通じて募集・採用をする場合、雇い主が直接募集・採用する場合を含めて広く適用されます。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、正社員を募集・採用する場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。

例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者などに対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務付けられています。

 

<その他の差別>

このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。

また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することがあります。

 

2022/09/04|1,016文字

 

<レジリエンスという言葉>

物理学で、ストレス(stress)は「外力による歪み」を意味し、レジリエンス(resilience)は「外力による歪み」を「跳ね返す力」を意味します。

どちらも心理学の世界に入ってきて、レジリエンスは「極度に不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」などと定義されています。

単純に考えれば、ストレスを跳ね返す力ということになります。

 

<レジリエンスの個人差>

レジリエンスには個人差があり、レジリエンスが高い人、低い人には、次のような特徴が見られます。

 

【レジリエンスが高い人の特徴】

特徴1:自分を信じ、未来や将来に対して肯定的・前向きに考えることができる

特徴2:感情に溺れて一喜一憂することはなく、自分の気持ちや感情をコントロールすることができる

特徴3:困難に立ち向かう意欲があり、挑戦を諦めない

特徴4:失敗を受け止め、反省して今後に活かそうと考える

特徴5:他人を信じ、信頼関係を築ける

 

【レジリエンスが低い人の特徴】

特徴1:自己不信感が強く、未来や将来に対して否定的で前向きに考えることができない

特徴2:感情に溺れ一喜一憂し、自分の気持ちや感情をコントロールすることができない

特徴3:困難を避けようとし、諦めが早い

特徴4:失敗を受け止められず、落ち込んだ状態が長く続く

特徴5:他人を信じられず、信頼関係を築けない

 

<レジリエンスが低い人の問題点>

レジリエンスが高い人と低い人とを比べれば、高い人の方が職場での活躍を期待できそうです。

レジリエンスが低い人は、成長が遅いでしょうし、それだけ戦力化されるまでの期間が長くなってしまいます。

また、極端にレジリエンスが低い人は、少し注意されただけでパワハラだと感じ、その場で泣き出してしまうかもしれませんし、翌日から長期欠勤に入った挙げ句、精神疾患の診断書を提出して業務災害を主張し、労災保険の手続をとるよう求めてきたりすることもあります。

 

<採用の段階で>

レジリエンスが低い人は、採用面接で謙虚に見えますし、従順で協調性があるように見えるかもしれません。

上記に示したレジリエンスが低い人の特性を踏まえ、過去の失敗から何を学んだか、あるいは仮想の事例で、失敗した場合のリカバリーの方法などを尋ねてみれば、ある程度まで見抜くことが可能でしょう。

どうせなら、レジリエンスが高い応募者を優先的に採用し、レジリエンスが低い人の入社は避けたいものです。

 

2022/09/03|1,485文字

 

<請負とは>

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第632条〕

請負では、注文者が請負人に細かな指示を出すことなく、すべてお任せして、完成した仕事を受け取るわけです。

彫刻家に芸術作品の制作を依頼するのは、この請負にあたります。

 

<雇用とは>

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第623条〕

雇用では、雇い主が労働者に業務上の指示を出し、労働者がこれに従って労働に従事します。

正社員、パート、アルバイトなどの労働が雇用にあたります。

 

<区別の基準>

請負では、依頼された仕事を受ける/受けないが自由です。

しかし、雇用では正当な理由なく拒めません。

請負では、いつ、どこで作業するかが、基本的には自由です。

しかし、雇用では、勤務時間と勤務場所を拘束されます。

請負では、作業に必要な車両、機械、器具などを請負人が負担します。

しかし、雇用では、雇い主の貸与する物を使い、雇い主が経費を負担します。

他にも具体的な区別基準はあるのですが、決して契約書のタイトルが区別の基準になるわけではありません。

 

<名ばかり請負>

雇用では、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などの労働法により、労働者が保護されます。

ところが、請負では請負人がこれらによる保護を受けません。

また、雇用であれば、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。〔労働契約法第16条〕

ところが、請負では請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。〔民法第641条〕

反対の立場から見ると、何か仕事をしてもらう場合、雇用ではなくて請負にした方が、仕事をさせる側の負担が少ないことになります。

雇用契約の場合、労働者が保護されているというのは、使用者側から見ると、規制や負担が大きいということになるからです。

そこで、本当は雇用なのに、雇い主が請負だと言い張って、労働者に不利な扱いをしてしまう場合があります。

これが、名ばかり請負(偽装請負)です。

あるいは、最初は請負契約だったのに、注文者から請負人に対して、あれこれ具体的な指示が出るようになって、途中から雇用契約になった場合に、それでも扱いは請負契約のままという場合もあります。

これも、名ばかり請負です。

 

<ニセ働き方改革>

働き方改革というのは、労働者のニーズを踏まえた改革です。

しかし、たとえ労働者が望んだとしても、使用者側がこれに応ずることが労働者の不利になり、違法になることが多くあります。

たとえば、労働者から「手取り収入を増やしたいので社会保険には入りたくない」という要望があって、会社がこれに応じて健康保険や厚生年金の加入(資格取得)手続きを怠ったとします。

もちろんこれは違法ですが、この場合には、病気で長期入院した場合の補償も無いですし、将来受け取る年金額も減ってしまいます。

最近では、中小企業ばかりでなく、大企業でも「働き方改革」「労働者のニーズ」という言い訳で、名ばかり請負を進める動きが出てきています。

社長の権限が強大で、あるいはパワハラが強烈で、誰も違法性を指摘できないのでしょうか。

こうしたニセ働き方改革の出現によって、働き方改革そのものが悪者にされたり、働き方改革の弊害だとされることがあるのは非常に残念です。

 

2022/09/02|521文字

 

<第3号被保険者とは>

第3号被保険者は、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)が対象です。

勤め人の配偶者ということで、夫が妻の扶養に入っている場合も対象となります。

夫婦のうち、扶養している側は、会社員など厚生年金等の加入者ですが、同時に国民年金の第2号被保険者でもあります。

しかし、第3号被保険者は、国民年金にのみ加入し、厚生年金等には加入しません。

 

<保険料の免除>

第3号被保険者である期間は、保険料をご自身で納付する必要はないのですが、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

 

<第3号被保険者になったときの届出>

配偶者に扶養されることになった場合には、第3号被保険者になりますので、第3号被保険者に該当する旨の届出を配偶者の勤務する会社(事業主)に提出してください。

 

<第3号被保険者でなくなったときの届出>

配偶者の扶養から外れた場合には、第1号被保険者になりますので、住所地の市区町村に第1号被保険者への種別変更届を提出してください。

60歳未満の場合、ご本人の年収見込みが130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます。

所得税の扶養とは基準が異なりますので注意しましょう。

 

2022/09/01|2,027文字

 

<理由による対応の違い>

遅刻の理由を確認することなく叱責したり、懲戒を検討したりは以ての外です。

ましてや、解雇を通告すれば不当解雇となります。

家庭内のプライベートな事情や、交通機関の遅れなど、本人に責任を問えない理由で遅刻した場合には、責めることができません。

反対に、深夜まで深酒したり、オンラインゲームに熱中したりで、明け方から眠りについて寝坊したのが遅刻の理由であれば、言い逃れができません。

現実には、このような極端なケースではなく、本人の帰責性について判断に迷う理由も多いものです。

プライバシーの侵害とならない範囲で、なるべく具体的な理由を確認し、本人の責任の程度と再発防止策検討の資料とします。

もちろん嘘はいけませんから、言い訳に多くの矛盾があったり、後日、虚偽が発覚したりの場合には、それ自体が叱責や懲戒の対象となりえます。

就業規則の遅刻を禁止する規定に、「正当な理由なく」という文言が入っていなければ、これを加えておくべきです。

 

<事前連絡による対応の違い>

同じ遅刻でも、かなり早く会社に連絡があれば、遅刻を予定した対応を取ることが可能です。

ところが、何の連絡もなしに遅刻した社員がいれば、上司や同僚の心配もさることながら、仕事の計画が狂い、しかも計画の立て直しも困難になってしまいます。

こうした観点からは、無断遅刻は最も許しがたく、反対に、数日前からの予告のもとに遅刻するのは咎められないといえるでしょう。

就業規則にも、「やむを得ず遅刻する場合には、なるべく早く上長に連絡し、その承認を得ること」などの規定を置いておくことが望ましいでしょう。

 

<適切な注意指導>

遅刻は、それ自体が労働契約違反ですから、非難の対象となります。

まじめに本来の始業時刻から業務を開始している社員から不満も出ますし、会社が遅刻に対して厳正な態度を取らなければ、社員全体の士気が低下してしまいます。

このことから、遅刻の理由、事前連絡の状況、遅刻の頻度などを踏まえ、遅刻した社員には上司からの具体的な注意指導が必須となります。

注意指導は、本人の反省を促し改善の機会を与えるとともに、懲戒や解雇の前提となるものです。

実際に、懲戒や解雇へと進み、その有効性が問われた場合には、注意指導の証拠資料が威力を発揮しますので、その内容を文書化して保管し、できれば対象者の確認を得ておくことが望ましいものです。

ただし、注意指導の内容や態様がパワハラに該当してしまうと、それ自体が問題となりますから注意が必要です。

 

<懲戒処分の検討>

遅刻を懲戒の対象とするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要です。

たとえば、「正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき」という規定であれば、1回か2回の遅刻で懲戒の対象とすることは、「しばしば」という言葉の意味に反しますから、客観的に合理的な理由による懲戒とはなりません。

しかし、たとえ1回の遅刻であっても、お得意様への重要な対応などを予定していながら遅刻し、そのお得意様が立腹してライバル会社に乗り換えてしまったような場合に、「過失により会社に損害を与えたとき」のような規定があれば、こちらの規定が適用できるでしょう。

このように懲戒規定全体を見渡して、具体的事実に適合する規定を根拠とする懲戒とする必要があります。

遅刻が、基本的に過失による行為であることを考えると、遅刻を繰り返し、注意指導によっても改善されないとしても、懲戒解雇というのは行き過ぎであり、不当解雇となる可能性が極めて高いといえます。

 

<配置転換の検討>

遅刻の許容度というか、遅刻が許されない職場・職種もあれば、そこまで厳密に考える必要のない職場・職種も想定されます。

この違いから、遅刻の許されない社員が遅刻する場合には、他部署への配置転換も検討の対象となります。

 

<退職勧奨>

注意指導を繰り返しても、遅刻が改善されない場合で、配置転換を考える余地がないときには、退職勧奨を行うことも考えられます。

ここまで来ると、二度と遅刻しないように最大限の努力を行うか、自ら退職を申し出るかの選択に迫られることになります。

 

<普通解雇>

遅刻は、労働契約上の始業時刻に、業務を開始していないのですから労働契約違反です。

つまり、労務提供についての債務不履行ということになります。

そして、債務不履行が重大であれば、普通解雇の理由ともなります。

しかし、労働契約上の所定労働時間の殆どについては、債務不履行がないと考えれば、遅刻を理由として普通解雇を通告するのは行き過ぎでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

人事考課制度が適正に運用され、一定期間ごとに、遅刻の回数、時間、影響などが正しく評価されていれば、自ずと待遇に差が生じてきます。

これによって、遅刻を繰り返してきた本人から退職を申し出ることもあるでしょうし、また過去から現在に至るまでの評価結果を根拠に、説得力のある退職勧奨も可能となります。

 

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