2022/09/28|883文字
<時効消滅の制度>
賃金や退職金の請求権は5年間で時効消滅します。〔労働基準法第115条〕
ただし、現在は経過措置により、賃金の請求権が3年間で時効消滅することになっています。〔労働基準法第115条の2〕
たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないのに、何ら指摘せず放置したまま3年間が経過して会社から時効だと言われれば、その給与は請求できなくなります。
これは、「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の制度の趣旨に沿ったものです。
この場合、支払義務のある側からすれば、一方的に得をすることになり道義的な違和感を生ずることもあります。
ですから、時効の利益を受ける者が、時効であることを主張することによってその効果が発生します。
この主張を時効の援用(えんよう)といいます。〔民法第145条〕
<時効の中断>
たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないので社長に確認したとします。
そして、社長から「ごめん、少し待って」といわれて、しばらく待ってから催促することを繰り返していたら、いつの間にか3年過ぎたので請求できなくなったというのは道義に反します。
そこで、社員の側から請求の意思が明確にされた場合や、会社の側から支払の意思が明確にされた場合には、時効期間の進行がリセットされます。
これを時効の中断といいます。
時効の中断には、請求(裁判上の請求、裁判外の請求)、差押え・仮差押え・仮処分、債務者の承認の3つがあります。〔民法第147条〕
もし給与の未払いがずっと続いて裁判になったとしたら「ときどき催促していました」といっても証拠がなければ負けてしまいます。
ですから、内容証明郵便などによる催促が必要になります。
しかも、催促というのは時効中断の効力が制限されていて、6か月以内に裁判で請求するなど一段突っ込んだアクションをしないと、効力を生じないことになっています。〔民法第153条〕
お勧めなのは「少しでもいいから支払ってください」と催促して、振り込んでもらうことです。
これも「債務者の承認」となって時効中断の効力があります。