2024/09/01|1,269文字
<北風と太陽>
「北風と太陽」は、有名なイソップ寓話のひとつです。
ウィキペディア(Wikipedia)によると、そのあらすじは次のとおりです。
ある時、北風と太陽が力比べをしようとする。そこで、旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をする。まず、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする。しかし寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。
次に、太陽が燦燦と照りつけた。すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から上着を脱いでしまった。 これで、勝負は太陽の勝ちとなった。 |
この寓話の内容から、「北風と太陽」という言葉は、物事に対して厳罰で臨む態度と、寛容的に対応する態度の対比を表すのに使われます。
<北風社長>
うちの社員は、報告・連絡・相談がなっとらん。全社員に、「正しい報連相研修」「効果的な報連相研修」を受けさせよう。
人事考課の評価基準では、「上手な報連相」を重点項目に据えよう。 そして、下手な報連相、間違った報連相は、懲戒処分の対象にしよう。 |
ここまでいかなくとも、報告・連絡・相談のスキルアップを社員に求める会社は多いものです。
社員ひとり一人が、報連相の能力をアップすれば、会社全体の風通しが良くなり、生産性がアップするに違いないと考えるのでしょう。
<太陽社長>
社内の報告・連絡・相談が上手くいっていないようだ。社員ひとり一人が、もっと気楽に報告・連絡・相談できたら良いのだが。
私を含め役員全員と管理職に、「正しい報連相の受け方研修」「喜ばれる報連相の受け方研修」を受講していただきましょう。 管理職の評価基準では、「聞き上手」を重点項目に据えましょう。 そして、優れた報連相を行っている部門や社員を表彰しましょう。 |
報告・連絡・相談を受ける側のスキルアップを図ることは、コミュニケーションの改善に不可欠です。
しかし、あまり行われていないのが残念です。
またたとえば、遅刻や欠勤に対して懲戒処分を行うのと、無遅刻無欠勤を表彰するのとでは、その効果に大きな違いはありません。
就業規則に表彰規定があっても、永年勤続以外では、ほとんど表彰が無いというのは、よく聞く話です。
もっと表彰を活用しても良いのではないでしょうか。
<実務の視点から>
ここまで読むと、「太陽方式のほうが優れているということか」と思われるかもしれません。
しかし、コミュニケーション不足は労働問題の原因の大半を占めますし、報告・連絡・相談の不足は会社にとって致命的な欠陥です。
上の例で、北風社長と太陽社長が相談して、会社の施策を検討したならどうなったでしょうか。
おそらく、「報連相するスキル」「報連相を受けるスキル」両方の研修を導入するでしょう。
人事考課では、報連相をする/される両面の評価が行われます。
また、虚偽の報連相や、報連相の遅れは、懲戒処分の対象とされる一方で、手本となった部門や社員は全社で表彰されることでしょう。
報告を受けて、いきなり怒り出す管理職がいる会社では、早急に取り組むことをお勧めします。