会社が従業員の過労自殺の責任を問われないためには

2023/10/31|1,000文字

 

<事実の認定>

ある従業員が亡くなったとき、自殺、他殺、事故死、病死のどれなのか、ご本人に確認できれば簡単に判断できるのですが、ご本人が亡くなってしまった以上、客観的な事実の認定の積み重ねで判断するしかありません。

例は悪いですが、人を突き飛ばして死の結果が発生したとき、殺すつもりで突き飛ばしたら殺人、殺す気が無かったら傷害致死です。

このとき、犯人が「殺すつもりでした」と言えば殺人罪、「殺す気はありませんでした」と言えば傷害致死だとしたら、ほとんどの犯人は後者を選びます。

実際、殺人を犯した人の多くは「殺すつもりは無かった」と言います。

しかし、検察は本人の発言よりも、客観的な事実を認定して判断します。

その場の客観的な状況、目撃者の証言、犯人と被害者との関係、犯人の性格を示す事実など、多くの事実を把握して判断材料とするのです。

 

<過労によるうつ病>

うつ病の原因についても、仕事なのかプライベートなのか、これはご本人に聞いても不明なことすらあります。

仕事の状況とプライベートな状況について、客観的な事実を確認して、うつ病の原因を推定するわけです。

 

<うつ病による自殺>

うつ病にかかったら必ず自殺するということではなく、自殺の原因がうつ病に限られるわけでもありません。

やはり、自殺するほど重いうつ病だったのか、うつ病の他に自殺の原因が無かったか、客観的事実を確認した上で認定するのです。

 

<会社が注意すべきこと>

従業員が自殺するようなうつ病の原因を作らないことです。

原因となる客観的な事実を発生させないためには、次のような対策が必要です。

・孤独にしない

・人間関係を悪くしない

・パワハラ、セクハラ、マタハラなど嫌がらせの事実を発生させない

・仕事の指示は具体的かつ明確に出す

・困ったときの相談窓口を設け機能させる

・抱えるストレスをチェックし、分析し、職場環境を改善する

・長時間労働を許さない

・業務終了から次の業務開始までの時間を十分に空ける

・休日と休暇を取らせる

そして、個人の体質、性格、遺伝的要素を言い訳にしないことです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「人手不足だから」「本人にも落ち度はある」は言い訳になりませんし、パワハラの定義すら無い会社には必ずパワハラがあり被害者がいます。

もし、具体的に何をどうしたら良いのか不明な点があれば、迷わず信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

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