2026/09/24|1,097文字
これは、近年よくある「社会保険加入時の待遇変更」に関する問題です。結論からいうと、社会保険に加入したことだけを理由に時給を下げることは、原則として適切とはいえません。 ただし、違法になるかどうかは事情によって異なります。
<社会保険に加入すると会社の負担は増える>
健康保険や厚生年金保険に加入すると、保険料は従業員と会社が半分ずつ負担します。
例えば、これまで社会保険に加入していなかった従業員が加入対象になると、会社は新たに保険料を負担しなければなりません。そのため会社の中には、「社会保険料の会社負担分が増えるので時給を下げたい」と考えるところもあります。
しかし、社会保険料の会社負担分は、本来会社が負担すべきものです。従業員にその負担を転嫁するような形で賃金を引き下げることには問題があります。
<時給を下げるには労働者の同意が必要>
賃金は労働条件の中でも特に重要な事項です。
そのため、会社が一方的に「来月から社会保険に入るので時給を100円下げます」と決めることはできません。
労働者の同意なく賃金を引き下げれば、無効と判断される可能性があります。
また、形式的に同意書に署名していても、同意しなければ退職を迫られた、内容が十分説明されていなかった、実質的に断れない状況だったなどの場合には、その同意の有効性が問題になることがあります。
<例外的に認められる場合もある>
一方で、社会保険加入と同時に仕事内容や勤務条件が変わる場合があります。
例えば、パートから正社員になる、職務内容が変わる、手当制度を見直す、賃金体系全体を変更するといった事情があり、その結果として賃金額が変更されることがあります。
このような場合は、単純に「社会保険加入だから時給を下げた」のではなく、労働条件全体の見直しとして適法とされることもあります。
<「手取りが減る」ことと「時給が下がる」ことは別問題>
よく混同されますが、社会保険料が給与から控除されて手取りが減ることと、時給そのものが下がることは別の話です。
社会保険に加入すると保険料負担が発生するため、手取り額が以前より少なくなることがあります。これは制度上当然に生じるものです。
しかし、会社がさらに時給まで下げてしまうと、従業員は二重に不利益を受けることになります。
<おかしいと感じたときは>
もし会社から「社会保険に入る代わりに時給を下げる」と言われた場合は、次のことをお勧めします。
・なぜ時給を下げるのか理由を確認する
・就業規則や雇用契約書に変更についての規定があるか確認する
・自分が同意しているか確認する
・納得できない場合は労働基準監督署や社会保険労務士へ相談する