2026/08/29|927文字
結論として、労災保険の請求手続は「原則として被災した労働者本人」が行います。
ただし、実務では会社(人事・総務担当者)が本人の代わりに書類を作成・提出することが非常に多いため、「会社がやるもの」と誤解されがちです。
1.法律上の原則:請求者は「労働者本人」
厚生労働省は、労働災害で負傷した場合には、労働者が労働基準監督署長あてに労災保険給付を請求すると案内しています。
つまり、労災保険給付を受ける権利は労働者本人にあるので、請求手続も本人が行うのが制度上の原則です。
2.実務の現実:会社が代行することが多い
実際の職場では、次の理由から会社が書類作成や提出を代行するケースが一般的です。
・事故状況や勤務記録など、会社が持っている情報が多い
・労災手続は人事・総務の通常業務として扱われている
・医療機関との連絡や事業主証明など、会社が関与する部分が多い
名義はあくまで労働者本人の請求ですから、会社が「認めない」と言っても、労災申請そのものは本人ができます。
3.会社が協力しない場合でも申請できる
よくある誤解が「会社が労災と認めてくれないと申請できない」というものです。
しかし、これは誤りです。
・会社の同意は申請の条件ではない
・事業主証明が得られなくても、本人が労働基準監督署へ提出できる
・労災かどうかを判断するのは会社ではなく労働基準監督署長
4.給付の種類によって請求者が変わる場合もある
労災保険には複数の給付があり、状況によって請求者が異なります。
・療養(補償)給付(治療費):原則、労働者本人
・休業(補償)給付:原則、労働者本人
・障害(補償)給付:原則、労働者本人
・遺族(補償)給付・葬祭料:労働者が死亡した場合は遺族が請求
厚生労働省も、給付ごとに請求書を提出する必要があると案内しています。
5.会社が行う別の手続(混同しやすいポイント)
労災保険の「請求」とは別に、会社が行う義務的な手続があります。
(1)労働者死傷病報告
労働者が死亡・休業した場合、会社は労働基準監督署へ報告義務があります。
これは「労災保険の請求」とは別の手続です。
(2)事業主証明
労災申請書の一部に、会社が事故状況などを証明する欄があります。
ただし、証明が得られなくても本人は申請できます。