2026/08/30|1,557文字
ポジティブ・アクション(Positive Action)とは、過去の慣行や社会的構造によって不利益を受けている集団に対し、特別な機会や支援を提供することで“実質的な機会均等”を実現するための暫定的な措置です。
日本では特に「女性の活躍推進」「男女間の格差是正」の文脈で使われます。
1.ポジティブ・アクションとは何か(やさしい定義)
男女の差別を禁止するだけでは、長年の慣習や固定的な役割意識によって生じた格差はなかなか解消されません。
そこで、不利な状況にある側に対して、一定の範囲で「特別な後押し」をすることで、結果として公平な状態に近づける取り組みがポジティブ・アクションです。
2.なぜ必要なのか(日本の現状)
内閣府や厚生労働省の調査では、次のようなことが指摘されています。
・管理職に占める女性割合は約13〜14%台と低い水準
・多くの職場で女性比率が4割未満の職種が存在
また、固定的な性別役割意識(「女性は家庭」「男性は仕事」など)が根強く、能力とは関係ない構造的な格差が残っています。
そのため、単に「差別禁止」だけでは均等が実現しないため、ポジティブ・アクションが必要とされています。
3.法的な位置づけ(男女雇用機会均等法)
日本では、男女雇用機会均等法第8条がポジティブ・アクションを明確に「許容」しています。
つまり、女性の活躍を後押しするための特別措置を行っても、性差別には当たらないと法律で示されています。
ポイントは次のとおりです。
・義務ではなく「事業主が自主的に行う取り組み」
・ただし、女性が著しく少ない職種(目安:女性比率4割未満)では積極的な取り組みが推奨される
・男性が少ない職種(保育士・介護職など)で男性を増やすための措置も許容される[厚生労働省]
4.どんな方法があるのか(代表的な手法)
内閣府は、ポジティブ・アクションの手法を次の3つに整理しています。
①クオータ制(人数・割合の枠を設定)
・管理職の女性比率を30%にするなど、性別を基準に一定の割合を割り当てる方式
②ゴール・アンド・タイムテーブル方式(目標+期限)
・5年以内に女性管理職を20%にするなど、達成すべき数値目標と期間を設定し、計画的に取り組む
③基盤整備方式(働きやすい環境づくり)
・研修機会の拡充
・育児・介護と仕事の両立支援
・長時間労働の是正
など、女性が能力を発揮しやすい環境を整える方法
5.女性活躍推進法との関係
2015年に成立した女性活躍推進法は、ポジティブ・アクションの考え方を「行動計画」として制度化しました。
2026年時点で、常時雇用101人以上の企業は義務として、次のことを行わなければなりません。
・自社の女性活躍状況の把握
・課題分析
・数値目標を含む行動計画の策定・公表
また、2022年改正で男女の賃金差異の公表義務が追加され、企業の取り組みがより見える化されています。
6.具体的な企業の取り組み例(イメージしやすい事例)
- 採用での取り組み
・同等の能力なら女性を優先して採用(プラス・ファクター方式)
・女性応募者を増やすための説明会やインターン枠の設定
- 育成・昇進での取り組み
・女性管理職候補者向け研修
・女性比率の目標設定(例:課長職の女性比率20%)
- 働きやすい環境づくり
・育児・介護と両立しやすい勤務制度
・長時間労働の是正
・男性育休の取得促進(男女双方の固定的役割意識の解消)
7.誤解されやすいポイント
- 「女性だけ優遇するのは逆差別では?」
→法律上、格差是正のための暫定的措置は差別ではないと明記されています。
- 「女性だけが対象なの?」
→日本では女性が主な対象だが、男性が著しく少ない職種で男性を増やすための措置も可能です。
- 「永遠に続くの?」
→あくまで“暫定的”な措置であり、格差が解消されれば必要なくなるという考え方です。