2026/08/22|1,021文字
<年次有給休暇は「原則自由に取得できる」>
労働基準法第39条は、年休の取得について「労働者の請求する時季に与えなければならない」と定めています。
つまり、理由が何であろうとも、従業員が希望した日に取得するのが原則です。
兄の結婚式が、会社の就業規則で慶弔休暇の対象外とされていたとしても、年休は私的理由でも自由に使えるため、会社側が理由を審査することはできません。
<会社が拒否できるのは「時季変更権」を使える例外のみ>
会社が年休取得を拒否できるのは、次の条件を満たすときだけです。
・その日に休まれると、事業の正常な運営に支障が出ることが客観的に明らか
・代替要員の確保など、会社が可能な限り調整を試みてもなお支障が残る
単なる「忙しい」「人が足りない」ではなく、行政や裁判例では“相当程度の具体的な支障”が必要とされています。
具体的には、次の点がポイントになります。
・ただの繁忙日というだけでは、時季変更権の根拠としては弱い。
・他部門からの応援が難しいというだけでは不十分。「応援を依頼したが断られた」「スキマバイトなど外注も不可能」「その業務は当人しかできない」など、具体的な調整努力を示す必要がある。
・その従業員が休むと業務が回らないか。その従業員が担当する業務の内容・代替可能性・納期の厳しさなど、客観的な証拠が必要。
総合すると、「繁忙日で応援が難しい」という理由だけでは、時季変更権の行使は難しい可能性が高いというのが実務的な判断です。
<会社側のリスク>
もし会社が年休取得を拒否した場合、次のリスクが生じます。
・その従業員の退職
・労基署からの指導(年休の不当な時季変更)
・従業員からの不満・モチベーション低下
・不利益取扱いと評価される可能性(パワハラの一因になることも)
特に年休は労基署が強く保護する領域であり、「繁忙日だから」という理由で拒否した事例は、行政指導の対象になりやすいです。
<実務の視点から>
会社のリスクを最小化しつつ、現場の運営を守るためには次の対応が現実的です。
①年休取得は原則認める
法律上、拒否は難しいため、まずは取得を認める方向で検討する。
②業務の事前調整を依頼する
・引き継ぎ資料の作成
・前倒しで処理できる業務の洗い出し
・他メンバーへの事前共有
これにより、当日の負荷を軽減できる。
③どうしても支障が大きい場合のみ、時季変更を検討
・代替要員の確保努力
・業務調整の試行
・具体的な支障の証拠
会社側の根拠が揃っている場合に限る。