2025/08/23|1,158文字
しつこい退職勧奨は、従業員の「自由な退職の意思」を奪うような態度・回数・言動になった時点で違法(退職強要)と評価される可能性が高くなります。
退職勧奨そのものは合法ですが、執拗・威圧的・人格否定的・不利益を示唆するなどの行為があると、裁判で不法行為とされ「実質的な解雇」と判断されることがあります。
退職勧奨の場面では、言った/言わないの争いが多いため、日時・回数・言動の記録が非常に重要です。
1.退職勧奨とは何か
退職勧奨は、会社が従業員に「退職を検討してほしい」とお願いする行為です。
退職するかどうかは従業員が自由に決められるのが大前提です。
解雇とは違い、会社が一方的に辞めさせるものではありません。
2.どこから「違法」になるのか(境界線)
裁判例では、次のような場合に違法と判断されています。
①回数が過度に多い、期間が長い
・下関商業高校事件:約2年間で11回の面談→違法(不法行為)
・全日空事件:4か月で30回以上、長時間拘束→違法
②威圧的・強制的な態度
・大声を出す
・机を叩く
・「辞めると言うまで帰さない」などの拘束
これらは「心理的威迫」とされ、違法と判断されやすいです。
③人格否定・侮辱的な発言
「役立たず」「会社のお荷物」などの発言は、パワハラとして独立に違法となります。
④虚偽の情報で追い込む
「会社は倒産寸前」「懲戒解雇になる」など、事実と異なる情報で退職を迫る行為は不法行為です。
⑤退職以外の選択肢を与えない
「辞めるか、不利益を受けるか」などの二者択一は、自由意思を奪うため違法とされます。
3.適法とされる退職勧奨の範囲(どこまでならOK?)
裁判例では、次のような進め方なら適法と判断されています。
- 面談が短時間・少回数
・1回30分〜1時間
・週1回程度
・数回で打ち切る
(サニーヘルス事件:週1回・30分・計7回→適法)
- 担当者は1〜2名
大人数で囲むと威圧的と評価されます。
- 退職は本人の自由意思であることを明確に伝える
「退職はあくまでご本人の判断です」と繰り返し説明することが重要です。
- 人格否定をしない
問題点は「業務上の事実」に限定し、人格に踏み込まない。
- 拒否されたら一旦打ち切る
拒否後に続けると「執拗な勧奨」と評価され、違法の可能性が高まります。
4.違法と判断された場合の会社側のリスク
しつこい退職勧奨が違法と判断されると、会社は次のような責任を負う可能性があります。
①慰謝料(不法行為)
人格否定・威圧的態度・長時間拘束などがあると、精神的損害として慰謝料の請求が認められます。
②退職の無効(地位確認)
「退職届を出したが、強要されたものだ」と判断されると、退職自体が無効となり、従業員が職場復帰し、遡って給与の支払を求めるケースもあります。
③パワハラの責任
パワハラ防止法に基づき、会社の安全配慮義務違反が問われます。