2026/08/19|1,506文字
<就業規則の作成・変更を「人事部門だけに任せる」のは危険>
就業規則は、会社のルールブックであり、会社の経営方針・会社の価値観を反映させるべき重要な文書です。
そのため、人事部門だけに任せる、特定の管理職だけに任せるというのは、会社の意図とズレた規定ができたり、担当者の都合が入り込んだりするリスクがあります。
就業規則は、会社(経営者)が主体的に方向性を示し、複数の視点でチェックする体制が最も安全で確実です。
<誰に作成・変更を任せるべきか(安全性の高い順)>
①会社(経営者)が最終決定者になる
まず大前提として、就業規則の最終責任者は経営者です。
人事が作っても、社労士が作っても、最終的に「会社としてのルール」として承認するのは経営者です。
経営者がすべてを自分で書く必要はありませんが、次のような「方針」は必ず経営者が示すべきです。
・どんな会社にしたいか
・どんな働き方を認めるか
・どんな行為は許さないか
②社労士(外部専門家)にドラフト作成を依頼する
最もトラブルが少ない方法は、社労士がドラフト(原案)を作り、経営者が方向性を示し、人事が運用面を確認するという三者分担です。
社労士を使うメリットは次のとおりです。
・法律に沿った内容になる
・労基署の指摘を避けられる
・人事部門の「自分に都合の良い規定」を排除できる
・経営者の意向を中立的に文書化できる
・過去のトラブル事例を踏まえた実務的な規定にできる
特に「懲戒」「退職」「副業」「ハラスメント」「評価制度との連動」などは、人事部門で恣意的に書くと、従業員から不満が出たり、法的に問題が生じることがあります。
③人事部門は「運用の現実性」をチェックする役割に限定する
人事部門は、就業規則の内容を「現場で運用できるか」という観点で確認する役割が適しています。
たとえば、次のような項目は人事部門が最も詳しいため、実務面のチェックは不可欠です。
・休暇申請の方法
・勤怠管理の仕組み
・評価制度との整合性
・現場の実態とのズレ
ただし、規定の方向性や権限の設定を人事部門に任せると、担当者の都合が入ってしまうリスクがあります。
そのため、人事は「運用チェック」まで、規定の骨格は経営者と社労士で決めるという役割分担が最も安全です。
※人事部門に「都合の良い規定」としては、次のようなものがあります。
・人事部門の裁量が過度に広い評価制度
・人事部門が判断する曖昧な懲戒規定
・人事部門が承認しないと休暇が取れない仕組み
・人事部門が管理しやすいだけの勤怠ルール
・人事部門が優位になる人事権の集中
こうした規定は、従業員から不満が出たり、会社の意図とズレたりします。
<おすすめの進め方(実務的でトラブルが少ない)>
- ステップ1:経営者が「会社のルールの基本方針」を示す
たとえば、
・懲戒は厳しめにしたい
・副業は原則禁止にしたい
・ハラスメントは一切容認しない
・時間外労働は厳格に管理したい
・評価制度と昇給の関係を明確にしたい
会社(経営者)の価値観が就業規則の根幹になります。
- ステップ2:社労士が法的に整合性のあるドラフトを作成
会社の方針を踏まえ、次のような観点で社労士が原案を作ります。
・法律に合致
・トラブルを防止
・労基署から指摘されない
・実務で使いやすい
- ステップ3:人事部門が現場運用の観点でチェック
人事部門は、次のようなことを確認します。
「このルールは現場で運用できるか」
「申請方法は現行システムで対応できるか」
- ステップ4:会社(経営者)が最終確認し、労働者代表の意見聴取へ
就業規則の作成・変更は、次の流れで完結します。
・会社(経営者)が最終決定
・全従業員に周知
・労働者代表の意見聴取
・労働基準監督署長への届出