アウティングの裁判例

2026/07/10|834文字

 

アウティングというのは、本人の同意なく性的指向・性自認を暴露する行為をいいます。ここでは、一橋ロースクールアウティング事件(東京高判令和2年11月25日)を採り上げます。

 

1.一橋ロースクール事件

ロースクール生が、同級生によりクラスのLINEグループでゲイであることを暴露され、その後転落死した事案です。裁判所は、同級生の行為を人格権・プライバシー権を侵害する不法行為と認定しました。

一方、大学側の教育環境配慮義務違反については、当時の教育状況や大学の対応を踏まえ、義務違反は認められませんでした。

 

2.現在の職場でのアウティングの法的リスク

現在はパワハラ防止指針でアウティングがパワハラ類型として明示され、企業には予防措置や相談体制整備が求められています。また、LGBT理解増進法でも事業主の努力義務が規定されています。

そのため、同様のアウティングが職場で起きた場合、企業が職場環境配慮義務違反を問われる可能性は高まっています。

 

3.裁判例の法的評価

 

(1)善意によるアウティング

善意であっても本人の意に反して情報が広まれば人格権侵害となり得ます。

不法行為の成立は、必要性(客観的に必要だったか)相当性(手段が最小限だったか)で判断されますが、事前に本人の意向を確認し書面化することが最も重要とされています。

 

(2)不注意によるアウティング

・面接官が志望者のカミングアウトを他の従業員に共有した

・住宅手当申請を見た人事担当者が勝手に他者へ伝えた

・情報管理の不徹底で引継ぎ時に性自認が漏れた

このような場合には、いずれも合理的理由が乏しく、必要性を欠くため不法行為に当たる可能性が高いとされています。

 

(3)被害申告のためのアウティング

ハラスメント被害を相談するため、加害者の性的指向を窓口担当者に伝えたケースでは、相談対応に必要ですし、伝える範囲が最小限ですから、必要性・相当性が認められ不法行為には当たらないと考えられます。

ただし、相談窓口側には厳格な情報管理義務が課されます。

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