知らないでは済まされないLGBTQ

2022/01/16|2,101文字

 

<LGBTの定義>

LGBTは、4つの性的少数者の頭文字をとったものです。

 

【LGBT】

L

レズビアン(Lesbian)

恋愛の対象が女性である女性
G ゲイ(Gay) 恋愛の対象が男性である男性
B バイセクシュアル(Bisexual) 恋愛の対象が男性・女性の両方である人
T トランスジェンダー(Transgender) 生まれた時の体に基づいて判別された性別と、本人が心の中で認識している性別とが異なる人

トランスジェンダーの中でも、出生上の性に分類されることに持続的な不快感を持ち、精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態にある人を、医学的に「性同一性障害」と呼んでいます。

 

すべての企業に、LGBTへの理解と具体的な取り組みが求められています。

また、この4つに分類されない性的少数者をQで表わし、LGBTQということも増えています。

 

<特別ではないLGBT>

電通総研が、平成27(2015)年に約7万人を対象に実施した調査で、7.6%がLGBTに該当すると回答したそうです。これは、約13人に1人の割合です。

しかし、「あなたはLGBTのどれかに当てはまりますか?」と尋ねられて、素直に「はい」と答える人は限られているでしょう。

実際には、より多くの人がLGBTに該当するのかもしれません。

LGBTは特別な存在ではないのです。

 つまり、お客様、従業員、お取引先にも、LGBTの方がいらっしゃる可能性は高いのです。

 企業は、性別や年齢によって、採用、教育、異動、待遇などの差別をしないように求められています。

これは、LGBTについても全く同じことが当てはまります。

 

<採用内定にあたって>

企業としては、LGBTQに該当するか否かに関わらず、優秀な人材を採用したいと考えているでしょう。

しかし、内定を受けた学生からLGBTQに該当することを明かされた企業が、戸惑いからか内定を取り消してしまうという事態も見られます。

こうした内定取消の多くは、不当なものであり無効とされるべきものですが、LGBTQの立場は弱く、学生側が諦めやすいものです。

また、内定を出してくれた企業を信じてLGBTQに該当することを打ち明けたのに、内定を取り消されたのですから一層ショックが大きいのです。

LGBTQに該当する人について、本当に内定を取り消さなければならない特殊な業種などであれば、内定取消事由として「学校を卒業できなかった場合」「重大な罪を犯した場合」などに加えて、「LGBTQに該当する場合」を書面で明示しておかなければなりません。

 

<従業員について>

性的少数者である従業員の多くは、誰にも相談できずに悩んでいます。

一方、周囲の従業員や上司は、それと知らずに接しています。

同性同士の雑談に傷つき体調を崩して休んでしまい、退職してしまうことすらあります。

企業は、LGBTQに該当する従業員がいることを想定して、誰でも自分らしく働ける環境を作らなければ、優秀な人材の確保がむずかしくなってしまいます。

トイレや健康診断、セクハラの定義など、企業に求められることは意外な項目にも及びます。

しかし、最初に取り組むべきことは、LGBTQに対する理解を深めるための社員研修だと思います。

もちろん、経営トップをはじめ、幹部社員は特に深い理解を求められます。

特定非営利活動法人「虹色ダイバーシティ」等の団体に講師の派遣を依頼できる場合もありますので、必要に応じて相談すると良いでしょう。

 

<就業規則の整備>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

上記のうち「第12条から前条まで」というのは、パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラなどを指します。

いずれにせよ、「性的指向・性自認に関する言動」という言葉が入っています。LGBTのうち、LGBは性的指向ですし、Tは性自認に関することです。

就業規則には、こうした規定が必須のものとなっていますし、LGBTQについて従業員の全員に理解できる内容となっている必要があります。

 大企業の従業員であれば、同性パートナーへの福利厚生の適用も期待が高まっていることでしょう。

結婚した時に支給される結婚祝い金や結婚休暇等を、同性間のパートナーについても適用する旨の規定が、就業規則に欲しいところです。

もちろん、お祝い事だけでなく、育児、介護等の特別休暇や結婚以外の慶弔見舞金の対象にすることも考えられます。

これらを運用するには、同性間の事実婚や同性パートナーとの同居を届け出る「パートナー届」のような制度も必要となります。

LGBTQ該当者の中からも優秀な人材を採用できるようになりますし、定着率も向上します。

また、LGBTQ該当者向けの商品やサービスの開発にも有利です。

何より、企業のイメージアップにつながります。

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