内定取消ができるのは極めて限定された場合です

2026/06/25|1,251文字

 

内定取消は「解雇」に準じて扱われるため、企業が自由に行えるものではなく、法的に極めて限定された場合にしか認められません。

裁判例の蓄積も多く、企業側が安易に内定取消を行うと、高額の損害賠償や労働契約上の地位確認を命じられるリスクがあります。

 

1.内定は「始期付・解約権留保付の労働契約」

企業が内定通知を出し、応募者が承諾した時点で、労働契約はすでに成立していると判断されます。

形式上は「入社日から働く」という始期が付いていますが、企業と応募者の間にはすでに雇用関係に準じた法的拘束が生じているというのが裁判所の一貫した立場です。

したがって、内定取消は実質的に「解雇」と同じ法的性質を持ち、有効となるためには、労働契約法第16条の「客観的合理性・社会的相当性」が求められます。

 

2.内定取消が認められるのは「重大な事由」がある場合のみ

裁判例では、内定取消が認められるのは以下のような例外的な場合に限られます。

 

(1)応募者側の重大な非違行為

・経歴詐称(学歴・職歴・資格など業務遂行に影響する重要事項の虚偽)

・犯罪行為や重大な不正

・採用基準を根本的に満たさない事実が判明した場合

※「軽微な経歴の誤記」程度では取消は認められません。

 

(2)健康状態の重大な悪化

・業務遂行が客観的に不可能

・合理的配慮をしても就労が困難

※「多少の体調不良」「医師の診断書が曖昧」などでは取消は困難です。

 

(3)企業側の経営悪化(内定取消の中で最も厳しく判断される)

・経営危機が突発的かつ深刻で、採用維持が不可能

・他の雇用調整(配置転換・残業削減・採用延期など)を尽くしてもなお困難

※「業績が悪化した」「採用計画を見直した」だけではまず認められません。

 

3.裁判所が重視するポイント

内定取消の有効性判断では、以下の点が特に重視されます。

・取消理由の重大性・客観性

・企業側の調査・確認プロセスの適正さ

・応募者への説明の丁寧さ・手続の公正さ

・他の手段(入社延期・配置変更など)の検討状況

・応募者に与える不利益の大きさ

特に、応募者は内定を前提に他社への応募を停止するため、内定取消による不利益は極めて大きいと評価されます。

 

4.内定取消のリスク

内定取消が違法と判断されると、企業は以下の責任を負う可能性があります。

・労働契約上の地位確認(入社扱い)

・内定期間中の賃金相当額の支払い

・慰謝料(10〜100万円程度の例が多い)

・弁護士費用相当額の負担

・企業イメージの毀損・採用力低下

特に新卒採用では、SNSや口コミでのreputationalriskが大きく、採用活動全体に影響が及ぶことも珍しくありません。

 

5.実務上の視点から

内定取消でリスクを抑えるには、次のことが必要となります。

・内定通知前に、応募者情報の確認(資格・健康状態・経歴)を徹底

・内定取消を検討する場合は、必ず法務・社労士に事前相談

・取消理由は客観的証拠を確保し、説明文書を作成

・取消以外の選択肢(入社延期・配置変更)を必ず検討した記録を残す

・本人への説明は丁寧に、複数名で、記録を残す

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