経歴詐称を理由とする内定取消

2026/02/09|1,403文字

 

企業が採用選考の結果として「内定」を出した後でも、応募者が学歴・職歴・資格などについて虚偽の申告をしていた場合、企業は内定を取り消すことがあります。これを「経歴詐称による内定取消」と呼びます。

内定は「労働契約の成立」とみなされるため、企業が一方的に取り消すには合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。経歴詐称はその代表例の一つです。

 

<そもそも「経歴詐称」とは何か>

経歴詐称とは、採用選考において企業が判断材料とする情報を、意図的に偽って伝える行為です。

よく問題になる項目としては、次のようなものがあります。

・学歴の虚偽(大学中退を「卒業」と記載 など)

・職歴の虚偽(在籍期間の水増し、離職理由の偽装)

・資格の虚偽(未取得なのに「取得」と記載)

・処分歴の隠蔽(懲戒解雇歴など、企業が採用判断に重要とする情報)

ただし、「うっかりミス」や「記載漏れ」といった単純な誤りは、通常は経歴詐称とは扱われません。意図的に企業を誤解させる行為であることがポイントです。

 

<なぜ経歴詐称は内定取消の理由になるのか>

企業は、応募者の経歴をもとに「この人を採用するか」を判断します。

そのため、経歴が虚偽であると、企業の判断が根本から揺らぎます。

特に以下の場合、内定取消が正当と判断されやすいといえます。

  • 採用の合否に直接影響する重要な経歴だった

・医療職で「看護師資格あり」と虚偽申告

・管理職採用で「マネジメント経験10年」と偽っていた

・大卒以上が必須の職種で、実際は高卒だった

  • 企業が明確に申告を求めていた項目だった

企業が「必ず正確に記載してください」と注意喚起していた場合、虚偽の重みが増します。

 

<内定取り消しが認められるための条件>

企業は自由に内定を取り消せるわけではありません。

裁判例では、以下の2つが必要とされています。

① 合理的な理由があること

経歴詐称が、採用判断に重大な影響を与える内容であること。

② 社会通念上相当であること

取消という重い処分が、社会的に見て妥当といえるかどうか。

つまり、軽微な誤りや、仕事に影響しない情報の虚偽だけでは、内定取消は認められにくいということです。

 

<よくある誤解>

「少しの嘘でも即アウト?」とはなりません。

採用にほとんど影響しない内容であれば、内定取消は過剰と判断される可能性があります。

「企業が気に入らなかったら経歴詐称を理由に取り消せる?」ともいえません。

企業側の“後付け理由”は裁判で否定されやすく、慎重な判断が求められます。

 

<内定取消の手続>

企業が内定を取り消す場合、一般的には以下の流れを踏みます。

・事実確認(ヒアリング)

・本人に弁明の機会を与える

・社内での検討・法務チェック

・書面で内定取消通知を交付

特に「弁明の機会」を与えずに即時取り消すと、手続の不備として争われる可能性があります。

 

<企業側のリスク>

企業が安易に内定を取り消すと、以下のリスクがあります。

・労働契約上の債務不履行として損害賠償を請求される

・不当内定取消として裁判で敗訴する

・企業イメージの悪化

そのため、企業は「本当に取消が必要か」を慎重に判断する必要があります。

 

<実務の視点から>

・経歴詐称の内容が「採用基準に直結するか」をまず確認する

・虚偽が意図的かどうかを丁寧に調査する

・本人の説明を必ず聞き、記録を残す

・内定取消以外の選択肢(配置転換など)が可能か検討する

・最終判断は法務部門や専門家と連携して行う

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