2026/01/26|1,252文字
中途採用の「内定取消」は、企業にとっても応募者にとっても重大な問題です。特に社会人経験のある中途採用では、応募者が前職を退職して入社準備を進めているケースも多く、トラブルになりやすい領域です。
<そもそも「内定」とは何か>
内定とは、企業が応募者に対して「採用する」という意思を示し、応募者がそれを承諾した段階で成立する「労働契約の予約」のようなものです。
判例上、内定は「始期付・解約権留保付の労働契約」とされています。
つまり、入社日は未来だとしても、契約自体は成立しているという扱いです。
そのため、企業が一方的に内定を取り消すことは、「解雇」と同じくらい重い行為と判断されます。
<内定取消が認められる場合>
内定取消は原則として非常に厳しく制限されます。
企業側に「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。
〇認められやすい例
・応募書類の重大な虚偽(資格の詐称、経歴の偽装など)
・犯罪行為や重大な非行が発覚した場合
・健康状態が業務遂行に明らかに支障をきたすと医師が判断した場合
・企業の経営が急激に悪化し、採用を維持できないほどの深刻な事情がある場合(ただし非常にハードルが高い)
✕認められにくい例
・「会社の都合で採用人数を減らしたい」
・「他にもっと良い人が見つかった」
・「部署の事情が変わった」
・「応募者の印象が思ったより良くなかった」
これらはほぼ認められず、取消すと企業側が損害賠償責任を負う可能性が高いです。
<中途採用で特に問題が大きくなる理由>
新卒採用と比べて、中途採用の内定取消はリスクが高くなります。
・応募者がすでに前職を退職している可能性が高い
・生活基盤(収入)が途切れるため損害が大きい
・採用プロセスが短く、企業側の調査不足が原因になりやすい
そのため、裁判では企業側が不利になりやすい傾向があります。
<内定取消を行う際の企業側の注意点>
企業がやむを得ず内定取消を検討する場合、次の点が重要です。
- 事実確認を徹底する
虚偽申告や不正行為が疑われる場合は、事実確認を慎重に行います。
・本人への確認
・証拠の収集
・第三者の意見
- 本人に弁明の機会を与える
一方的に通知するのではなく、「事情を説明する機会」を設けることが求められます。
- 書面で通知する
口頭説明だけではトラブルのもとです。
取消理由を明確に記載した書面を交付することが必要です。
- 損害賠償の可能性を理解する
内定取消が不当と判断されると、などの賠償を求められることがあります。
・前職を辞めたことによる逸失利益
・入社準備にかかった費用
・精神的損害(慰謝料)
<内定取消を避けるために企業ができること>
トラブルを防ぐには、採用プロセスの段階での工夫が重要です。
・応募書類のチェックを丁寧に行う
・面接での確認事項を明確にする(「面接シート」を利用する)
・健康状態や資格の確認を早めに行う
・内定通知前に最終的な社内承認を確実に取る
・内定通知書に「内定取消の可能性がある事由」を明記する
採用の質を高めることが、結果的に内定取消リスクの低減につながります。