2026/03/28|1,134文字
<在職中は「当然に」競業避止義務がある>
大前提として、従業員は在職中、就業規則や雇用契約書に明記がなくても、信義則上の競業避止義務を負うとされています。
これは、労働契約に付随する「忠実義務」「誠実義務」から導かれるもので、判例でも一貫しています。
典型的な違反行為
・競合他社でのアルバイト・副業
・自ら競合ビジネスを立ち上げ、営業活動を行う
・会社の顧客に対し、在職中に自分のビジネスへ誘導する
・会社のノウハウ・情報を利用して競合行為を行う
これらは、就業規則に明記がなくても「違反」と評価され得ます。
<違反が成立するための判断ポイント>
競業避止義務違反は、単に副業をしただけでは成立しません。
以下の要素を総合的に判断します。
① 会社と実質的に競合する業務か
・同一顧客層を対象としているか
・同種のサービス・商品を扱っているか
・会社の利益を侵害する可能性があるか
② 在職中に行われたか
退職後の競業とは法的性質が異なり、在職中はより厳しく判断されます。
③ 会社の情報・地位を利用しているか
・顧客リスト
・価格情報
・技術・ノウハウ
・在職中の立場を利用した営業行為
④ 会社に損害が発生したか(または発生する蓋然性が高いか)
損害がなくても違反は成立しますが、損害賠償請求の可否に影響します。
<会社として取り得る対応>
競業避止義務違反が疑われる場合、会社が取れる対応は次の通りです。
① 事実確認
・副業の実態
・顧客への働きかけの有無
・会社情報の持ち出しの有無
・収益の有無
・関係者へのヒアリング
※感情的に動かず、証拠を確保しながら慎重に進めることが重要です。
② 就業規則・誓約書に基づく懲戒処分
・戒告・けん責
・減給
・出勤停止
・懲戒解雇(重大な場合)
ただし、懲戒は「相当性」が厳しく問われるため、競業行為の程度・故意・損害の有無を踏まえて慎重に判断します。
③ 損害賠償請求
・顧客を奪われた
・売上が減少した
・情報漏洩による損害が発生した
ただし、損害額の立証は難しいため、実務では慎重に検討します。
④ 副業禁止・競業禁止の規定整備
今回の件を機に、以下の整備を行うことが望ましいです。
・就業規則の副業・兼業規定の明確化
・在職中の競業禁止条項
・情報管理規程の強化
・誓約書(秘密保持・競業避止)の取得
<実務の視点から>
競業避止義務違反では、「証拠の確保」と「処分の相当性」が最重要ポイントです。
特に注意すべき点は次のとおりです。
・感情的に処分を決めない
・事実認定を丁寧に行う
・本人への聴取は記録を残す
・処分理由を明確に説明できるようにする
・就業規則の根拠条文を必ず確認する
また、在職中の競業行為は退職後の競業よりも違法性が高く、会社側が対応しやすい領域です。
適切に事実を固めれば、懲戒処分も十分に可能です。