2026/03/14|1,107文字
給与は原則として「通貨(お金)」で支払うことが法律で定められています。
これは労働基準法第24条の「通貨払の原則」と呼ばれるルールです。
現物支給は完全に禁止ではありませんが、例外的にしか認められず、実務上はトラブルの原因になりやすいため、慎重な判断が必要です。
<労働基準法違反になるリスク>
給与は「お金で払う」のが原則です。
現物支給をすると、次のような問題が起きます。
・法律違反と判断される可能性が高い → 労働基準監督署から是正指導を受けることがある
・現物支給分が給与として認められず、未払賃金扱いになる → 過去にさかのぼって追加支払が必要になるケースもある
特に、従業員の生活に必要な「食料」「住居」「商品券」などを給与の代わりに渡すと、違法と判断されやすいです。
<現物の価値をどう評価するかが曖昧>
給与は金額が明確であるべきですが、現物支給は価値の評価が難しいという問題があります。
・市場価格が変動する
・従業員によって価値の感じ方が違う
・「会社が提示した価値」と「従業員が感じる価値」が一致しない
結果として、こんなものをこの金額で評価するのはおかしいという不満やトラブルにつながりやすいです。
<社会保険・税金の計算が複雑になる>
現物支給も給与と同じく、原則として課税対象・社会保険料の算定対象になります。
しかし、これには、専門的な判断が必要になり、実務が非常に煩雑になります。
・どこまでが課税対象か
・どの価値で計算するか
・会社負担分と従業員負担分の扱いはどうするか
判断を誤ると、次のようなリスクが発生します。
・税務署からの指摘
・社会保険料の再計算
・追加徴収
<従業員の生活保障の点で問題がある>
給与は従業員の生活を支えるためのものです。
現物支給が増えると、従業員が自由に使えるお金が減るという問題が起きます。
たとえば、給与の一部を自社製品で支給するといったケースでは、従業員が本当に必要としていないものを受け取ることになり、生活の安定を損なう可能性があります。
<従業員の同意があってもトラブルになりやすい>
本人の同意を得れば大丈夫と考えるのも危険です。
・労働基準法は「強行法規」なので、同意しても違法は違法
・後から従業員が「やっぱり納得していなかった」と主張するケースが多い
・退職時や退職後に未払賃金として請求されることがある
つまり、同意書を取ってもリスクは消えません。
<会社側の管理負担が増える>
現物支給を行うと、次のような追加業務が発生します。
・現物の調達・在庫管理
・価値の算定
・税務・社会保険の処理
・支給記録の作成
・従業員からの問い合わせ対応
結果として、事務負担が増え、コストも上がるデメリットがあります。