2026/03/13|1,040文字
結論から言うと、会社は従業員に対して簡単には損害賠償を請求できません。
労働者は会社の指揮命令の下で働いており、ミスを完全に防ぐことは不可能だからです。
そのため、裁判例でも「よほど悪質な場合でなければ、従業員に高額な賠償を求めることは認められない」という考え方が基本になっています。
<損害賠償が認められる典型的なケース>
① わざと会社に損害を与えた場合(故意)
・会社の金を横領した
・会社の機密情報を外部に漏らした
・嫌がらせ目的で設備を壊した
これは明らかに「悪意」があるため、損害賠償の対象になります。
② 重大なミスをした場合(重過失)
「普通に注意していれば絶対にしないような、極めて大きなミス」のことです。
・飲酒運転で会社の車を事故で大破させた
・明らかに禁止されている危険行為を繰り返し設備を壊した
・高額な取引で基本的な確認を全くせず不利な契約をしてしまった
ただし、この場合でも全額を請求できるとは限りません。
裁判では、従業員の給与水準や会社の管理体制などを考慮して、賠償額を大幅に減額するのが一般的です。
<普通のミスでは損害賠償は認められない>
従業員が仕事をしていれば、ミスはどうしても起こります。
・取引先へのメールを誤送付した
・商品を誤って破損した
・顧客対応でクレームになった
こうした「通常の過失」では、会社は損害賠償を請求できません。
労働者は会社の利益のために働いており、ミスのリスクも会社が負うべきだという考え方があるためです(報償責任)。
<損害賠償額の決定>
裁判例では、次のような要素を総合的に考えて金額が決まります。
・従業員の故意・過失の程度
・会社の指導・監督体制
・従業員の地位や経験
・損害の大きさ
・従業員の給与水準や生活への影響
そのため、たとえ従業員が大きなミスをしても、全額を請求できるケースはほとんどありません。
<給与から勝手に天引きするのはNG>
会社が損害賠償を請求できる場合でも、従業員の同意なく給与から天引きすることは違法です。
天引きするには、就業規則・労使協定に明記、従業員の個別同意の両方が必要とされています。
<実務の視点から>
次の点は特に注意を要するポイントです。
・損害賠償を請求する前に、まず事実関係の調査が必須
・感情的に請求するとトラブルが深刻化する
・会社側の管理体制にも問題がないか確認する
・従業員の再発防止策や教育の見直しが重要
・どうしても請求する場合は、金額は「社会通念上妥当な範囲」に抑える
実務では、損害賠償請求は最終手段として扱われます。