2025/06/20|1,369文字
<雇用保険の不正受給>
雇用保険における不正受給とは、本来給付を受ける資格がないにもかかわらず、虚偽の申告や隠蔽行為によって給付金を受け取る行為を指します。
代表的な例としては以下のようなケースがあります。
・実際には就職しているのに偽って基本手当(昔の失業手当)を受給する
・アルバイトや内職をしているにもかかわらず、それを申告せずに給付を受ける
・就職活動をしていないのに、活動実績を偽って報告する
・再就職手当を受け取るために、虚偽の就職報告をする
これらの行為は、制度の根幹を揺るがす重大な違反であり、社会的信頼を損なう行為です。
<不正受給が発覚する仕組み>
不正受給は、意外にも多くのケースで発覚しています。主な発覚ルートは以下の通りです。
・ハローワークによる調査:不審な点がある場合、雇用保険給付調査官が実地調査を行います。企業への訪問や書類の照会も行われます。
・部外者からの通報:同僚や知人、元雇用主などからの密告がきっかけになることも多くあります。
・就職・離職履歴の照合:雇用保険の記録やマイナンバー制度を通じて、他の行政機関との情報連携により不正が明らかになることもあります。
<不正受給に対する処分>
不正受給が発覚した場合、以下のような厳しい処分が科されます。
・支給停止:不正があった日以降の給付はすべて停止されます。
・返還命令:不正に受け取った金額は全額返還しなければなりません。
・納付命令:悪質な場合は、返還額の最大2倍の金額を追加で納付するよう命じられます。つまり、合計で3倍の金額を支払う必要があります。
・財産差押え:返還や納付に応じない場合、財産の差押えが行われることもあります。
・刑事罰:詐欺罪(刑法第246条)に該当する場合、10年以下の拘禁刑が科される可能性もあります。
<事業主も連帯責任を問われる>
不正受給は受給者本人だけの問題ではありません。事業主が虚偽の証明書を発行したり、不正を黙認した場合には、事業主も連帯して返還・納付命令を受けることがあります。
特に「循環的離職者」(同じ事業所で離職と再雇用を繰り返す者)を再雇用した場合、事前に再雇用の約束があったとみなされ、共謀と判断されることもあります。
<過失でも許されない>
不正受給の中には、悪意がなく「うっかり」していたというケースもあります。しかし、制度上は「知らなかった」「勘違いしていた」という理由は通用しません。
たとえば、試用期間中の勤務を「就職ではない」と誤解して申告しなかった場合でも、不正受給とみなされます。アルバイトや内職も、たとえ短時間であっても申告が必要です。
<社会的信用の失墜と将来への影響>
不正受給が発覚すると、金銭的な負担だけでなく、社会的信用の失墜という大きな代償を払うことになります。刑事事件として報道されることもあり、再就職や社会復帰に大きな障害となります。
また、再び雇用保険を利用する際にも、過去の不正が記録として残り、給付の審査に影響を及ぼす可能性があります。
<正しい制度利用のために>
雇用保険は、困難な状況にある人々を支えるための制度です。不正受給は、その制度を脅かす行為であり、結果的に本当に必要な人への支援を妨げることになります。
制度を正しく理解し、誠実に利用することが、社会全体の信頼と支援の輪を守ることにつながります。