昭和時代の慣行が続いている年次有給休暇では従業員がかわいそう

2025/03/01|1,365文字

 

<年次有給休暇の実態>

年次有給休暇を取得するのは、病気やケガで受診したいとき、銀行や役所で本来の出勤日に休んで手続したいとき、お子さんの学校行事に参加したいときなどが、多いのではないでしょうか。

また、年次有給休暇を取得するのに、理由の申出は不要なのですが、「この日は〇〇があるので」など言い訳をしていることもあるでしょう。

 

<年次有給休暇の本来の趣旨>

労働基準法には、なぜ年次有給休暇の付与が法定されているのか、なぜ年次有給休暇の最低日数が法定されているのか、その趣旨とするところは何なのかなどについて説明がありません。

しかし厚生労働省は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、法定休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与える制度だと説明しています。

また、年次有給休暇の法的性格について、最高裁判所は「年次有給休暇の権利は、労働者が客観的要件を充足することによって、法律上当然に発生する権利であり、労働者が年次有給休暇の請求をしてはじめて生ずるものではない」としています(昭和48年3月2日白石営林署最高裁判決)。

 

<労働基準法の規定>

労働基準法第39条は、労働者の勤続期間、所定労働日数・時間に応じて、年次有給休暇の最低付与日数を定めています。また、時間単位の年次有給休暇、時季指定権・時季変更権、計画的付与制度、使用者の付与義務、取得した時の賃金などについても規定しています。

しかし、これらの規定を見る限り、年次有給休暇を付与する趣旨を汲み取ることはできません。

 

<海外での休暇の使われ方>

有給休暇の制度がある国では、長期の連休が年度単位で計画化され取得されていることが多いようです。

一人ひとりの労働者が、「来年度は6月1日から6月20日までを連休にする」といった指定をします。これは「取得日」の指定というよりも、「取得時季」の指定です。日本でも本来は、こうした形での指定が想定されたため、労働基準法も「時季」という用語を使っています。

こうして、その職場のすべての労働者から、次年度の休暇時季についての指定が集まったところで、特定の時季に休暇が集中してしまって、事業の正常な運営を妨げることとなる場合には、調整のため何人かの労働者に休暇時季の変更を指示します。労働基準法に規定された使用者の時季変更権は、この趣旨で設けられたものと考えられます。

この時季変更を、いつも同じ労働者にしてもらっていたのでは不公平が生じます。そこで、部署単位で優先順位を決めておき、この優先順位を毎年交代していくということが行われます。

 

<本来の趣旨に沿った年次有給休暇の運用>

年度単位で、あるいは半年単位で、各個人の年次有給休暇取得日を計画してしまいます。何事もなければ、この計画に従って、取得することになります。すでに調整済みですから、基本的には、事業の正常な運営を妨げることがありません。

もし、病気や用事などで、急に年次有給休暇を取得したくなったときには、計画した日を取り消して、時季指定をやり直すことができる仕組みを就業規則に規定し、運用することも考えられます。

古い習慣にとらわれることなく、業務に支障が出ないようにして、うまく年次有給休暇の制度を運用してはいかがでしょうか。

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