2024/09/11|1,349文字
<常識が足りない>
「常識」という言葉の意味は曖昧ですが、一般的には、次の3つの内のどれかになると思われます。
1.誰もが持っている知識・情報
2.礼儀作法、マナー
3.当たり前の感覚、分別(ふんべつ)
職場で「常識」という言葉が出てきたときには、「社会人としての常識」を言っています。具体的な局面で、3つのうちのどの意味で使われているのか、区別して考える必要があるでしょう。
部下や後輩に向かって「こんなことも知らないのか?常識だろう!」「小学校からやり直しだな!」などという発言をすれば、これは明らかにパワハラとなります。
ところが、発言をした本人は、知識不足の指摘がパワハラになることを、理解できていない可能性が高いのです。
<パワハラの定義に当てはめてみても>
厚生労働省は、職場における「パワーハラスメント」を次のように定義しています。
職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
※ 客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。 |
職場での上司や先輩であれば、部下や後輩に対して、①優越的な関係にあることは明らかですし、知識不足の指摘は優越的な関係を背景としていると考えられます。その証拠に、部下や後輩から、上司や先輩に向かって、そうそう「こんなことも知らないのか?」とは言いません。
上司や先輩が、部下や後輩に、業務上必要な知識・情報の不足を感じたときに取るべき行動は、その場で不足する知識や情報を与えることです。これは業務上必要な行為であり、相当な範囲内の行為です。しかし、業務上必要な知識の不足そのものを指摘することは、②業務上必要な行為ではありません。ましてや、業務上必要のない知識の不足を指摘することは、単なる雑談となってしまいます。
③労働者の就業環境が害されるとは、集中して落ち着いて働けない人が出てきたり、そもそも出勤したくなくなる人が出てきたりする状況をいいます。知識不足だと言われた人も、その周囲の人たちも、就業環境を害されてしまうでしょう。
こうして、知識不足の指摘は①~③の要件を満たしてしまいます。
では、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」という例外に該当するかというと、知識不足の指摘は、業務指示や指導に当たらないので、例外には該当しません。
こうして「あなたは、こんなことも知らないのですか?」という発言がパワハラになってしまうのです。
<社内で必要な知識>
「社会人としての常識的な知識」は、その範囲があまりにも曖昧で、個人の主観によって大きく左右されてしまいます。
これに対して、働く上で必要な知識として明確なのは、担当業務に必要な知識の他、経営理念や社員の行動指針があります。
経営理念や社員の行動指針は、就業規則と共にファイルして周知し共有すると良いでしょう。
部門単位で共通する必要な知識・情報は、各部門で協議してまとめ、ミーティングなどで共有していくのが良いでしょう。
これらは、個人の主観に左右されない公式の常識として、共有されることが望ましいものです。