三六協定の労働者側当事者

2023/06/15|1,407文字

 

<三六協定の必要性>
会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出れば、届出後は協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。
このことが、労働基準法36条に規定されているため、この協定のことを三六協定と呼んでいます。

<書類送検の対象>
従来は、三六協定を所轄の労働基準監督署長に届出する前に、従業員に法定時間外労働をさせてしまい、その態様が悪質であれば、書類送検・刑事裁判の対象とされる状況でした。
ところが、令和5(2023)年春以降、三六協定を労働基準監督署長に届け出た後で、その協定が無効とされ、書類送検・刑事裁判の対象とされるケースが報道されるようになっています。

<三六協定の労働者側当事者>
三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)締結の際は、その都度、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合はその労働組合、過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)と、書面による協定をしなければなりません。
このことから、労働組合が過半数組合の要件を満たさない場合、過半数代表者の選出が適正に行われていない場合には、三六協定を締結し、労働基準監督署に届け出ても無効になり、従業員に法定外の時間外・休日労働を行わせることはできません。

<過半数組合の要件>
過半数組合は、事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織する組合であることが必要です。
正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めた事業場のすべての労働者の過半数で組織する労働組合でなければなりません。
三六協定の締結時には、その都度、事業場の労働者数と労働組合員数を確認し、過半数組合となっているかをチェックしなければなりません。

<過半数代表者の選出>
三六協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにして、投票や挙手などにより選出することが必要です。
選出にあたっては、正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めたすべての労働者が手続に参加できるようにする必要があります。
選出手続は、労働者の過半数がその人の選出を支持していることが明確になる民主的な手続(投票、挙手、労働者による話し合い、持ち回り決議)がとられている必要があります。
使用者が指名した場合や社員親睦会の幹事などを自動的に選任した場合には、その人は三六協定を締結するために選出されたわけではありませんので、三六協定は無効です。 あくまでも民主的に選出されたことが分かる証拠資料を残しておきましょう。

<過半数代表者になれない人>
労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は、過半数代表者にはなれません。
管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人を指します。

<発覚の端緒>
過半数代表者の選出に、会社が関与している事実は、労働基準監督署長に届け出た三六協定届からは判明しません。
ネットで三六協定についての情報を得た従業員が、労働基準監督署に「うちの会社では過半数代表者が選ばれていないと思う」と申告したり、過半数代表者が「会社から過半数代表者にされたが何をするのか」と問い合わせたりで発覚することが多いのです。
過半数代表者を選出する前後にも、従業員への十分な説明が必要だということです。

 

PAGE TOP