問題社員の記事

2021/12/01|1,474文字

 

<問題社員かもしれない>

採用面接では人柄の良さを見せ、履歴書や職務経歴書によると経験やスキルは申し分の無いものだった。

そして、試用期間中は期待通りの働きぶりを見せ、皆「良い人材に来てもらえた」と喜んでいた。

ところが、試用期間が終わり本採用されると、様々な理由で遅刻が目立ち、体調不良を理由に早退も多い。

仕事のやり直しが多く、残業も長時間に及んでいる。

上司や同僚には「なかなか希望通りに年次有給休暇が取得できないですね」「◯◯さんは三六協定の限度を超えて残業していますね」など、批判するかのような発言が増えてきた。

 

<性悪説の社長>

うっかり問題社員を採用してしまったようだ。

遅刻や早退が多いけれど、会社に申し出た理由もどうせ嘘だろう。

そもそも履歴書や職務経歴書の内容も怪しいもんだ。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

私自らこの問題社員と面談して退職勧奨しよう。

 

こうした考えを持って面談すれば、「遅刻の本当の理由は何だ?」「体調不良で早退することが多いのだから治療に専念してはどうか?」「履歴書や職務経歴書の内容に誤りが無いか、これまでの勤務先に確認してみても良いか?」「この会社は自分に向いていないと思わないのか?」と詰問調になってしまいます。

そして、最後には「この会社を辞めて別の仕事をしてはどうか?」と退職勧奨することになります。

1回の面談で問題社員から退職の申し出があればともかく、面談を繰り返すうちに、内容がエスカレートしていくことが多いものです。

こうなると、思惑通り問題社員から退職願が出てきたとしても、やがて代理人弁護士から内容証明郵便が届いたりします。

退職の強要があったと主張され、未払賃金の支払や慰謝料など多額の金銭を請求されてしまいます。

 

<性善説の社長>

問題社員のレッテルを貼られてしまった者がいるようだ。

遅刻や早退が多いけれど、遠慮して会社に本当の理由を言えないのだろうか。

履歴書や職務経歴書の内容からすると、実力を発揮できていない。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

対応について人事部長と協議し、この社員の救済に乗り出そう。

 

こうした社長の方針に基づき、人事部長が本人と面談します。

「家庭の事情などで定時に出勤するのが難しいようなら、時差出勤を認めるので申し出てほしい」

「体調不良による早退が見られるが、通院などで必要があればフレックスタイム制の適用を考えたいので相談してほしい」

「過労を避けるため、勤務が安定するまで残業禁止とします」

「人事考課の結果を踏まえ、各部門の協力を得て、特別研修を実施することになった。これで、あなたは本来の力を発揮できるようになるだろう」

「末永く会社に貢献できるよう、是非とも頑張ってほしい」

会社からこのような対応を取られたら、本当の問題社員は、楽して残業代を稼げない、研修で努力を強いられサボれないなど思惑が外れてしまいます。

自ら会社を去っていくことでしょう。

名ばかり問題社員であれば、社長の期待に応えて戦力化される筈です。

 

<解決社労士の視点から>

性悪説で行けば、短期間で決着を見ることができますし、会社の負担は少なくて済むのかもしれません。

しかし、労働審判や訴訟など深みにはまってしまうリスクも高いのです。

その問題社員からの情報で、会社の評判も落ちることでしょう。

そして、対象者が問題社員ではなかった場合には、貴重な戦力を失うことになるのです。

性善説で行けば、会社の負担は大きいのですがリスクは抑えられます。

どちらの方針で行くか、長期的視点に立って判断していただけたらと思います。

2021/11/04|1,042文字

 

<会社業務に不可欠な報連相>

複数の人が協力して、一人では成し得ないことを達成するためには、意思の疎通が必要です。

これを可能にするのが報告・連絡・相談です。

ですから、会社の中で報連相が適切に行われれば、その会社の中では社員一人ひとりの能力を遥かに超えた成果が得られます。

反対に、報連相が無かったり、いい加減な報連相だったりでは、多くの人が集まり会社として活動することが意味をなさなくなります。

これはすでに世間一般の常識ともいえることです。

それにも関わらず、会社の中には報連相の下手な従業員がいます。

上司は部下の報連相を待っているだけで良いのでしょうか。

 

<上司の指導>

上司は、報連相の下手な部下に対して、次のような指導をします。

・必要な情報の範囲は、情報の送り手が決めるものではなく、受け手が決めるものだから、相手のニーズを考えて報連相を行うこと。

・相手に伝わったことがすべてなのだから、自分が伝えたつもりになってもダメで、相手の都合を考えタイミングを見計らって報連相を行うこと。

・結論を先に言うこと。

・事実と意見を明確に分けること。

こうした指導を受けても、その部下がプライベートで家族や友人から「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」を連発されているような部下であれば、改善は容易ではありません。

社内で要求される報連相は、プライベートでのそれを、質的にも量的にも遥かに上回っているからです。

 

<報連相は双方向のコミュニケーション>

上司が部下に対して、報連相の重要性と適切な方法について精一杯の説明をして、部下が適切な報連相をしてくれるのを待ってみるということも行われます。

しかし、報連相は一人では成り立たないコミュニケーションの一つです。

報告・連絡・相談のすべてに相手がいます。

この相手を想定して積極的に行うというのは、報連相の下手な部下にとって、習慣になるまではむずかしいことなのです。

ですから、上司から部下に対して、次のようなOJTを行うことが不可欠なのです。

・〇〇は終わりましたか?終わっていたら報告してください。

・〇〇の件、先方には連絡してありますか?先方の反応はどうですか?

・まだ〇〇に着手できていないようですが、何か迷っていることがあれば相談してください。

こうした指導を繰り返されることによって、部下は言われる前に自分で考えて報連相を行う習慣が身に着きます。

「あいつは報連相ができないんだよなぁ」とボヤく上司もまた、ある意味コミュニケーションが苦手なのかもしれません。

2021/10/01|1,461文字

 

雇止めの有効性https://youtu.be/CVFw3w5uRGA

 

<成長しないパート社員>

複数のパート社員を雇用していると、自ずからその働きぶりに違いが出てきます。

パート社員にも人事考課制度があって、評価により昇給が異なる職場では、収入にも差が出てきます。

さらに、フルタイムや正社員への登用制度があれば、その差は歴然としてきます。

成長が遅く、後輩に追い抜かれているパート社員については、雇い続けることへの疑問が生じ、「契約の更新をやめて、別の人を新たに採用したほうが良いのではないか」と考えるようになるかもしれません。

 

<雇止めの有効要件>

契約を更新しないで雇止めするのは、解雇の一種ですから、解雇予告期間を置いたり解雇予告手当を支払ったりの必要があります。〔労働基準法第20条〕

また、一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

成長しないことを理由に雇止めをするには、この条文の中の「客観的に合理的な理由」というのが特に問題となります。

なぜなら、成長しないことを理由に時給を据え置くことは客観的に合理的でありうるのですが、時給を下げること、ましてや雇止めをすることは、合理的な理由があるとは言い難いからです。

 

<契約更新の条件が示されている場合>

労働条件通知書には、契約更新の有無、更新する/しない場合の条件を明示することになっています。

たとえば、職能ランクや職務ランクが設定されていて、半年以内に一定のランクに到達することが契約更新の条件となっていて、成長に必要な研修や指導も行われているとします。

これにもかかわらず、本人の意欲不足など個人的な事情で一定のランクに到達しなかった場合には、雇止めも「合理的な理由」があることになります。

これは、採用時にこうしたことを具体的に説明しておけば、労働契約の内容となっているものと考えられます。

 

<最低賃金との関係で>

たとえば東京都では、2011年10月の最低賃金は837円でした。

これが、2021年10月からは1,041円になっています。

実に24%の上昇です。

2年前に、成長を期待して時給1,000円で採用したパート社員について、全く成長が見られず、周囲の負担となっていて、これからの成長が期待できないとしても、雇っているからには1,041円以上の時給でなければ違法になるわけです。

会社としては、こうした事態を避けたいわけですから、契約更新の条件を設定する場合、「最低賃金を下回るような職能ランク・職務ランクに該当する場合には契約を更新しない」という内容も加えておくべきでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

「成長しないこと」を理由に雇止めを検討する場合には、自己責任が前提となっています。

つまり、家庭に解消し難いトラブルが続いていて業務に集中できない、休日に体力を消耗するボランティア活動を長時間行っていて勤務中にスタミナ切れになる、そもそも自分の業務に関心が持てないなど、本人に責任のあることで「成長しないこと」が前提となっています。

しかし、パワハラやセクハラ、指導不足などがあって、「成長しないこと」の責任が会社側にもある場合には、安易に雇止めができません。

やはり、契約更新などの機会をとらえた定期面談や聞取り調査の結果から、「成長しないこと」の原因を探っておくことが必要になってきます。

2021/08/19|1,118文字

 

秘密漏洩と損害賠償https://youtu.be/9JS05-d2BIM

 

<守秘義務の認識>

社員は、在職中だけでなく退職後にも、労働契約に付随する義務として当然に守秘義務を負っています。

しかし、このことは必ずしも社員一人ひとりに認識されているとは限りません。

就業規則に具体的な規定を置くことはもちろん、守秘義務を負う社員からは、入社や異動の際に誓約書を取っておくことをお勧めします。

 

<賠償請求の困難性>

社員が営業秘密をもらしてしまった場合でも、損害賠償請求は困難ですし、その金額も限定されてしまいます。

賠償を請求する場合には、まず具体的な事実関係を確認する必要があります。

ところが、これは大変時間のかかることですから、対象社員から十分に事情を聞く前に退職されてしまうことがあります。

また、事実関係が明らかになったとしても、損害の発生や損害額を証明することが大変困難です。

こうした場合に備えて、会社と社員との間で損害賠償額を予め決めておければ楽なのですが、これは労働基準法で禁止されていて、たとえ決めておいても無効になってしまいます。〔労働基準法第16条〕

 

<不正競争防止法>

不正競争防止法には、損害賠償請求の規定があるのですが、この法律が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。

保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法第2条第6項〕

実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。

なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。

・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること

・情報に接する者が制限されていること

 

<刑事責任と民事責任>

企業機密を持ち出した社員が書類送検されたということは、国家権力による刑事責任の追及が始まったということです。

このことによって、企業の犯人に対する損害賠償の請求が可能になったわけではありません。

刑事責任と民事責任とは、必ずしも連動しないのです。

やはり、秘密がもれたかも知れないと気づいてから対応するのではなく、もれないようにするのが得策です。

そのために最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。

こうした研修は、社外の講師が行った方が効果的ですし、労働契約の性質、就業規則の意味、誓約書の効果といった深い話から順を追ってきちんと説明することが大事です。

2021/06/26|1,029文字

 

ブラック就業規則https://youtu.be/fUVYZrve4OU

 

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、労働者から取得する日を指定するのが原則です(時季指定権)。

一方、労働者が指定した日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、会社は時季変更権を使う余地がありません。

ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<円満退職の場合>

転職先が決まっている、家族と共に転居するなど、労働者の都合により、退職日が決まっていて変更できない場合があります。

この場合、退職日より後の日に年次有給休暇を取得することはできませんから、一般には退職日までの間の出勤予定日に取得することになります。

しかし、会社に長い間貢献した人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいところです。

この場合、残った年次有給休暇の日数が多ければ、日付を遡って取得させることもありえます。

ただし、前年度にさかのぼると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。

場合によっては、社会保険料の計算もやり直しとなります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買上げです。

通常は、買上げは許されないのですが、退職にあたって買上げることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

それでも、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですから、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

<円満ではない退職の場合>

会社と感情的に対立していて、退職にあたって様々な要求をしてくる労働者がいます。

年次有給休暇については、「普段あまり取得できなかったので、退職にあたっては、残さずすべてを取得させてほしい」「残った年次有給休暇を買い取ってほしい」という話が出てきます。

年次有給休暇をすべて取得し尽くすというのは、退職日との関係で日程的に

無理が無ければ可能な話ですし、労働者としての正当な権利を行使するに過ぎません。

しかし、年次有給休暇の買上げは、「会社が残日数の一部または全部の買上げを行うことができる」に過ぎず、労働者の側から権利として主張することはできません。

ただ、引継ぎをきちんと終わらせない恐れがある、あるいは未払残業代やパワハラを理由とする慰謝料を請求してくる可能性が高いなどの事情があれば、経営判断で年次有給休暇の買上げをすることも考えられます。

2021/03/28|2,122文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<和解契約の性質>

和解とは、法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し争いを止める合意をすることをいいます。

退職者から会社に対し、代理人弁護士を通じて、法的な権利を主張し何らかの請求をしてくることがあります。

在職者からは、弁護士を介さず直接請求してくることが多いでしょう。

会社が何らかの回答をし、これに退職者・在職者が納得しなければ、あっせんや労働審判を申し立てられることがあります。

これを超えて訴訟にまで発展すると、当事者には時間、費用、労力、精神力などの負担が大きくのしかかります。

和解というのは、会社と退職者・在職者のどちらが正しいか白黒を付けるのではなく、お互いに歩み寄って解決することにより、時間、費用、労力、精神力などの負担を軽減しようという、合理的な解決方法であるといえます。

 

<和解契約書のひな形>

和解契約書のひな形は、ネットで検索すると、金銭消費貸借契約に関するものも多いですが、「和解 ひな形 労働者」で検索すれば、会社と従業員や退職者との和解契約書のひな形が見つかります。

しかし、その一般的なものには、そのまま利用すると、紛争の解決どころか新たな紛争の火種となる要素が含まれています。

以下、そうした例について説明を加えてみましょう。

なお、例文中の甲は会社、乙は退職者・従業員を示しています。

 

<離職理由>

第○条 甲乙は、本件に関し、雇用保険の離職証明書の離職事由は、○○○○であることを確認した。

雇用保険の離職理由は、会社(事業主)と退職者(離職者)のそれぞれが、離職票・離職証明書に具体的事情を記入し、所轄のハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

会社と退職者とで離職理由の申し合せをしても、ハローワークがこれに拘束されるわけではありません。

あくまでも具体的事情に基づいて判断されます。

したがって、事実と異なる申し合せは無効となります。

たとえ話ですが、自己都合の退職者が、雇用保険の手続担当者に「5万円あげるから会社都合にして」と依頼し、手続担当者がこれを承諾して会社都合の離職票を作成したら、失業手当(求職者給付の基本手当)を不正受給することになりかねません。

こうしたことが許されないのは明らかです。

 

<守秘義務1>

第○条 乙は、在籍中に従事した業務において知り得た技術上・営業上の情報について、退職後においても、これを他に開示・漏洩し、自ら使用しないことを誓約する。

退職者に「他に開示・漏洩しない義務」を負わせることは可能ですが、退職者の頭の中に残っている情報を使用しないというのは不可能なことです。

無意識のうちに使用することは避けられません。

不可能なことを和解の内容に加えてしまうと、全体の信憑性が損なわれてしまいます。

 

<守秘義務2>

第○条 乙は、本合意書の存在及びその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、一切開示又は漏洩しない。

守秘義務に共通のことですが、守秘義務に反して秘密を開示・漏洩してしまった場合のペナルティーが無ければ、実効性を保てないのではないでしょうか。

秘密の開示・漏洩によって会社に実害が発生した場合には、和解契約書の有無とは関係なく、不法行為または債務不履行による損害賠償責任が発生しますので、あえて和解契約書を交わすメリットは見当たりません。

会社側が実害の立証をしなくても、秘密の開示・漏洩があれば、従業員や退職者に一定の違約金を請求できる内容を加えておく必要があるでしょう。

 

<競業避止義務>

第○条 乙は、退職後○年間は、甲と競業する企業に就職したり、役員に就任するなど直接・間接を問わず関与したり、又は競業する企業を自ら開業したり等、一切しないことを誓約する。

退職者にも、憲法で保障された職業選択の自由がありますから、競業避止義務を負わせる場合には、期間だけでなく、地域的な範囲を限定しなければ一般には無効となります。

地域を限定しないで、つまり全世界で禁止ということが合理性を持つのは、ほんの一つまみのグローバル企業の場合だけです。

また、給与への上乗せ、退職金への上乗せなどで、競業避止に対する対価の支払が行われている場合を除き、和解に当たって、競業避止の対価を支払うことが必要です。

退職者には、和解に応じる/応じないの選択権がありますから、会社に都合の良い内容を押し付けることはできないのです。

 

<債権債務の不存在>

第○条 甲乙は、本件に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務が無いことを相互に確認し、今後一切の異議申し立てを行わない。

和解にこの条項が無いと、紛争のぶり返しがありうるので、最終決着であることを担保するために設けられます。

しかし、従業員と会社との間には労働契約上の債権債務があります。

これが消滅してしまう和解というのは、ありえないでしょう。

また、退職者であっても、退職直後であれば、退職金の支払、健康保険や雇用保険の手続が残っていることがあります。

こうしたものが残っている場合には、例外として盛り込んでおく必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

「ひな形」は飽くまでも「ひな形」です。

主体的に考えて、カスタマイズして利用しましょう。

2021/03/17|1,566文字

 

<反撃の懲戒処分>

職場で上司から暴言を吐かれ、これに対抗して暴力を振るった社員の処分は、どう考えたら良いでしょうか。

繰り返される上司のパワハラに対抗する行為であって、部下が堪りかねて行ったのであれば、心情的には不問に付すか、情状酌量で軽い処分にとどめたいと感じます。

懲戒処分は就業規則の規定を適用して行うものですから、就業規則の規定にある「情状酌量」などの解釈の問題となります。

 

<正当防衛の可能性>

これを法的観点から見ると、上司の暴言は侮辱または名誉毀損に該たります。〔刑法第230条、第231条〕

部下の暴力は暴行罪、ある程度のケガをさせていれば傷害罪に該たります。〔刑法第208条、第204条〕

そして部下の行為が、刑法上、罪を軽減されるとすると、正当防衛が根拠になると思われます。〔刑法第36条第1項〕

「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」という規定です。

このように刑法の正当防衛は、犯罪から自分や他人の身を守るために、やむを得ず行った行為のことをいいます。

しかし、正当防衛の成立要件は思いの外厳格です。

今回のケースでは、相当性の要件を満たしていません。

相当性の要件というのは、侵害の危険を回避するための行為が、必要最小限のものであることです。

暴言を封じるのに、暴力を振るうというのは、必要最小限のやむを得ない行為とはいえません。

 

<過剰防衛の可能性>

不正な権利の侵害に対して、受けた侵害を上回る防衛行為を行ったのであれば、正当防衛ではないにしても、過剰防衛になる可能性はあります。

刑法は「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」と規定しています。〔刑法第36条第2項〕

刑法の過剰防衛の規定が適用されるようなケースであれば、これに倣って社内の処分でも、情状酌量により懲戒の程度を低くすることが妥当です。

しかし、過剰防衛の成立要件も大変厳格です。

正当防衛の他の要件は満たしていて、「防衛の程度を超えた行為」という点だけに問題があるときにのみ、過剰防衛が認められるのです。

今回のケースでは、「急迫不正の侵害」があったものの、「暴力」というのは、この侵害から名誉を防衛する手段としては、あまりにも的外れなのです。

そこには、「防衛の意思」が無く、これを機会に反撃する、あるいは、ついカッとなってやってしまったことがうかがわれます。

「防衛の意思」が無ければ、正当防衛も過剰防衛も成立しないのです。

刑法が正当防衛や過剰防衛の成立を認めない以上、会社の懲戒処分でも、情状酌量して大目に見るというのは、整合性が保てない結果となってしまいます。

 

<解決社労士の視点から>

「それでも当社は独自の考えを採り、今回のようなケースでは、暴力を振るったとしても厳重注意に留める」というのはどうでしょうか。

おそらく、同じような事件が多発するのではないでしょうか。

懲戒処分では、公平が求められます。

過去に起こった事件と同様の事件が発生した場合には、特別な事情が無い限り、同様の処分にしなければなりません。

上司に暴力を振るっても厳重注意で済まされるなら、機会をうかがって行為に及ぼうと企む社員も出てくる可能性があります。

厚生労働省のモデル就業規則でも、「会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く)には、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、普通解雇、減給又は出勤停止とすることがある」というように規定しています。

暴行罪、傷害罪は、刑法に懲役刑の刑罰が規定された重大な犯罪です。

これを厳重注意や譴責(けんせき)処分で済ませるのは、危険ではないでしょうか。

2021/03/14|1,295文字

 

YouTube常識ってなんだろう?

https://youtu.be/UgGT9OM0_S8

 

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

 

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

 

<礼儀作法、マナーとしての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることがあります。

ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。

「中途採用の〇〇さんは、挨拶の仕方も知らない。常識が無い」という話を耳にすることがあります。

たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通の「常識」となっています。

しかし、挨拶の仕方については地域や業界によって「常識」が異なっていますから、転職すれば「常識」の修正が必要になります。

こうした違いについての知識が無い社員が、異なる「常識」を備えた社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることでトラブルが発生します。

また、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。

社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。

 

<当たり前の感覚、分別としての常識>

これが最もトラブルになりやすい「常識」です。

なぜなら、この「常識」は個人ごとに異なり、それにもかかわらず多くの人に共通するものだという勘違いがあるからです。

「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ゼネレーションギャップを端的に表した言葉です。

この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。

部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方が無いという「常識」が、パワハラの原因となります。

いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという「常識」が、セクハラの原因となります。

勤務中にマスクを外すことは許されないという「常識」が、コロナハラスメントの原因となります。

社員一人ひとりの「常識」に任せておけば、必然的にトラブルの温床となります。

安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。

 

解決社労士

2021/02/24|1,618

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<悪ふざけ写真の拡散>

6年ほど前、アルバイト社員がSNSに悪ふざけの写真を投稿し、これが拡散されて会社に損害をもたらす事件が多発しました。

自分の友だち限定で、ウケを狙って配信したところ、その友達がコピーして一般公開してしまい、拡散されて会社が信用を失うことになったわけです。

こうした事件は、店舗で発生することが多く、お客様の信用を失って、休業や閉店などを余儀なくされることもありました。

不正な情報拡散の威力を思い知った事件でした。

 

<情報漏えいの問題>

店舗よりも、むしろ本部など事務部門の方が、重要な機密情報を多く保有しています。

営業上の秘密が漏洩すると、会社は直接的な打撃を受けます。

顧客の個人情報などが漏洩すると、信用が失われ、信用回復のために多額の費用を投じても、回復までの間、売上が相当に減少してしまいます。

社員の中に、こうした情報を漏洩している者がいると疑われた場合には、迅速で徹底的な対応を迫られることになります。

 

<懲戒処分の検討>

社内に情報漏えいの疑われる社員がいる場合、まず会社は事実の確認をします。

情報漏えいの事実が確認された場合、就業規則にこれを懲戒の対象とする具体的な規定があれば、適正な手続に従って、懲戒処分を検討することになります。

しかし、就業規則の中に情報漏えいに対応できる規定が無ければ、情報漏えいを理由に処分することは困難です。

 

<秘密保持誓約書>

情報漏えいの事実が確認できないものの、その疑いがある場合には、対象社員に就業規則の内容を説明したうえで、それを再確認する形での秘密保持誓約書に署名してもらうなどの対応を考えるでしょう。

これなら、対象社員も署名することに抵抗を示さないかも知れません。

ところが、就業規則に規定の無い内容を含む誓約書に署名させることは、新たに義務を課すことになりますから、署名を強要できませんし、署名しないことをもって情報漏えいの可能性が高まったと判断するわけにもいきません。

対象労働者は、誓約書への署名を強要されたことが原因で、会社に対する反感から、意図的な情報漏えいに走るかも知れないのです。

対象労働者の神経を逆なでしないためにも、また他にも情報漏えいの恐れがある社員がいる可能性をも考えて、その部署全員に説明し誓約書に署名を求めるのが得策です。

 

<就業規則の規定>

秘密保持について、就業規則に規定が無いのであれば、「遵守事項」の項目に次の内容を加えておきましょう。

「在職中および退職後においても、業務上知り得た会社、取引先、顧客等の機密を漏洩しないこと」

また懲戒項目には、これに対応する次のものを加えておきましょう。

「正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき」

 

<解決社労士の視点から>

就業規則や誓約書で情報漏えいを防止しようとするのは、ルールで社員を縛ろうとするものです。

ですから、就業規則の内容を説明し、誓約書に署名させても、これらに反感を覚える社員は一定数存在します。

そもそも社員は、労働契約上、信義則により業務上の秘密を守る義務を負っています。

この義務に違反して情報を漏洩し会社に損害を加えれば、労働契約上の債務不履行責任により、あるいは不法行為責任により、社員は会社に対して損害賠償責任を負うこともあります。

その金額は、かなり多額になるでしょうから、その後の人生を棒に振ることにもなりかねません。

この辺りを、社員に教育しておくことが情報漏えいの防止には必要ではないでしょうか。

 

【参考:古河鉱業事件判決(東京高判昭和55年2月18日)】

労働者は労働契約に基づき労務を提供するほか、信義則により使用者の業務上の秘密を守る義務を負うとしたうえで、会社が機密漏洩防止に特段の配慮を行っていた長期経営計画の基本方針である計画基本案を謄写版刷りで複製・配布した労働者に対する懲戒解雇を有効と判断した事案。

2021/02/16|905文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

出来てから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<解雇のチェックリスト>

過去の裁判所の判断例から、以下にチェックリストを示します。

ほとんどの項目にチェックマークが入るケースならば、解雇の有効性が肯定されやすいといえるでしょう。

 

□ 解雇の理由が労働契約の継続を期待し難いほど重大なものである

□ 労働契約で約束した能力や資質と実際とが大きく食い違う

□ 教育しても労働者の能力の向上が期待できない

□ 配転や降格では対応できない

□ 教育指導を十分に行ってきた

□ 上司や教育担当が十分な対応を行ってきた

□ 解雇までの経緯や動機に隠された意図や恣意が認められない

□ 解雇の手続は就業規則に定めた通りに行った

□ 対象者と話し合い、言い分も聞いたうえで決定した

□ 対象者の会社に対する功績や貢献度が低い

□ 勤続年数は短い

□ 対象者は解雇されても再就職が容易である

□ 他の従業員に対する処分とのバランスはとれている

□ 対象者に対して、より軽い懲戒処分で対応した過去がある

 

<解決社労士の視点から>

こうして見ると、しろうとでは判断が困難な項目も含まれています。

また、チェックマークを入れられる状態にするには、日頃の準備が必要な項目もあります。

問題社員が増加傾向にある今、会社を守るための準備を進めるには、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/02/05|1,456文字

 

<問題社員の知識レベル>

問題社員というのは「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、義務は果たさず権利を濫用して退職後に会社を訴えるような社員です。

こうした問題社員は、労働法関連の知識が豊富であるかのように見えることが多いものです。

ところが実際には、正しい知識が少なくて、体系的な理解が不足しているようです。

その原因としては、法律関係の知識を吸収する際に、自分に都合よく独自の解釈を加えてしまうこと、コツコツと地道な努力を重ねるのは嫌いなので専門書を通読しないことなどが考えられます。

 

<問題社員から要求があったとき>

問題社員から会社に対して、脅しとも取れるような強烈な要求が出されることもあります。

この要求の中には、正しいこと、誤ったこと、単なる勘違いが含まれ、区別の難しい形で一体化しています。

立場上こうした要求に耳を傾ける役割の人は、事実と主張とを明確に区分して聞き取らなければなりません。

そして、事実については、なるべく具体的に話の内容を明らかにすることと、どのようにしてその事実を認定したのかも聞いておく必要があります。

一方、主張についても具体的な内容を明らかにすることが必要ですが、それ以上に、会社にどうして欲しいのかを明確にしなければなりません。

こうして聞き取りをした人は、その場で結論を出してはいけません。

少なくとも、聞き取った内容が事実かどうかの確認はしなければならないのですから、安易に結論を出せないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)へのご連絡>

問題社員から「話がある」と言われ、それが会社に対する何らかの要求であると判明した場合、話を聞くのは上司や人事部門の責任者の業務であっても、話をするのは問題社員の業務ではありません。

ですから、後日改めて話を聞くことにして日時を指定することもできます。

そして、対応方法について社労士と協議するのがベストです。

このタイミングを逃しても、正しく聞き取りができていれば、その後の対応について協議ができます。

事実を確認するのは社内のメンバーで行い、主張の正当性の確認は労働法令の専門家である社労士が行うというように役割を分担することもできます。

もしこのタイミングを外して、会社なりの対応をした結果、問題社員がその対応を不満に思い、労働審判に持ち込んだような場合には、弁護士の先生がメインとなって対応する局面に進んだと判断されます。

まだ法的手段に出ていないような場合なら、会社が主体となって労働局の斡旋(あっせん)を利用することもできます。

この場合、特定社労士に委任することが可能です。

 

<問題社員への指導>

勤務態度や他の社員への干渉について、上司などから問題社員に指導をする場合があります。

ここで注意しなければならないのは、注意指導の根拠を明らかにしたうえで行うことです。

なんとなく常識的に、あるいは、ビジネスマナーとしてというのでは、強い抵抗を受けてしまいます。

根拠としては、就業規則、労働契約、法令、社内ルールとなりますが、文書化されていないものは根拠として弱すぎます。

この点、就業規則が無かったり、労働条件通知書の交付を怠っているような会社で、問題社員を採用してしまったり、発生させてしまったりした場合には大きなリスクを抱えることになります。

 

<解決社労士の視点から>

現時点で会社に存在する就業規則や労働契約で対応しきれないと感じた場合にも、信頼できる国家資格の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

本当に対応できないかを確認し対応方法をご提案いたします。

2021/02/03|1,072文字

 

<問題社員>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、義務は果たさず権利を濫用して退職後に会社を訴えるような社員です。

 

<問題社員の結果の結果>

こういう社員が上手く立ち回って、会社から金銭的な利益を得ると、次から次へと真似をする社員が出てきます。

会社から得る金銭的な利益は、賃上げ、未払い残業代、年次有給休暇の買い上げ、退職金の上乗せ、慰謝料、解決金、和解金、口止め料など多岐にわたります。

正当な権利の行使を超えて、恐喝まがい詐欺まがいなものも出てきます。

そして、会社の中の小さな不平等や小さな不公平が原因で、問題社員の真似をしたくなる社員は多いのです。

真面目に働いている社員は、会社から不当な利益を得ようとはしないでしょう。

ただ、真面目に働いているのがばかばかしくなります。

問題社員が会社の悪い所を徹底的に指摘するので、会社の魅力も低下します。

辞めたくなったり、意欲が低下したりは仕方のないことです。

ここまでくると、お客様にも、お取引先にも、近隣にも、金融機関にも評判は良くないはずです。

会社の経営は上手くいくはずがありません。

 

<問題社員の原因の原因>

以前いなかった問題社員が入社してくるのは、思ったような応募者が少なくて、究極の選択によって、少し問題を感じる人でも妥協して採用してしまうからです。

こうした採用難の原因は少子高齢化なのですが、一企業が少子高齢化を解消することはできませんので、良い応募者を増やす知恵を絞りたいところです。

まず、仕事の内容を中学生にもわかるように具体的に示すことです。

つぎに、会社や商品・サービスの魅力、仕事のやりがい、交通の便、近隣の環境、社長のキャラクター、長く働いている人の感想やチョッとしたエピソードなど、求職者が応募したくなるメリットを明らかにします。

反対にデメリットも明かします。

なぜなら、良いことばかりを並べると信用されないからです。

あえて会社の悪い面を少し加えることで、求人に対する信頼がグッと高まるのです。

それでも、こうしたアピール情報を公開できないとしたら、それは会社や仕事に魅力が無いからです。

上手いこと良い人をひっかけようとするのではなくて、正面から魅力ある会社に変えていく必要があります。

最低でも、労働基準法など労働関係法令に対する違反は解消しないと、ブラック企業のレッテルを貼られる恐れがあります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

即戦力にできる人材を確保するための採用も、万一問題社員を抱えてしまった場合の対応も、信頼できる国家資格の社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/07|1,385文字

 

<退職者からの文書>

退職者から会社に宛てて、様々な主張、要求、金銭的請求などが書かれた文書が郵送されてくることがあります。

代理人弁護士名義で届いた文書であれば、退職者が弁護士に相談し、弁護士が退職者の委任を受けて発信していますから、事実関係の認定は不確かなものの、退職者の主張する事実を前提とした法的主張の部分は正当なはずです。

しかし、退職者が自分自身の想いで作成し、会社に対して主張をぶつけてきた文書は、かなり主観に傾いたものであることが多く、その趣旨が不明確なことも多いものです。

大企業では、こうした文書の内容に対して寛大な態度がとられることもあり、言った者勝ちの不公平が発生する恐れがあります。

一方で、中小企業の経営者は立腹し、その内容を全否定しようとする危険があります。

 

<退職者の心境>

毎日のように出勤し、余計なことを考えずに生活していたところ、退職して自分の時間を持て余すようになった退職者は、あれこれと余計なことを考える傾向にあります。

思いを巡らせるうちに、ネットサーフィンで得た不確かな情報を拡大解釈、類推解釈して、会社に物申したくなることもあります。

転職先の決まっている退職者や、事業を立ち上げる準備を開始した退職者は、毎日が忙しく充実していますから、余計なことを考え、ネットでつまらない情報を探索する時間はありません。

会社に文書を送りつけてくる退職者は、次の仕事が決まっていない場合が多いのです。

すぐに転職先が決まるつもりでいたところ、なかなか決まらないとなれば、精神的にも経済的にも追い詰められてきますから、会社に金銭的請求をしようと考えても不思議ではありません。

 

<会社に対する主張>

在職中に、大変な目に遭っていたという主張は多く見られます。

セクハラやパワハラのような嫌がらせがあったという、不平・不満・恨みが支離滅裂に書き連ねられているのです。

その中に、一部感謝の気持が述べられていることもあります。

感情を爆発させたいという欲求を満たしているかのような文書となります。

文書に対する回答は、文書で行うのが社会のルールです。

しかし、ただ単に感情をぶちまけているだけの文書であれば、これに文書で回答するのは、冷たくあしらっているように受け取られます。

人事部門の担当者などが直接面会して親身になって話を聞くのが良いでしょう。

そして、職場環境の改善に努めたいという話をすれば、納得して帰ることが多いものです。

 

<会社に対する要求>

具体的な根拠となる事実関係の主張がなく、ただ単に金銭を要求している内容であれば、「事実関係と計算根拠を示して請求してください」という内容の文書で回答すれば良いでしょう。これに対して、それなりの根拠を示したうえで、会社に対する謝罪の要求や、未払い賃金の請求、慰謝料などの賠償請求を含む内容であれば、文書の中に記された事実関係を確認する必要があります。

会社から回答する文書の内容としては、会社が認定した事実関係と会社の見解の2点に限られます。

回答するまでの期間が長くなってしまうと、退職者が労働基準監督署などに相談して、余計な労力と時間を費やす結果を招くことになりかねませんので、事実関係の確認は、なるべくスピーディーに行いましょう。

退職者の主張する事実関係が信じられないからといって、放置することだけは避けなければなりません。

 

解決社労士

2020/01/11|1,374文字

 

<問題社員>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、権利を濫用して、退職後に会社を訴えるような従業員です。

会社の業績が向上すれば、誰よりも自分が一番貢献していると感じますし、昇給・昇格・臨時ボーナスなど期待はふくらみます。

年次有給休暇を取得できなければ、上司が無能であり、人事の方針が間違っていると感じます。

自分の生産性の低さや計画性の欠如は感じません。

労働者としての権利は最大限主張します。

会社側の権利や、他の従業員の権利との調整など思いつくことはありません。

問題社員であることが周囲にバレて、居心地が悪くなると突然会社を辞めます。

社長以下従業員一同がホッとしていると、会社を訴えてきます。

訴えの理由は、会社に辞めさせられたとか、仕事がキツくて病気になったとか、サービス残業代の請求だったりします。

会社としては、これに対応しなければなりませんから、退職してもなお迷惑をかけられるということになります。

 

<問題社員を入社させない方法>

採用選考の段階で見極めることが大事です。

履歴書や職務経歴書、採用面接中の発言などに、次のような傾向が強く見られれば、採用を見送ることです。

・仕事でも私生活でも上手くいったことの原因は自分にあると主張する。

・仕事でも私生活でも上手くいかなかったことに自分の責任は無いと言う。

・年次有給休暇の取得率、昇給や昇進の可能性などに強い興味を示す。

・会社や上司とのトラブルの経験と自分の正当性について話す。

これらは、あらかじめ採用選考時の面接で使用する「面接シート」にチェック項目を入れておくことができます。

具体的に採用選考をどうすれば良いか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<問題社員の教育>

問題社員に、会社の方針を具体的に落とし込んだり、新しい仕事を教えたりということについては、普通に行うことができます。

しかし、問題社員から優良社員に変えることはできません。

生まれてから今までに、私生活でも仕事でも多くの経験を積む中で、今の人間力を身に着けてきたのですから、他人がこれを変えることはできません。

問題社員の真逆の優良社員とは、良いことも悪いこともその原因を自分と他人の両方にあると理解し、労働者としての権利を主張する前に会社や他の従業員の都合を考え、退職までにどれだけ会社を改善し成長させられるか真剣に考えるような従業員です。

問題社員を優良社員に変えようと努力するよりは、優良社員を採用した方が近道です。

 

<問題社員を入社させてしまった場合に備えて>

会社オリジナルの就業規則が最大の武器になります。

権利の濫用を許さず、会社が不当に訴えられるスキを作らない就業規則を作り、磨き、周知することによって、被害を最小限に抑えることができます。

もちろん、優良社員がのびのびと働ける内容にしなければなりません。

もう一つ、きちんとした人事考課基準の確立と運用で、問題社員には居心地の良くない会社にしておくことです。

問題社員が人の上に立つようになってしまったら、部下はたまったものではありません。

能力が発揮できなくなるだけではなく、いたずらに退職者を増やすことになってしまいます。

就業規則や人事考課についても、問題を感じるようになる前に、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/10|1,145文字

 

<年々減少する参加者>

若者を中心に、会社の行事に参加したがらない社員が増えています。

社員旅行などは、かつて当たり前のように行われていたのですが、現在では行う会社がかなりの少数派になってしまいました。

せっかく社員間の親睦を図るために会社が用意しているのに残念なことです。

 

<自由参加の場合>

自由参加とした場合には、社員に参加義務がありませんから、不参加を理由に会社が何らかの対応を取ることは困難です。

就業中の協調性が欠けていることについては、本人への注意が必要ですし、人事考課で「協調性」の評価が低くなることは当然です。

しかし、自由参加の会社行事に欠席した事実については、原則として評価の対象外となります。

それでも、一定以上の役職の管理職で部下を持つ社員など、自ら積極的に会社の行事に参加すると共に、他の社員に対しても参加を呼び掛けるべき立場の者が、正当な理由なく欠席した場合には、「指導力」などの項目で、評価が低くなる原因とされるのは不当ではありません。

 

<業務命令の場合>

忘年会や新年会などの行事が、原則全員参加であるなど、会社の業務命令になっている場合には、正当な理由なく欠席することが業務命令違反となります。

会社は、参加しない社員に対しては、注意し改善を求めることになります、

また、懲戒処分を検討すべき場合もあります。

この場合、忘年会や新年会などの内容は、会社によってかなり異なりますので、参加命令が労働契約の範囲内であることの確認が必要です。

懲戒処分の内容は、初めての欠席であれば最小限に留めるべきでしょうし、注意し改善を求めても繰り返し欠席するような場合や、他の社員にも欠席するよう促している場合には、重い処分が必要になってきます。

 

<業務命令となる条件>

参加対象者は、明確であることが必要です。

全員参加であれば明らかですが、社員の側から見て、自分が参加対象者かどうか分からないようでは、業務命令が及ぶ範囲も不明確になってしまいます。

参加している時間は、賃金の支払い対象とされていることも必要です。勤務時間外の行事であれば、割増賃金も必要になってきます。

したがって、誰が参加し、誰が欠席しているかの確認も必要です。

 

<会社の行事一般について>

何の目的で参加しなければならないのか、参加しなくても構わないのではないかという疑問は、目的意識のはっきりした社員ほど強くなり、気持ちが不参加の方に動いてしまいます。

新年会といえばその趣旨はだいたい分かるだろうということではなく、日時・場所の他、その目的や内容、自由参加か強制参加かなど、具体的にイメージできる情報も提供しておくべきです。

そして、強制参加であれば、不参加の場合に理由を添えて事前に届け出るなどの手続も明確にしておきましょう。

 

解決社労士

<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

 

【法人の能力】

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

会社も法人です。

会社の中で働く人たちが相互に協力し合い、まるで1人の人間のように統一的に活動することによって、会社は目的を果たすことが可能となります。

このためには、社員間・部署間で報告・連絡・相談が適切に行われている必要があります。

 

<報連相が足りない社員>

報連相を密にして組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

ところが、報連相が滞ったり不足したりする社員がいます。

報告書の提出締切を守らなかったり、いい加減な報告書を提出して済ませたりしています。

 

<報連相不足に対する懲戒処分>

報連相に問題のある社員の多くは、業務の中で報連相の優先順位が低いのだと思われます。

上司が、本人に対して報連相を重視し優先順位を上げるように指導する必要があります。

最初は口頭による注意・指導を行い、それでも改善されない場合には、書面による注意を行います。

この書面には、就業規則の条文を示し、報連相を怠ることが就業規則違反であり、場合によっては懲戒処分の対象となりうることも記載しておくべきです。

 

<懲戒処分の対象とすべきではない報連相不足>

能力不足で報連相が上手くできない社員もいます。

他の業務はともかく、報告書の作成などが極端に苦手というタイプです。

この場合には、本人を戒めても効果が期待できません。

むしろ、技術的な側面もありますので、教育が大きな効果をもたらします。

しかし、安易に上司に指導を任せてしまうと、上司が「こんな報告書じゃダメだ」という拒絶の態度を示し、ともするとパワハラに及んでしまう恐れがあります。

人事部門が主体となって集合研修を行うのが効果的だと思います。

 

2019.08.25. 解決社労士 柳田 恵一

<ブラック社員>

ブラック社員は、自分/自分たちのやりたいようにしたいのです。

他人からの干渉を徹底的に嫌います。

キャッチフレーズは「ほっといてくれ!」です。

かといって、自主的に仕事をこなすわけてもなく、改善提案をするわけでもなく、仕事に対して消極的で無気力です。

上司からの命令に返事はするのですが、期限を過ぎても完了報告がないということで、上司が確認すると、なんと命令を忘れていたりします。

これは、他人からの指図は受けたくないという自己中心的な態度のあらわれです。

また、ブラック企業と同じく、正しくはどうなのか、どうあるべきなのかということに関心がありません。

職業倫理が欠けているのです。

結局、ブラック社員は会社の業績に貢献しませんし、その態度を見た他の社員に不快感と不満をもたらします。

ときには、無気力が他の社員に伝染してしまいます。

 

<評価を気にしないブラック社員>

ブラック社員は、自分がきちんと仕事をしていないことを自覚していますから、人事考課で低く評価されても当然のことと考えます。

高い評価を得て出世しようとか、少しでも多額の賞与をもらおうなどとは考えません。

 

<ブラック社員への教育>

ブラック社員は、仕事ができないわけではありません。

しかし、やる気がないのです。

モチベーションアップのための教育をしても、本人も認めていますが無駄なことです。

 

<ブラック社員が会社に求めるもの>

最低限の給与をもらい、クビにならなければ良いのです。

そして、クビになるなら会社都合で解雇され、解雇予告手当をもらい、雇用保険でより早くより長く給付を受けられればラッキーなのです。

時には、不当解雇を主張し、会社に慰謝料を含め損害賠償を請求してくることがあります。

 

<なぜ会社はクビにしないのか>

縁故採用や他の社員の紹介による採用で、解雇しにくいというケースもあります。

また、ブラック社員は自分を守るための努力はしますから、労働法に詳しい人が多いのです。

会社の実態や就業規則の中に、労働法違反を見つけるのも得意です。

会社から解雇をほのめかすと、ブラック社員は労働基準監督署へ法令違反を相談するとか、一人でも労働組合に入れるとか、脅しのようなことを言い出します。

ですから、会社としてはうっかり解雇にはできません。

特別な退職金を出して辞めてもらうこともあります。

 

<ブラック応募者を採用しないためには>

このように、一度ブラック社員が会社に入って来てしまうと、有効な対策を打つことは困難です。

やはり、会社に入って来ないようにすることが大事です。

ブラック応募者は、大きな会社での勤務経験があり「この部署はこういう役割を果たしていました」と説明することがあります。

こんな時「その中であなたは具体的にどのような職務をこなしていましたか?」と尋ねても、抽象的な答えしか返ってきません。

他にも「仕事の上で何かリーダーとして活動したことはありますか?」「あなたの改善提案で業績が向上したり生産性が上がった具体例を教えてください」などの質問には答えられません。

退職理由を尋ねると「退職を勧められた」「退職を迫られた」という回答になります。

それでも避けられないのは、縁故採用でしょう。

どんなにサボってもそれなりの給料がもらえるとわかっていたら、下手に努力するよりもおとなしくしていた方が利口ですから。

まさに、ブラック社員の温床です。

 

<別の角度からの対処法>

会社に労働法上の問題が無ければ良いのです。

遵法経営の会社にブラック社員が入っても、会社はこれに正面から対応できます。

これが、ブラック社員対策の王道です。

 

2019.07.27. 解決社労士 柳田 恵一

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